冬場は痛みが出てきやすいので要注意! 冬場は痛みが出てきやすいので要注意!

人生において一度は通るであろう悩み"膝の痛み"。その痛みのさまざまな疑問を先生に聞いてみた。今は大丈夫という人も将来を見据えて読んでおこう!

■ちょっと将来が不安! 膝の痛みについて教えて

人生100年時代。最も大切にしなければならない体のパーツのひとつが膝! 40代から60代の男性150人にアンケートを取ったところ、40代では5人に1人が、60代になるとおよそ3人に1人が膝の痛みと付き合いながら生活していることが判明。

形成外科医として、膝をはじめ老化への予防医学に長年携わっている関根彩子先生はこう語る。

「日本で膝の痛みに悩む方は増加中。現在約3000万人いるといわれています。背景には高齢化だけでなく、リモートワークなど生活環境の変化もあります。膝の痛みが出始めると、かばうことで腰、肩、頭痛と全身に影響が出るため若い方も要注意です」

というわけで、早めに備えておきたい膝の痛みのさまざまな疑問に答えてもらった。まずは基礎知識から!

Q.そもそも、なぜ年を取ると膝が痛くなるのでしょう? 痛くならない人もいる?

「ケガをしたわけでもないのにだんだんと膝が痛んできた、という加齢とともに痛くなる膝痛の多くが『変形性膝関節症』です。

筋力の低下やダメージの蓄積により、膝のクッションの役割を果たしている軟骨がだんだんと薄くなり、骨と骨が直接ぶつかることで、関節が炎症を起こしている状態です。

50代頃から急激に増え、80代になるとほとんどの人が痛みを抱えると考えられているため、いずれは誰もが経験すると考えておいたほうがいいでしょう。

ちなみに、女性は閉経後に骨密度が下がりやすいため、男性よりも変形性膝関節症になりやすい傾向があります。膝の痛みには変形性膝関節症以外にリウマチの可能性などもありますので、痛みを感じたらまずは病院で診断を受けましょう」

60代ではおよそ3人に1人が悩んでいることが判明。さらに年齢を重ねると増えていくようだ 60代ではおよそ3人に1人が悩んでいることが判明。さらに年齢を重ねると増えていくようだ

Q.一度、変形性膝関節症になると一生治らない?

「原因次第ですが、早い段階で適切な診断と対処を行なえば改善することが多いです。筋力、体重、姿勢などが原因であれば、その点を改善することで回復が見込めます。

日常生活に支障を来すほど痛みが出ている場合は投薬や手術が必要になるため、重度になる前の診察と対処が重要です」 

変形性膝関節症は、加齢による筋力の低下などで関節軟骨が擦り減り、大腿骨と脛骨がぶつかり合うことにより痛みが生じる 変形性膝関節症は、加齢による筋力の低下などで関節軟骨が擦り減り、大腿骨と脛骨がぶつかり合うことにより痛みが生じる

Q.20代でスポーツに打ち込んだのですが、将来、膝が心配です。どんな人が痛みやすいですか?

「変形性膝関節症が出やすいのは、太っていて膝に負担をかけていた人やハードな運動をしていた人が多いです。

特にバスケ、サッカー、バドミントン、テニスなど膝に体重をかけながら急な方向転換をするスポーツは負担が大きいため、若いうちはそこまで気にしなくていいと思いますが、膝に違和感を覚え始めたら注意が必要です。

過去に膝のケガをしたことがある人は、完治していてもゆがみや変形が出やすいので、加齢により痛みが出てきやすいです」

Q.親が膝痛で悩んでいるのですが、遺伝はしますか?

「そもそも膝のダメージは骨格や体形による部分が大きいので、体形の遺伝によって発症のしやすさは引き継がれるといえます。太っている人のほうがクッションが擦り減りやすいですし、痩せすぎて筋力が低いというのも良くありません」

続いては、今から備えておきたい予防に関する疑問を。

Q.膝にいい運動などはあるのでしょうか?

「激しい運動は膝への負担が蓄積してしまいますが、一方で適度な運動は非常に重要。ジョギング、ウオーキング、水泳などで体重管理をしながら筋力をつけておくことは膝を守ることにつながります。特に水中ウオーキングは膝に負担をかけずに筋力を高められるのでオススメです」

Q.足組みなど普段の姿勢も痛みの原因になりますか?

