サウナブームにより若い女性にまで利用者の裾野は広がったものの、古参客の離反という事態が進行している サウナブームにより若い女性にまで利用者の裾野は広がったものの、古参客の離反という事態が進行している
サウナブームに陰りが見え始めているようだ。

新規出店は相次いでいるものの、過当競争に耐えきれず閉店を余儀なくされるケースが目立ち始めてきた。ブームに便乗して開業したものの客が集まらずに短期間で閉業したり、老舗店でも新規客がかつての常連客を押し出したため、客が戻らずに四苦八苦するといった事例もあり、業界全体の縮小化も懸念されている。

■好立地でも閉店続出

東京・浅草の中心地に位置し、9階建てという巨大施設で下町サウナのランドマーク的な存在感を放った個室サウナ「SAUNA RESET Pint(ピント)」が今年1月末、2022年の開業から2年半で閉店となり、都内のサウナーたちを驚かせた。月2回程度の頻度でピントを利用していたという40代の会社員男性が振り返る。

「ピントは、今年3月で東証スタンダード市場より上場廃止となったレーサムという不動産会社が運営していました。個室サウナなので気兼ねなくロウリュウが楽しめたのは良かったんですが、水風呂や風呂、シャワー、ととのいスペースは共用なので解放感を満喫できるかというと微妙。

通常コースの料金が120分3000円からと個室サウナにしては安い方なんですが、実際にサウナを利用できるのは75分だけなのでせわしない。世界の名所などが映し出されるVR瞑想ルームが売りのようでしたが、使ったことはありませんでした。

どれをとっても〝これじゃない感〟が漂う施設でしたが、いつも空いていたのは有り難かったです。でも、それじゃあ経営は成り立ちませんよね。地下鉄の浅草駅からも10分以上歩くし、開業にあたってしっかりマーケティングをやったのか疑問です」(40代会社員)

個室サウナは面積の狭い物件でも開業できることからコロナ前から出店が相次いでいたが、一般的なサウナより高額な点がデメリットで、原宿や大井町といったエリアでも短期間で閉店するケースが相次いでいる。

ブームの陰で閉店が続出するのは、そもそもサウナ人口が目減りしているという背景がある。一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所の2023年度の調査では、サウナ人口は1779万人で、最多だった19年度の2824万人から37%ほど減っている。コロナが明けて復調傾向にあるとはいえ、実はサウナ人口は減っているのだ。

■新規客増も古参客が離れ‥‥

息詰まりをみせるサウナ業界の暗い影を浮き彫りにしたのが、サウナ事業のベンチャー企業を経営する男性が自殺したとみられる一件だ。

「男性が経営する会社は、温浴施設の予約システムの開発などを手掛けていました。実際に『ドーミーイン』といった有名なホテルチェーンが採用していて、DV事業は評価されていたようですが、トレーラーを使った移動型サウナの運営や、高級感あふれるサウナ店の開業につまづき、多額の負債を抱えていたと言われています」(芸能記者)

サウナ業界への逆風は老舗店にも及んでいる。都内で40年以上、銭湯サウナを経営する男性は次のように明かす。

「コロナ前はサウナブームが大きく盛り上がり、新規客がどんどん入ってきて売り上げが倍増した。ただ、混雑したせいでもともと経営を支えてくれていた60代以上の常連客が、サウナのない銭湯やスポーツジムなどにくら替えした。

ブームが落ち着いたいまは、新規客は減って常連客も戻ってこない悪循環。燃料費も高騰して、いつ廃業しようかと頭を悩ませています」(銭湯サウナ経営者)

■人件費カットが招いたモラル崩壊

燃料費高騰は、店の質の低下も招いているという。前述の会社員男性は説く。

「燃料費高騰をカバーするため従業員を減らす店もありますが、結果、各種サービスや清掃が行き届かずに評判が下がることが多い。また、安全面も度外視されてサウナ室内でボヤ騒ぎを起こした挙句に廃業に追い込まれた店もあります」(前出の会社員)

一部では、男性浴場でパフォーマンスを行う女性熱波師に対するセクハラ行為も横行している 一部では、男性浴場でパフォーマンスを行う女性熱波師に対するセクハラ行為も横行している
さらには、利用客の性のモラル低下もサウナ低迷の一因だという。

「女性サウナーの増加にともなって女性の熱波師やアウフギーサーも増えましたが、女性客だけでなく男性客向けにサービスを行うことも多い。そうした折に、不必要に下半身を見せつけるなど、セクハラまがいの行為を行う男性客もいて問題となっています。

また、これも従業員カットで目が届かなくなったこととも関係しますが、鹿児島では男性客同士の性行為が蔓延(はびこ)って閉店した店もありました。こんな殺伐とした環境じゃ、もはや『整う』ことなどできませんよ」(前出の会社員)

サウナ業界の熱は、徐々に冷めつつあるのかもしれない。