インバウンド需要が大復活。そのあおりを受けてか、とにかくホテルが高すぎる!? 出張するにも、安い宿を探すだけでひと苦労だ。そこで、国内各地に展開するビジネスホテルチェーンのおトクさを徹底比較! 安い宿を見つける裏ワザも識者に教えてもらった!

 
*データはいずれも11月18日時点。5地域の料金はいずれも12月21日(土)1泊の料金で、公式サイトからの予約料金を記した。また、料金を比較したホテルは当該駅から電車で30分以内のエリアで探した。ドーミーインについては売り切れている場合もあったため、「プレミアム」や「エクスプレス」といった別ラインに空室があればそちらの料金を記載した。

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■ビジホチェーンは顧客獲得競争が激化!

まずはコロナ禍以降のビジネスホテル(以降、ビジホ)の動向について、年間300泊以上ホテルを利用するホテル評論家の瀧澤信秋氏に解説していただこう。

「ビジホに限ると、コロナ禍以降、価格は約1.5倍に高騰していますね。東京の宿泊料金を比較すると、2019年は平均して1万円強だったのが、今年の秋には平均1万6000円ほどになっています」

価格が高騰する中、各ビジホでは顧客獲得競争が熾烈(しれつ)化しているそうだ。

「外国人観光客が増え、その影響で国内の客が宿泊しにくくなっています。しかし、国内客は外国人に比べてリピーターになる割合が高いので、ホテル側はいかにして国内客のリピーターを増やすかということも重視する傾向があります。

ただ、宴会場や結婚式場などの設備の整ったシティホテルとは違ってビジホは宿泊に特化しているため、他社との違いを打ち出せる要素が相対的に少ないんです。そんな中、各ビジホチェーンが編み出したリピーター獲得の施策が、会員プログラムの充実や宿泊特典、朝食や無料サービスの充実などでした」

各チェーンは自社会員を一般客より優遇する傾向があるというが、その理由は?

「『楽天トラベル』などの宿泊予約サイトから予約が入ると、ホテル側は10~15%もの仲介料を払わなくてはなりません。ですから、一般客よりも自社サイトから予約を入れてくれる会員を優遇するシステムにしていることが多いんです」

宿泊予約サイトのキャンペーンやポイントなどによっても事情は異なるが、基本的には各ホテルの公式サイトから予約すると安くなるというのはどのビジホチェーンにもいえる。覚えておくべし!

■東横インがとにかく安い

各ビジホの会員プログラムや料金帯について、解説しよう。ちなみに今回価格を比較したのは東京・名古屋・大阪・京都・福岡の5都市で、12月21日(土)の宿泊料金を掲載した。


まずはドーミーイン。「Dormy's(ドーミーズ)」という会員制度では、1年間の利用金額・回数に応じたステータス制度を導入しており、メンバー、シルバー、ゴールドとランクが上がるにつれてアーリーチェックインやラウンジ利用無料など、多くの会員特典を受けることができる。

気になる価格についてだが、空きがなかったエリアは「プレミアム」「エクスプレス」といったサブブランドも含めて調査。地域によっては無印よりこれらのラインのほうが安かったケースもあったが、それでも宿泊料は1万5000円オーバーのところも多く、やや高めの印象だ。

●ドーミーインの宿泊料金(土曜日、1名) 
【5地域】9580~2万7180円 
【東京駅近辺】2万7180円 
【名古屋駅近辺】9580円 
【大阪駅近辺】1万8315円 
【京都駅近辺】1万6515円 
【博多駅近辺】×(空室ナシ) 
【宿泊特典・おトクなプラン例】クオカード付与プラン


続いてスーパーホテルは枕を8種類から選べるほか、オリジナルのマットレスを開発するなど、睡眠へのこだわりが強み。交通量の多い大通りではなく、あえて裏通りに出店していることが多いのも、快適な眠りを提供するためだとか。

会員プログラムは比較的シンプルで、1泊500円相当のポイント付与や現金でのキャッシュバックが主な特典だ。価格帯については8000円から2万円と地域によってかなりの差がある。

●スーパーホテルの宿泊料金(土曜日、1名) 
【宿泊料金(5地域)】8280~1万9800円 
【東京駅近辺】1万9800円 
【名古屋駅近辺】8280円 
【大阪駅近辺】1万3050円 
【京都駅近辺】1万6700円 
【博多駅近辺】1万2600円 
【宿泊特典・おトクなプラン例】クオカード付与プラン