「足を組むこと自体が膝に悪いというわけではありません。ただ、足組みを長時間続けると骨盤や背骨がゆがみ、筋肉の使われ方も左右非対称になるため、結果として膝を含めた体のさまざまな部分に影響が出てしまいます。

足組みに限らず、同じ姿勢を長時間続けないように心がけ、筋肉の緊張を分散させるようにしておきましょう。

一方、正座は長時間行なうと膝周辺の神経や血管を圧迫して良くありませんが、足がしびれない程度の適度な時間だと、正しい姿勢を保つのに良いとされています。ヨガや瞑想でも正座のポーズが入っているように、左右対称の姿勢に効果的な面があります」

足組みは左右のバランスにゆがみが生じるため極力避けたい。逆に、正座はバランスを整えるのにいいので適度に取り入れよう 足組みは左右のバランスにゆがみが生じるため極力避けたい。逆に、正座はバランスを整えるのにいいので適度に取り入れよう

Q.履く靴なども関係してきますか?

「自分に合った靴選びも膝の痛み対策としてかなり重要です。革靴など硬い靴よりもスニーカーなど柔らかい靴のほうが膝への負担は和らぎます。ただ、ビジネスシーンでの制約もあると思いますので、その場合は足裏のアーチをしっかり支えてくれるインソールを入れるのもオススメです。足を診察し、その人に合ったインソールを処方してくれる病院もありますよ」

■この予兆ってヤバイ!? 膝の痛みの素朴な疑問

次は、「これって膝痛の予兆!?」など不安に感じるシーンの疑問を聞いてみた!

Q.屈伸したり、階段を上ったりすると、膝から「キュッ」「パキパキ」という音が出るけど、大丈夫でしょうか?

「これらはどちらも膝を急激に動かすことで、膝の間にある『関節液』に気泡が生じ、破裂している音。痛みが伴っていなければ、基本的に問題はありません。

ちなみに指の関節をパキパキ鳴らすと太くなるという俗説がありますが、これはウソ。同様に膝関節が鳴ったからといって太くなって丈夫になることはありません」

Q.歩行時、たまに膝がガクッとなることがあるけど大丈夫でしょうか?

「痛みがなければ、ただ筋力が低下しているだけなので、そこまで気にする必要はなさそうです。ただ、頻繁にカクカクするようであったり、痛みがある場合は半月板がダメージを受けたり、靱帯が傷ついていたりする可能性があります」

Q.気のせいか、冬になると膝が少し痛む気がします。関係はありますか?

「寒いと血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉も硬くなるため、痛みが出やすくなります。冷えたときは膝を少し温めて血管を広げ、血流を促してみてください」

もし膝に痛みが出だしたら? その対策も聞いておこう。

Q.病院に行くほどじゃないけど膝が痛むとき、家でできることってありますか?

「少しでも痛みがある場合はなるべく早く病院に行くことを推奨しますが、家でできる対応として、膝を心臓より高い所に持ち上げることは有効です。足を高くすることで、血流が膝にいくのを防ぎ、炎症が和らぐと考えられます。

また、筋肉が一時的に硬直して痛みが出ているような場合はマッサージをするのもありです。ただし、腫れている場合など、明らかに炎症がある際は触らないようにしましょう。

痛みを和らげる目的であれば湿布を使うことも問題ありませんが、根本的な治療にはなりません。医師による診断後に、家で適切な対応を行なうようにしましょう」

膝に負担がかかりにくい最適な運動は水中ウオーキング 膝に負担がかかりにくい最適な運動は水中ウオーキング

Q.よく聞く「膝に水がたまっている」ってどんな状態なのでしょう?

「膝には関節液があり、それに加えて軟骨もあるおかげで、関節がスムーズに動くようになっています。

正常だと関節液がうまく滑膜外に排出されていいバランスが保たれるのですが、炎症が多くなると、うまく排出されずパンパンになるのです。これが『水がたまっている状態』で、注射針で抜くことが必要な場合もあります」

膝に水がたまるというのは、炎症などで関節液の滑膜外への排出がうまくいかず、産生量が増えることで起こるもの 膝に水がたまるというのは、炎症などで関節液の滑膜外への排出がうまくいかず、産生量が増えることで起こるもの

ほぼ全員がいつかは付き合うことになる膝の痛みだけど、適切な予防でなるべく発症を遅らせよう。