『テレキャノ』でおなじみの監督と日本AV史をプレイバック!

AV黎明期の1980年代から00年代前半まで、業界に絶大な影響力を誇ってきたビデ倫がついに消滅。ひとつの時代が終焉を迎える。

松尾 2000年代中盤から終わりにかけての業界的なトピックでいえば、08年のビデ倫(日本ビデオ倫理協会)消滅は避けて通れないよね。

山下 そうだね。まあ、00年代中盤でビデ倫はすでに火だるまの状態だったけどね。

松尾 実は00年代に入って、独自の審査機関を持っていたSODや北都(現在のCA)あたりの人気セルメーカーがレンタル市場に参入してきたんですよ。で、規制もモザイクも緩い商品をレンタル店に置くようになってね。

山下 一方、ビデ倫加盟メーカーは濃くてデカい旧態依然としたモザイクのままだから、すぐセル勢に押されて。焦ったレンタル勢は、ビデ倫に対して「モザイクを薄くしろ」と迫ったんです。

松尾 けど、いくら突き上げを食らってもビデ倫は首を縦に振らず。規制が厳しくなることはあっても、緩んだっていう前例はないからね。

山下 とはいえ、ビデ倫の規制基準ってホントひどかったよね。セーラー服の例にしても、襟元が“三本線”の服はリアルすぎるから女優に着せちゃダメだとか(笑)。

松尾 タイトルの表記でいったら、“ハメ撮り”がNGだったから「じゃあ“ナマ撮り”は?」つったら、それはOKってのもあったね(笑)。

山下 確か“獣姦(じゅうかん)”の表記もアウトだったよね?

松尾 いや、獣姦は途中から入った規制で、作品自体のリリースがNGになったんだよね。で、古巣V&Rの『男と女のアニマルゲーム』シリーズも出せなくなったと。

山下 そういう、あやふやな規制でメーカーを縛り上げてる間に新たな審査団体が次々に誕生してきた。

松尾 そう。SODが立ち上げていた「メディ倫(メディア倫理協会)」を手本に、各メーカーが次々に審査団体を立ち上げ始めたんですよ。

山下 北都が「日本倫理審査協会」(07年にビジュアルソフト・コンテンツ産業協同組合に移行)をつくり。

松尾 クリスタル映像は「日本映像ソフト制作・販売倫理機構(JVPS)」、桃太郎映像出版は「全日本映像倫理審査委員会」、ちょっと遅れてプレステージ系が「東日本コンテンツ・ソフト」を設立して。

まさかのビデ倫摘発!

―ちなみにメディ倫は05年に経産省の認可を受けながら、CSA(コンテンツ・ソフト協同組合)という組織に改編を行なっていますね。

山下 そして、いよいよ切羽詰まったビデ倫は、06年にようやく基準を見直すんです。

松尾 端的に言うと、モザイクを薄くしたと。

山下 ところがモザイクを薄くしたビデ倫が翌年、警視庁からわいせつ図画頒布幇助(ほうじょ)容疑で摘発されてしまう。

松尾 同時にビデ倫加盟メーカー役員も逮捕されて…。

山下 以前も説明したように、ビデ倫って警察の天下り先ですからね、そこにガサ入れっていう異例の事態です。

―どんな背景が?

松尾 そのへんの裏事情については、ウチの社長が得意ですよ。(ハマジムの事務所にいた浜田一喜氏を呼び込んで)実際、どんな経緯があったの?

浜田 発端になった作品のジャケットを私も実際に見ましたけど、モザイクが極端に小さくて薄いんですよ。摘発されたメーカーの幹部に「さすがにこれはヤバいでしょ」と指摘したら、「ビデ倫のお墨付きがあるから大丈夫」って涼しい顔してましたけど。

山下 全然大丈夫じゃなかったと(笑)。

松尾 摘発によって、薄くなる一方のモザイクを牽制(けんせい)する意図があったのかな?

浜田 どうだろう。ただ、摘発されたのは「モザイクを薄くしろ」っていう声がとりわけデカかったメーカーなんだよね。偶然かもしれないけど、議事録にモザイクの濃薄について言質(げんち)が残ってるメーカーだけが挙げられてて。

松尾 他の自主審査機関からチクリが当局に入ったという噂もあったけど?

浜田 当時、90社を超えるビデ倫加盟メーカーが声をそろえて「モザイクを薄くしろ」と迫ってた。もしビデ倫に天下ってた警察OBが当局の現役たちにその内幕をこぼしてたとしたら…?

松尾 なるほど。で、ビデ倫にいたOBって捕まったの?

浜田 いや、OBが辞めてから摘発に入ってる。そこに行間は感じるけど…真相は闇の中だよね。そんなとこかな。

松尾 その後、08 年にビデ倫が消滅すると、レンタル勢の多くはCSAに鞍替(くらがえ)します。

山下 AV業界の盟主の座がレンタルからセルへと完全に交代した瞬間ですね。

松尾 AV誕生から綿々と続いた、ひとつの時代に幕が下りた感じがしましたよね。

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●この続きは『週刊プレイボーイNo.47』でお読みいただけます。

(構成/黒羽幸宏 撮影/井上太郎 取材協力/ハマジム アリスJAPAN h.m.p)

●カンパニー松尾1965年生まれ、愛知県出身。87年に童貞のままV&Rへ入社し、翌年に監督デビュー。代表作は『私を女優にして下さい』シリーズ。『劇場版テレクラキャノンボール2013』『劇場版 BiSキャノンボール2014』が社会現象的大ヒット

●バクシーシ山下1967年生まれ、岡山県出身。大学在学中にAV業界へ。90年に各方面で物議を醸した『女犯』で監督デビュー。以降、社会派AV監督として熱い支持を受ける。『ボディコン労働者階級』ほか代表作多数。著書に『セックス障害者たち』(幻冬舎)など