地方に出かけると、なじみのないビジネスホテルを目にすることがないだろうか? アパホテルや東横インなどの全国チェーンが幅を利かせる中、実は各地のローカルビジホチェーンが個性を先鋭化させているのだ。読めば旅行も出張も、もっともっと楽しみになる!
※<宿泊料金の一例>について平日は5月14日(水)、週末は17日(土)の宿泊料金を調べた。店舗は当該エリア内からランダムにピックアップした。いずれも朝食付きプランの宿泊料金で、公式HPから予約した場合の料金(税込)を示した。(データはすべて4月21日時点)
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■ホテルサウナブーム 火つけ役は北海道!
ビジネスホテルの業界再編が加速している。東横インやドーミーインなどの大手チェーンが続々と地方へ進出し、ローカルホテルを淘汰・吸収していく一方、大手チェーンにはない個性を打ち出して生き残るローカルホテルチェーンも多数存在する。コロナ禍が明け、訪日観光客が急増した今は、〝ビジホ戦国時代〟とも言える様相を呈しているのだ。
今回は個性豊かなローカルビジネスホテルチェーンに焦点を当て、北からエリア別に紹介していく! ナビゲートいただくのは年間300泊以上ホテルを利用するというホテル評論家の瀧澤信秋さん、そしてホテルや旅館、宿泊業のあらゆる情報を扱う専門誌『ホテル旅館』(柴田書店)編集長の金澤達也さんのふたりだ。
今回はローカルビジネスホテルチェーンの定義を次のふたつに設定。
①国内に2店舗以上構えていること
②ある特定の地方を中心に展開していること
ちなみに、JR系列などの〝電鉄系ホテル〟は全国各地に存在するが、瀧澤氏によると「資本力が大きく、ローカルビジネスホテルチェーンならではの個性にはやや欠ける」とのこと。電鉄系のビジネスホテルについては図版で掲載しているので確認してみてほしい。
では北海道から紹介していこう。まずひとつ目は、帯広市や北見市などに展開するホテルパコ!
「パコはなんといってもサウナが充実しています。今ではサウナや大浴場を備える大手チェーンも珍しくないですが、そのブーム以前からパコは本格的なサウナ施設を備えていたんです。サウナ好きもうなるクオリティの高さは必見です」(瀧澤さん)
ただ、実は現在ホテルパコに、大浴場やサウナが備えつけられた店舗はない。金澤さんによると、ホテルパコ創業時の運営会社はすでに倒産しており、現在はリオ・ホテルズが運営元となっているとのこと。また、名称もホテルグローバルビューにリブランドされており、パコ自体は縮小傾向にあるそうだ。
●ホテルパコ
<宿泊料金の一例>【平日】1万2036円~ 【週末】1万3794円~
<店舗数>3店舗
<ホテルがある都道府県>北海道
自然豊かな北海道ならではの海の幸や山の幸を使った朝食は格別。ホテルサウナブームの先駆的存在だが、「ホテルグローバルビュー」へのリブランドが進む。
続いて紹介するのはホテルテトラ。金澤さんによると、こちらはかなりユニークな割引制度があるそうだが?
「『ハゲ割』という割引特典があり、その名のとおり頭髪が薄い人限定で使えるサービスなんです。こちらは自己申告制で、最終的にはスタッフがハゲ割を適用できる範囲の毛量なのかどうかの判断をするそうですよ」
コロナ前に函館駅前店に宿泊した20代男性はこう言う。
「ほかのホテルよりだいぶリーズナブルでした。建物は古めだったけど、泊まる分には問題なかったです」
●ホテルテトラ
<宿泊料金の一例>【平日】9500円~ 【週末】1万2350円~
<店舗数>16店舗
<ホテルがある都道府県>北海道、青森、東京、神奈川など
「頑張るあなたをハゲまします!」と銘打った「ハゲ割」は1泊当たり500円引きになる。朝にはパンやスープの無料サービスも。予約は公式サイトからが一番安い。
■ローカルビジホが東北に少ないワケ
お次のエリアは東北。瀧澤さんによると東北にはめぼしいローカルホテルが少なく、大手チェーンがシェアを占有している状況だという。
「ビジネスホテルの全国分布の特徴は『西高東低』。西には広島や福岡など、東京からだと日帰りが難しいエリアが多い分、ビジネスホテルも栄えてきました。一方、東北には仙台市といった大都市はあるものの、東北新幹線を使えば東京まで日帰りできるため、なかなかビジネスホテルが発達しなかったと考えられます」
そんな中で、東北を中心に展開するホテルパールシティというチェーンを発見。全9店舗中7店舗を東北に構えており、公式サイトによると「ビジネスからご家族まで」と、幅広い客層を受け入れるホテルチェーンである。
ただ、館内にはレストラン会場などを備えており、ビジネスホテルというより、ワンランク上の〝シティホテル〟に近いチェーンと言えそうだ。
●ホテルパールシティ
<宿泊料金の一例>【平日】6014円~ 【週末】6014円~
<店舗数>9店舗
<ホテルがある都道府県>秋田、岩手、宮城、山形、北海道など
レストランなどを備えたシティホテルだが、パソコンやプリンターのあるビジネスコーナーを設けた店舗もあり、ビジネス利用も可。宿泊料金はかなり安め。
関東エリアには、瀧澤さんが「日本一」と太鼓判を押すビジネスホテルがある。群馬県高崎市と東京都足立区に店舗を構えるホテル ココ・グランだ。いったい何が日本一なのだろうか?
