2月9日の投開票が迫る東京都知事選。しかし、候補者の人となり、政策だけで選べないのが選挙というもの。「どんな人が支援しているのか」を知らないと、彼らが当選後に“取り巻き”と化し、新知事の政策を左右してしまうことも往々にしてあるからだ。

数々の事前世論調査で支持率トップをひた走る舛添要一元厚労相だが、その支援団体にはどんな人々が、どんな思惑を抱いて集まってきているのか? テレビ朝日コメンテーターの川村晃司氏が説明する。

「舛添さんの選挙事務所を固めるのは政府与党である自民、公明。そして、さまざまな労働組合の連合体である『連合東京』です。舛添さんは知名度、人気はありますが、直近の所属政党は新党改革。弱小組織の上、無所属で戦っているので足腰となる組織がない。しかし自民、公明、さらに巨大労組の支援まで取りつけているのですから、これは強いですよ」

だが、支援団体が大きく、多くなるほど、政策は玉虫色になりがちだ。たとえば原発政策。脱原発志向を口にしているものの、原発推進の自民に加え、連合東京の意向に配慮している様子がアリアリなのだ。全国紙の都政担当記者が明かす。

「本来は民主支持である連合東京が自民と相乗りで舛添支援に踏み切ったのは、大野博会長が東電労組出身だから。原発ゼロを前面に打ち出す細川護熙元首相はやはり応援できないと、舛添支持に回った。そのせいか、舛添さんの公約もエネルギー政策は『原子力に依存しない社会をつくる』と、ごくごく穏便なものになっています。原発の再稼働問題についても言及はありません」

各支援団体に配慮した政策で都知事の椅子を狙う舛添氏。当の本人の思惑とは何か。前出の浅川氏が言う。

「2009年の衆院選で自民は敗北し、下野しました。舛添さんはその翌年、『自民党の使命は終わった』と離党して新党改革を立ち上げたものの、ぱっとしなかった。本人にすれば、今回の都知事選は復活の大チャンス。ここで自民党とヨリを戻し、知事を1期、2期務めた後、再び国政に復帰しようと計算しているはずです」

つまり、政策が同じだからスクラムを組んだというよりは、(1)勝馬に乗りたい自民、(2)原発ゼロ候補は支持できない連合東京、(3)そして復活のチャンスと受け止める舛添候補と、3者それぞれの思惑が一致した結果生まれた「にわか連合」にすぎないのだ。

一見、盤石に思える舛添陣営。だが「内実はそれほどでもない」と、前出の川村氏は指摘する。

「自民党都連は今でも一番苦しいときに党を見限った舛添さんをよく思っていない。勝てる候補を推薦するという党の方針があるから、仕方なく応援しているだけです。公明内部も学会の婦人部を中心に、原発政策や安全保障政策で安倍首相と近い舛添さんに違和感を抱いている。連合東京はさらに微妙で、舛添支援は原発再稼働を支持する電力総連や自動車総連などの一部だけ。多くの個別労組は自主投票となっており、最大労組のUAゼンセンに至っては細川支持を決めたほどです。連合東京の舛添支持は上っ面だけのものと考えるべきでしょう」

一致団結は当選するまで。実際に舛添氏が都知事になったとき、“取り巻き”同士の綱引きが表面化しなければいいが。

■週刊プレイボーイ7号「細川&小泉に群がる政治家たちが見る夢とは?」より