東横インは今回比較する4大ビジホのうち唯一、会員プログラムに入会費(一般1500円)がかかるのが特徴だ。

「そのぶん他社と比べても、自社会員への優遇が際立っている印象。例えば10泊すると1泊無料券をもらえるほか、アーリーチェックインができたり、一般客よりも1ヵ月早く予約できるようになります」

価格を見ていくと、いずれの地域も宿泊料金は6000円から1万円弱。各地域で差が少なく、安定してリーズナブルな価格帯となっていた。これは東横インが、他社と違ってダイナミックプライシング(需給によって価格を変動させること)を導入していないことと関係がありそうだ。

●東横インの宿泊料金(土曜日、1名) 
【宿泊料金(5地域)】6100~9600円 
【東京駅近辺】9600円 
【名古屋駅近辺】6100円 
【大阪駅近辺】8900円 
【京都駅近辺】7180円 
【博多駅近辺】7000円 
【宿泊特典・おトクなプラン例】7泊以上で最大15%割引プラン


そして最後はアパホテル。会員プログラムはキャッシュバックやポイント付与がメインで、ドーミーインと同じく、年間宿泊数に応じたステータス制を導入。泊まれば泊まるほどポイント還元率が上がっていく仕組みである。宿泊料金については、地域による幅が少ないのが特徴だ。

●アパホテルの宿泊料金(土曜日、1名) 
【宿泊料金(5地域)】1万100~1万4100円 
【東京駅近辺】1万1500円 
【名古屋駅近辺】1万1900円 
【大阪駅近辺】1万4100円 
【京都駅近辺】1万3200円 
【博多駅近辺】1万100円 
【宿泊特典・おトクなプラン例】90日前~14日前の予約で割引プラン、2泊以上の清掃不要プランで1泊につき100ポイント付与

4チェーンを比較した上で結論を言うと、価格帯が安定して安かったのは東横インだった。ドーミーインは他社と比べると割高感が強く、スーパーホテル、アパは空室状況によっては価格がかなり変動する印象を持った。宿代を安くしたいなら、競争率は高いが東横インにしておけば間違いないだろう。

■安くてサービスもいい〇〇に泊まれ!

公式サイトから予約すること以外に、宿泊費を安く抑える裏ワザはないだろうか?

「メインエリア近辺の宿が高ければ、ベッドタウンのビジホを探すといいでしょう。安くてきれいなホテルが多いんですよ。例えば、東京から少し離れた千葉県のつくばエクスプレス沿線のようなニュータウンの駅前は安く泊まれて、なおかつ築年数の浅い新しいホテルが多いです。古いホテルも多いですが、埼玉県の西武線や東武線なども穴場ですね。名古屋なら一宮駅、小牧駅、春日井駅、京都なら滋賀県の大津駅などを選択肢に加えてもいいかもしれません」

そしてもうひとつ穴場となるのが、宿泊予約サイトに載っていないような公共施設内にあるホテルだという。

「都道府県が所有する文化会館や福祉施設の中に、ひっそりと宿泊施設が入ってるケースがあるのですが、ダイナミックプライシングをとらなかったりして、価格はビジホチェーンよりも安いケースがあります。覚えておくといいでしょう」

ほかにも、こんな裏ワザが。

「実は現在レジャーホテルとも呼ばれる一部のラブホテルの一般利用が増えているんです。特にインバウンドの活況で外国人観光客の宿泊が増えており、朝食がロビーで提供されたり、レンタサイクルを備えていたりと、徐々に変化しつつあります。

レジャーホテルのいいところはいくつかあって、まずダイナミックプライシングを用いていないところが多く、宿泊料金が変動することがない点。そしてほぼ宿泊予約サイトに掲載されないため、競争率は圧倒的に低い。

さらにレジャーホテルは突発的な利用が多い場所ということもあり、アメニティ類が豊富にそろっているのもうれしいところでしょう」

東京だと新宿区歌舞伎町や渋谷区道玄坂、ほかに恵比寿や錦糸町など、繁華街のレジャーホテルが狙い目とのこと。例えば大塚の「ホテル ピーズリゾート」なら、ビジホの倍近い広さの部屋が同じ12月21日に1万2900円で宿泊できる。

最近のレジャーホテルは予約が可能なところも増えているし、領収書も社名で出してくれるところも多く、経理に回す際も気をもむ必要もナシ。人を選ぶが、抵抗がなければ使わない手はない!

ホテルの高騰は今後も収まらなそうだが、できる工夫はいろいろあるのだ。