「ビジネスホテルを自称しながらも、その範囲を超えた高付加価値サービスを提供しているのが最大の特徴です。特に高崎店はすごい! 夜景の見える炭酸泉の露天風呂やサウナ、岩盤浴、高機能マッサージチェア、さらにはレストランにバーカウンターまで備えているんです。
そして、ホテルとしては珍しくダイナミックプライシング(需要に応じ価格を変動させる仕組み)を導入しておらず、宿泊料金を一定に保っているのもユニークです」
瀧澤さんによると、高崎市は東京から日帰りで行ける距離のためビジネスホテルの需要があまり見込めないエリア。
実際、大手のドーミーインもその本領を発揮できない稼働率だったそうだが、ココ・グランの台頭によって高崎市のイメージが〝泊まる都市〟に変わったほどだという。その高品質なサービスによって今なお根強いファンを獲得し続けている。
●ホテルココ・グラン
<宿泊料金の一例>【平日】1万3200円~ 【週末】1万6100円~
<店舗数>2店舗
<ホテルがある都道府県>東京、群馬
シモンズ製のベッドやマッサージチェアを完備した部屋や無料のバイキング朝食など、とにかく豪華なハイクラスビジホ。ロビーや客室、大浴場の内装はいずれも高級ホテルと遜色ない。客室はシングルやダブル、ツインのほか、スイートルームもある。
同じく関東エリアの中でも東京を中心に展開している珍しいローカルビジネスホテルも存在する。それがパールホテルだ。東京は新宿や茅場町、両国などに展開し、神奈川は川崎市に2店舗を構える。東京へ出張の際はぜひ利用してみてはいかがだろうか。
●パールホテル
<宿泊料金の一例>【平日】1万7700円~ 【週末】1万5400円~
<店舗数>7店舗
<ホテルがある都道府県>東京、神奈川、群馬
新鮮な野菜やフルーツを使用した健康朝食や、店舗によってはディナーにチーズフォンデュを提供したり、コース料理を用意するなど、食事に力を入れている。
■中部・北陸地方は名ホテルぞろい!
お次は北陸エリア。その代表格が、福井、石川、富山の北陸3県に展開するマンテンホテルだ。
「こちらはサウナや大浴場が人気です。かなり大手チェーンを意識している印象で、例えばドーミーインが『夜鳴きそば』を売りにしていることから、マンテンホテルでは夜食のラーメンを無料で提供するサービスがあります。朝食は地産地消の新鮮な食材を使っていて、こちらも非常に力を入れていますね」
●マンテンホテル
<宿泊料金の一例>【平日】8880円~ 【週末】1万2080円~
<店舗数>6店舗
<ホテルがある都道府県>富山、石川、福井
北陸の味が楽しめる朝食は、和定食と洋定食から選べる上、ドリンク、サラダ、パンが食べ放題。夜食には数量限定で醤油ラーメンの無料サービスも! どの店舗も大浴場を備える。写真は富山マンテンホテル11階の展望大浴場で、立山連峰が一望できる。
もうひとつ、福井や石川、三重に展開するホテルエコノを金澤さんが紹介してくれた。
「駅から近く利便性のいいホテルです。また、睡眠の質にもこだわっており、高さ、硬さ、フィット感が調節可能な『折りかさね枕』などの寝具を開発しています」
●ホテルエコノ
<宿泊料金の一例>【平日】9300円~ 【週末】1万800円~
<店舗数>6店舗
<ホテルがある都道府県>石川、福井、三重
独自開発の「折りかさね枕」で快適な睡眠を追求。また、無料の朝食では各店舗所在地の地元の食材を使った地産地消メニューが楽しめる。客室テレビでYouTubeも見られる。
中部地方の有名ホテルといえばABホテルを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。愛知県安城市に本店を構え、現在では関東などにも進出中。36店舗を擁する〝下克上ホテル〟だ。
「こちらも東横インなどの大手チェーンを非常に意識しており、大手チェーンにはないサービスをいち早く取り入れてきました。
例えば、東横インが朝食無料サービスを取り入れているのに対し、ABホテルでは夕食無料サービスを提供しており、これには驚きました。
また朝食では、和食と洋食が日替わりで楽しめるバイキング形式となっており、食事サービスにかなり力を入れています」(瀧澤さん)
●ABホテル
<宿泊料金の一例>【平日】7600円~ 【週末】1万2400円~
