「年齢を重ねるということは経験を重ねるということ。ならば、それは"老い"ではなく"成長"だ。若者よりも豊富な経験を生かしてみんなが百歳脳を創れば日本は復活する!」と語るドクター・中松氏
人は年を重ねると高齢者と呼ばれ、お荷物扱いされることがある。しかし、百歳を超えてもまだまだ成長し続け、現役世代の追随を許さない脳を創ろうというのが"百歳脳"の考え方だ。ドクター・中松氏に聞いた。
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――なぜ、『百歳脳』を書こうと思ったのですか?
ドクター・中松(以下、中松) 少子高齢化問題があるからです。これは日本の最重要課題です。政府は子供を増やすために教育に予算をつけたりしていますが、それで子供が増えるかは疑問です。一方で65歳以上の高齢者は人口の約3割。では、どうすればいいのか?
そこで必要なのが発想の転換です。"高齢者のパワー"を使えばいい。要するに「高齢者は使い物にならない」という概念に対する反撃がこの本なんです。
では、高齢者のパワーとはなんなのか。世間の高齢者に対する認識は「年齢」という時間軸だけですが、私の認識は「時間」のX軸、「学識経験」などのY軸、そして「質」を表すZ軸の3次元空間で構成されています。
質というのは「どれだけ人を思いやることができるか」とか「いかに世の中のためになることができるか」という意味です。
――なるほど。
中松 X軸だけで考えると高齢者は死んでいくだけの存在に過ぎません。でもY軸とZ軸を加えると経験や質の積分値が増えていく。年齢だけで考えるのではなく、このXYZの3つの要素で考えるべきなんです。これを"ドクター・中松の左手の法則"と言っています。
もうひとつ"ドクター・中松の右手の法則"があります。人間は、手足、内臓、皮膚や血管などが土台で頭が頂点のピラミッドという構成です。頂点にある頭は鍛えることでシナプスがどんどん増えて、優秀になっていきます。また、手足は筋トレで強さを維持・向上できます。
私は42歳のときに筋トレで53tの負荷をかける運動を始めました。その筋トレは今でも週2回のペースで続けています。
内臓は、私が発明した1日1食主義などのサイエンティフィック・フーディーズ理論に基づいた食事で維持しています。食事は脳にとって非常に重要な要素です。私は42歳の厄年のときから今まで、すべての食事の写真を撮っています。
そして、採血をして何を食べるとどのように体が変化するかを分析しています。この研究で2005年にイグ・ノーベル栄養学賞を受賞しました。
土台の向上で高いピラミッドが形成され、脳という頂点のコンピューターが最高のものになり、非常に能力のある高齢者が出来上がっていくんです。
――脳を働かせるには恋愛もいいと書いてありましたが、ドクター・中松先生は今でも恋愛をしているのですか?
中松 恋愛というよりも、私は頭の訓練、発明で頭を鍛えています。本に書いたのは「恋愛をしろ」とか「セックスをしろ」とかではなくて、いろいろなやり方で頭を使うということです。
文章を書くのでもいいし、歌を歌うのでもいい。実際、私はシンガー・ソングライターとしてアメリカで曲をレコーディングしています。そういう方法もあるということです。
――そうすることで、脳が成長し続けるわけですね。
中松 ええ。百歳脳は質を積み上げていくということです。ひとつの例を挙げると、私は17歳のときに海軍に入って、ものすごくハードな訓練をしました。これは知識の訓練もあるし、体力の訓練、精神力の訓練もあります。そうした若いときの訓練も役に立つんです。
もうひとつ。医学的には人間は120歳で細胞分裂が終了するといわれていますが、私は144歳まで生きるという説を提唱しています。そして、私の今までの研究では、童貞を破った年齢に6をかけた年齢がだいたいの寿命になります。
例えば、17歳で破った人は17×6で102歳です。でも私の場合は24歳だったから、144歳なんです。
――著書の中で「百歳脳連盟」をつくりたいと書いていました。もしつくることができたら、何をしたいですか?
中松 国のためになることをやります。人口が減ると産業や経済など国のパワーがどんどんなくなっていきますから、それを百歳脳の人がカバーする。社会に出てどんどん働くということです。
若者以上の能力があるのだから、少子化を凌駕する力が出ます。私ひとりでもやりますが、人数が増えればそれだけパワーも出る。それが、今の日本の課題解決につながるわけです。
――次の東京都知事選挙(2028年予定)に出馬することを目指すとも書かれていました。もし立候補したら、世界新記録になると。
中松 次の都知事選のときに私は100歳になっています。100歳での立候補は世界の歴史上初。誰もやったことがありません。そして、もし私が都知事になったら、世界の発明王が都知事ですから、東京都が世界の発明センターになります。そうなれば外国の投資家やベンチャーが日本に集まってくる。どんどん東京や日本が金持ちになります。
でも、私は百歳脳です。百歳脳は質が高いので無欲なんです。裏金を懐に入れたり、他人の悪口を言ったりしません。自分のことではなく他人を幸福にするんです。だから集まったお金は全部、都民に還元します。税金を安くすることとはまったくレベルが違います。これまでとは違う東京都になります。
――あと3年半、待たないといけませんね。
中松 待たなければいけないのではなく、あと3年半しかないんです。その間に『百歳脳』を皆さんに読んでいただいて、百歳脳がどういう人間か、私が何を考えているかを理解していただきたいと思います。前回の選挙のときはまだ、百歳脳を理解する人が少なかったんです。
――最後に、これから百歳脳を目指そうと思っている人にひと言いただけますか。
中松 ひと言ですか。ひと言じゃ、ちょっと無理ですよ。
――ひと言でなくてもいいです。
中松 ドクター・中松の左手の法則と、ドクター・中松の右手の法則を実行してください。そうすることで百歳脳はできてきます。私はこれまでに3946件の発明をしましたが、発明の数は80歳の頃より90歳のときのほうが多い。つまり、脳がどんどん発達しているわけです。
頭がひとりでに動いて発明が出てくるんです。これは私だけの能力ではなくて、やる気があれば誰にでもできることです。
●ドクター・中松
1928年生まれ。96歳。国際創造学者、実業家、発明家。5歳で最初の発明をし、その後、灯油ポンプ、フロッピーディスクなど発明件数は3000件以上。2005年にノーベル賞受賞者が選ぶ「イグ・ノーベル賞」を受賞。ロサンゼルス、ニューヨークなど米国17市州で「ドクター・中松デー」が制定されている。1991年に東京都知事選挙に立候補し、その後も衆議院選挙、参議院選挙などこれまでに合計17回の選挙に出馬。2028年都知事選への立候補も目指す
■『百歳脳』
青志社 1650円(税込)
これまでに3000件以上の発明をした世界の発明王、ドクター・中松の最新の発明といえるのが"百歳脳"だ。人間は年を取ると老いるが、それは「年齢」というモノサシだけで考えた場合のこと。年齢と経験と質をかけ合わせれば、その価値は高まり、百歳になっても若者に負けない能力を発揮できるようになる。それが百歳脳の考え方だ。少子高齢化時代の日本を救うのは百歳脳を持つ人かもしれない。この本を読んで百歳脳の創り方を学ぼう