告示された立候補者たちを見て、地方からやってきた男たちがいる。
愛知県からクルマを飛ばして来たのは、元愛知県瀬戸市職員の酒向英一氏だ。
「ほかの立候補者を見ていて怒りを感じた。原発、五輪、とにかくすべてに対してだ!」
そして、前代未聞の発言が。
「公約は当選してから発表する!」
え!? なぜ!?
「どうせ当選しないんだから! 東京は全国の注目が集まる。とにかく怒りを表したい!」
ご家族は出馬に賛成ですか?
「立候補の相談はしてません! 家族は関係ないから電話はしないでほしい! 供託金は遺産が転がり込んだから、300万円ぐらい捨ててもいいと思った。とにかく、すべてに怒っているんだ!」
そして、告示の当日になって初めて出会ったのが金子博氏と松山親憲氏。松山氏はなんと鹿児島からの参戦だ。
「立候補ができるのか、受付に間に合うか、それが最大のアレで。余裕がありませんですみません」
本当にギリギリだったため立候補手続きで忙しく、残念ながらじっくり政策を聞くことはできなかった。政見放送と公報を待ちたい。
一方、福島県から参戦の金子氏はゆったり構える。
「今までは人の社会のためと思って商売をやってきたけれども、全部やめて考えてみると、皆さんのおかげで今日があるんだな。この都庁だって私のために建ててあるんだもん。そのお返しの人生をやろうと思って選挙に出ました」
もちろん、彼らの訴えを“安全地帯”から笑い飛ばすのは簡単だ。しかし、重大な事実を指摘しておきたい。
彼らと違って、あなたはまだ立候補すらしていない。立候補しなければ、たった1票の支持も得られることはないのだ。
(取材/畠山理仁)
■酒向英一(64歳、無所属) 元愛知県瀬戸市職員。300 万円の供託金の原資は遺産で、捨てる覚悟だという。都知事選への立候補は今回が初。
■松山親憲(72歳、無所属) 会社員。鹿児島県指宿市からすべり込みで参戦。過去に指宿市議選への立候補経験があるが、都知事選は今回が初。
■金子 博(84歳、無所属) 元建設会社社長。「皆さんのおかげで今日がある」と、福島県白河市からの参戦。都知事選への立候補は今回が初。