<店舗数>36店舗
<ホテルがある都道府県>愛知、静岡、岐阜、三重など
愛知県安城市発祥の有名ホテルチェーン。朝食の無料サービスに、店舗によっては夕食の無料サービスまで提供している。運営企業は東証スタンダードに上場している。
続いて近畿地方では、梅田や心斎橋など大阪を中心に展開するハートンホテルに注目。
「駅近にあるため利便性が良く、客室も清潔で、ビジネスホテルとしてのクオリティは申し分のない穴場です」(金澤さん)
ただ、近畿地方は大手チェーンがひしめいているため、ローカルチェーンは意外と少ないようだ。
●ハートンホテル
<宿泊料金の一例>【平日】1万1930円~ 【週末】1万6650円~
<店舗数>6店舗
<ホテルがある都道府県>大阪、京都、東京
大阪を中心に展開。駅近で利便性も良く、スタイリッシュな雰囲気のある清潔な客室が特徴。一部を除くほとんどの店舗が12時チェックアウトを採用している。
魅力的なローカルビジホチェーンが最も存在するエリアは中国地方だ。最初に紹介するのがグリーンリッチホテル。鳥取や島根を中心に展開するこちらのホテルは、寝具へのこだわりが群を抜いているとのこと。
「快眠にこだわっているチェーンは枕に注力するところが多いんですが、こちらは枕だけでなく、マットレス、羽毛布団まで独自開発しているんです」
また外観も、金色を基調としたロゴマークが使われているなど、ビジネスホテルとしてはスタイリッシュで洗練されているのが特徴的。
●グリーンリッチホテル
<宿泊料金の一例>【平日】9300円~ 【週末】1万4300円~
<店舗数>25店舗
<ホテルがある都道府県>鳥取、島根、岡山、広島、山口、福岡など
西日本を中心に25店舗を展開。全体的に金を基調としたリッチ感ある雰囲気が特徴。快眠を追求しており、マットレスや羽毛布団などは独自開発したものを使用している。
続いては鳥取、島根、兵庫、広島に展開するグリーンホテルモーリス。
「まず客室の広さが挙げられますね。部屋タイプによっては20㎡前後と、ほぼシティホテル並みの部屋の広さ。今では常識となったビジネスホテルの大浴場ですが、グリーンホテルモーリスが先んじて導入しており、とても新鮮でした」(瀧澤さん)
また、グリーンホテルモーリスでは、宿泊客は660円で四季折々の旬の食材を使ったクオリティの高い朝食が楽しめる。
兵庫の豊岡店を3、4回利用した40代男性は「仕事で豊岡に行く際は、グリーンホテルモーリス一択」と語る。
「周囲の宿泊施設と比べて全体的にきれいな上に、大浴場があり、アメニティが充実しているのがうれしい。さらに朝食がおいしい。1階にはマンガとフリーコーヒーが用意されており、ホスピタリティも抜群。立地的に車で行く人も多い場所ですが、宿泊なら駐車場が無料なのもありがたいですね」
●グリーンホテルモーリス
<宿泊料金の一例>【平日】8690円~ 【週末】9240円~
<店舗数>5店舗
<ホテルがある都道府県>鳥取、島根、広島、兵庫
鳥取、島根の山陰地方を中心に展開。パソコンコーナーや会議室などを備えており、ビジネス利用に特化している。朝食はビュッフェスタイル。
山口を基盤に広島や福岡にも展開するホテルアクティブも日々サービスを進化させているホテルだ。瀧澤さんいわく、「無料の朝食に関しては、ビジネスホテル界で5本の指に入るクオリティ。とても無料とは思えない」とのことだ。
このほか、広島や岡山、福岡などに出店するホテル1-2-3もある。宿泊人数が増えれば増えるほど割安になるシステムを打ち出し、ビジネス利用だけでなく、夫婦やカップル、ファミリー層も取り込んでいる。
●ホテルアクティブ
<宿泊料金の一例>【平日】9800円~ 【週末】1万8000円~
<店舗数>3店舗
<ホテルがある都道府県>広島、山口、福岡
客室にはワイドデスクとマネジャーチェアが設置されており、仕事に集中できる環境が整っている。楽天トラベルやトリップアドバイザーの受賞歴多数。
●ホテル1-2-3
<宿泊料金の一例>【平日】8800円~ 【週末】8600円~
<店舗数>7店舗
<ホテルがある都道府県>広島、山梨、岡山、福岡、群馬、静岡
ホテル1-2-3専用ポイントカードで20ポイントためると5000円分のキャッシュバックが得られる。小倉、倉敷、福山以外に高崎や甲府にも出店している。
