『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰が今年思いついた"どうでもいい"ひらめきたちを語る。
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パリ五輪の新競技として注目を集めた、ダンススポーツの「ブレイキン」。動詞の「ブレイク」を現在進行形にすると「ブレイキング」のはずが、競技名は「ブレイキン」。「ウオーキング」のことを「ウオーキン」と言ってるのと同じ。
こんな鋭いような鈍いような「気づき」が降ってくることってありませんか? ボーッとしてたり、無心で作業をしているときに急に浮かぶ思いつきや、どうでもいいひらめきのことを、英語では「シャワーソーツ(Shower Thoughts)」といいます。
「どうでもいい」が大事な要素で、その瞬間は「私、天才かも」とひとりで世界の真理を突き止めたかのように感動を覚えるものの、すぐさま「どゆこと?」「だから何?」と冷静になるところもセットです。
シャワーソーツ的発見や思いつきは瞬時に忘れることがほとんどですが、たまに覚えているものもあります。ここで、今年脳にたまったひらめきを放出させてください。
①「歯磨き粉に中毒性のある成分を入れたら、口腔(こうこう)ケア向上につながる」
ほかの問題が生じるかもしれないけど、ひとまずみんな歯磨きがしたくなる。
②「クマさんの形をした容器で売っているハチミツ。ハチミツを実際に作ったハチからすると、なかなか失礼なデザイン」
自分たちじゃなくて、何もしてないクマがモチーフなんて。この商品を販売できているのは俺らのおかげだぞ、と。クマ、関係ないだろ。ミツバチの形のボトルがあってもいいかも。
③「どこかに、私とまったく同じ生年月日の動物がいる」
カメとか、鳥とか。長生きの動物がこんなにもいるわけだから、同じ日に生まれた動物がいないほうがおかしい。そいつに会いたい。
④「人がネクタイを着ける理由は、みんなもネクタイをしてるから、というだけ」
世間がネクタイをしている人を「しっかりした人」と決めているから、という以外、理由がない。実用性なしの不思議なアイテム。でも、色とか柄とかはかわいい。
⑤「好きな曲を自分でかけて聴くより、突然どこかから聞こえてきたほうがうれしい」
コンビニのBGMとかラジオで好きな曲が流れたときのテンションの上がり方よ。同じ曲なのに。誰かに作ってもらったごはんが、自分で作ったものよりおいしく感じるのと一緒? 私は自分の料理が好きだけど。人間って面倒くさいですね。
⑥「空飛ぶクルマが実現したところで、交通手段としてあまり便利ではなさそう」
⑦「シンクロナイズドスイミングがあるなら、シンクロナイズド高跳びがあってもいい」
アーティスティック高跳びでもOK。
⑧「子供は大人が好きなことを自由にできると思っているけど、大人は子供が好きなことを自由にできると思っている」
⑨「カリカリ系の食べ物は時間がたつと湿気てしっとりするけど、しっとりした食べ物は固まってカリカリになる」
以上。脳の大掃除完了。何かとため込むことは良くないです。皆さんもどうでもいい考えを放出してみては。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。たまったひらめきの放出は、脳の大掃除というより、脳のオナラかもしれない。公式Instagram【@sayaichikawa.official】