「市長を辞めて、出直し選挙をやります!」
2月3日の会見でこう発表した橋下徹大阪市長に、大阪市民はおろか、日本中がビックリ。
橋下氏の任期は来年12月まで。まだ2年近くも残っているのに、なぜそんなムダなことを?
「大阪都構想を話し合う法定協議会で、橋下氏が大阪市を分割してできる特別区の区割り4案を1案に絞り込むよう要求したところ、自民、民主、公明各党に『絞り込みは時期早尚。じっくり論議すべき』と拒否されたんです。
これに橋下氏が激怒。『これでは都構想の設計図、説明書がいつまでも作れない』と、出直し選挙をぶち上げました。再選されれば民意を得たとして、区割り案をひとつに絞り、今秋に予定される住民投票になだれ込む作戦なのでしょう」(全国紙大阪市政担当記者)
そして、なんと橋下氏は、必要とあらば今年中に2度目の出直し選挙をやるつもりだという。
「大阪市議会、府議会ともに大阪維新の会は過半数割れしています。一度目の出直し選で再選されても議会の勢力は変わらず、否決される可能性が高い。そのときは2度目の出直し選挙に打って出るというのが、橋下市長の考えなのです」(大阪市政担当記者)
一刻も早く都構想を実現させたい橋下氏としては、早急に区割り案を絞り込み、住民の理解と同意を求めたい。だから、のんびり話し合っている場合かと怒る気持ちはわからないでもない。
ただ、市長選には約6億円の費用がかかる。2度やれば12億円。議会や法定協議会での論議をせずに、いきなり選挙で白黒つけるなんて、さすがにちょっと乱暴すぎないか?
だが、前出の大阪市政担当記者によると、橋下市長にはそうした批判を受けても出直し選挙をやらざるを得ない事情があるという。
「来年春の統一地方選です。維新の市議会議員の大量落選が予想されているのです。地方議員、特に市議会議員の一番の仕事は市民の苦情処理。でも、維新の議員は新人が大半ということもあり、そうした仕事の重要性を理解できておらず、地元での評判がよくありません。
そのため、来春の統一地方選後、橋下市長は“政党ひとり”状態になりかねない状況なんです。そこで今のうちになんとか都構想を進めようと、強引に出直し選挙という無理筋の一手を仕掛けているのです」
当の大阪市民は、その出直し選挙をどう評価しているのか? 週プレは大阪市北区の天神橋筋(てんじんばしすじ)商店街で、おばちゃん50人に「橋下市長の辞任、出直し選挙を支持する?」と緊急アンケートを実施した。
すると、結果は「支持」23人、「不支持」22人、「わからない」5人―。
大阪のおばちゃんたちは筋金入りのドケチ。1回6億円もかかる選挙費用がムダだという辛口注文が多数を占めるかと思いきや、意外にも支持派が不支持派を上回っているではないか!
支持の理由を聞いてみた。
「潔いやないの。橋下さん、負けたら政界を去るんやてな。議員バッジにしがみついている政治家よりずっと立派と思うわ」(60代)
「確かに、強引。でも強引すぎるくらいやないと、新しいことはできん。そんなに大阪都をやりたいのやったら、一度やらしてみたらええんや」(50代)
捨て身の姿勢が功を奏したのか。どうやら橋下市長、おばちゃんたちの母性本能をくすぐることに成功したらしい。これはひょっとして、出直し市長選という橋下市長の賭けが吉と出るかも?
だが、前出の大阪市政担当記者はこう首を振る。
「実は、法定協議会は議決機関ではないので、委員の過半数の同意を必要としません。ですから、各党の反対を押し切り、橋下市長が区割り案をひとつに絞り込んでもまったく構わないのです。それを橋下市長がやらないのは独裁批判を恐れているから。つまり、出直し選挙は独裁者という批判をかわすために“市民に民意を問うた”という形をつくるためのポーズにすぎないのです。各党もそんな橋下市長の駆け引きはとっくにお見通し。
来年4月の統一地方選で維新が大敗すれば、橋下さんは何も決めきれない市長に成り下がる。それまで『都構想はじっくりと議論すべき』とのらりくらりと反論を続け、橋下・維新が無力となる来年4月のデッドラインを待ち続けるはずです」
ということは、2度再選されても、橋下氏はイバラの道を歩むしかないということか。
(取材/ボールルーム)