行政組織である東京都と、捜査機関である警視庁。本来は適切な距離をとるべき両者が、石原都知事時代に急速に接近した。その結果、都政はどう変わったのか?

ジャーナリストの青木理(おさむ)氏がこの問題に迫る。

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日本の警察は、形式上は「自治体警察」という組織体系をとっており、各都道府県の公安委員会の管理下に都道府県警が置かれている(ただし活動実態としては、警察庁という中央官庁をトップに各都道府県警が連なるピラミッド構造になっているが)。

その中でも別格の規模を誇るのが東京都の警察、つまり警視庁だ。予算権限を持つ東京都に食い込みたい――それが警視庁の長年の野望だったが、やはり行政組織に捜査機関が食い込むというのはいろいろと問題があり、なかなか「都庁対策」はできなかった。

しかし、2003年に当時の石原都知事が歌舞伎町浄化作戦、外国人犯罪撲滅など「治安対策」を公約の柱に掲げて2選を果たすと、状況は一変した。石原氏は史上初めて、警察官僚の竹花豊氏(当時は広島県警本部長)を副知事に迎え入れたのだ。

石原氏にとっては治安対策をアピールでき、警察にとっても副知事という権限の強いポストにエースを送り込める。ウィン-ウィンの人事だった。竹花氏は治安対策の司令塔として都庁に青少年・治安対策本部をつくり、自ら本部長のポストに座った。

従来、都庁では生活文化局が福祉的な視点で青少年対策(文化事業や困窮者支援など)を行なっていた。しかし、警察官僚が率いる青少年・治安対策本部のやり方は、それとはまったく違う。支援してなんとか更生させるというより、むしろどんどん取り締まる方針になった。悪名高きマンガやアニメの表現規制も、青少年・治安対策本部が中心となっている。

竹花氏の退任後も、青少年・治安対策本部の本部長ポストには警察官が座り続け、ほかにも課長級の職員として多くの警察官が送り込まれている。予算権限を持つ組織へ人員を送るというのは、天下りならぬ“天上り”だ。

こうして警視庁は都庁にポストと仕事領域を拡大し、都政と密接な関係を築いてきたのだ。

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