■圧倒的に安いHOTEL AZ
続いては四国地方を見ていこう。瀧澤さんによると、四国は大都市圏や新幹線沿線と比べてビジネスホテルの需要が高くない地域なんだとか。全国チェーンの雄である東横インが、来年2月にようやく高知に初展開する予定だ。
そんな四国地方だが、ハイパーインホテルというローカルホテルが存在する。高松駅前店を昨年利用した20代男性はこう言う。
「高松駅から徒歩3分で利便性が良かったです。部屋も清潔で、スタッフも親切に対応してくれましたね。特徴的だったのが、無料の自転車貸し出しサービスです。高松市へは観光で来ていたのですが、自転車で市内の観光スポットを回ることができたので満喫できました。
アメニティ類が1階にしかないため少々不便でしたが、でも地方のビジネスホテルとしては十分なクオリティでしたよ」
●ハイパーインホテル
<宿泊料金の一例>【平日】5600円~ 【週末】6300円~
<店舗数>6店舗
<ホテルがある都道府県>徳島、香川、岡山
自転車貸し出しサービスがあり、近場の観光などに便利。地元の新鮮食材を使ったビュッフェスタイルの朝食が魅力。一部店舗には無料ランドリーコーナーもある。
いよいよ最後の九州地方。HOTEL AZは九州随一のローカルホテルチェーンとして知名度を誇っている。運営企業は上場企業のアメイズで、その魅力はなんといっても宿泊料金。シングル利用の価格はこれまで5280円と同地域の平均よりかなりリーズナブルな均一価格で勝負していたのだ。
さらに公式ホームページから予約すれば330円引きとなり、1泊朝食付きで4950円。おまけに朝食はバイキングである。今年6月からは5800円に値上げ予定とのことだが、それでもコスパは抜群だろう。
「ロードサイドホテルで周囲にはあまり飲食店がないため、ホテル内に居酒屋などの飲食店が併設されていたり、日用品店があったりするところもユニークです」(瀧澤さん)
●HOTEL AZ
<宿泊料金の一例>【平日】4950円~ 【週末】4950円~
<店舗数>87店舗
<ホテルがある都道府県>福岡、佐賀、長崎、大分、熊本、鹿児島など
365日同一価格が魅力のホテル(一部店舗除く)。料金も圧倒的に安い。店舗によっては「ジョイフル」や居酒屋の「かまどか」などが館内にある。
続いては瀧澤さんも以前からリピートしているというホテルフォルツァだ。こちらは九州のローカルホテルの中で今最も勢いのある〝下克上ホテル〟なんだとか。
「地方発の高付加価値型のビジネスホテルとして名をはせていて、現在京都や愛知、石川、北海道などへ出店を拡大中です。客室の広さや、アメニティなどの充実度からシティホテルに近いクオリティのサービスを提供していますね」
マッサージチェアを備えつけた部屋があったり、ビジネスホテルの枠を超えた豪華なサービスは必見だ。一昨年大分店に宿泊した30代男性はこう語る。
「施設はちょうどリニューアルオープンしたばかりでとてもきれいでした。大分の郷土料理がいただける朝食バイキングはとてもおいしく、良かったですね」
●ホテルフォルツァ
<宿泊料金の一例>【平日】1万7300円~ 【週末】3万8300円~
<店舗数>11店舗
<ホテルがある都道府県>福岡、長崎、大分、大阪、京都など
各地方のソウルフードが提供される朝食が魅力。広々としたフリーラウンジでは、ひきたてのコーヒーやワインが楽しめる。九州以外に京都、石川、大阪などにも進出。
そして最後に金澤さんが紹介してくれたのがエクストールインホテル。こちらは熊本に2店舗、そして愛媛や香川、山口に展開している。
「最近できたばかりのホテルが多いので、館内がきれいで清潔です。サウナや露天風呂付きの大浴場のある店舗も多く、長旅の疲れも癒やせます」(金澤さん)
●エクストールインホテル
<宿泊料金の一例>【平日】6000円~ 【週末】1万1500円~
<店舗数>5店舗
<ホテルがある都道府県>熊本、愛媛、山口、香川
客室には腰に優しい特注高密度スプリングベッドと厳選素材の羽毛布団があり、快眠をサポート。女性専用シングルルームもあり。7月には高松市に新店舗がオープンする。
地方に出かける際は使い慣れた全国チェーンではなく、個性あふれるご当地チェーンホテルに泊まってみてはいかが?