韓国ヒュンダイ自動車グループ(ヒュンダイ)の2013年の韓国国内販売シェアが、6年ぶりに70%台を割り込み68%となった。

68%でも相当に高い市場占有率なのだが、ヒュンダイは長年韓国のマーケットを支配してきた絶対王者。そしてサムスン電子と並ぶ、同国経済の大黒柱でもあるので、このニュースは韓国中に大きな衝撃を与えた。

シェア低下の原因は、輸入車の躍進にある。韓国は11年にEUとの、12年にアメリカとの自由貿易協定(FTA)が発効し、輸入車関税が大幅に下がった。しかも、経済成長によって国民の購買力が上がり、価値観も多様化してきたので、輸入車、なかでもBMWなどドイツメーカーの高級車に人気が集まったのだ。加えて日本のトヨタの健闘などもあり、韓国における輸入車のシェアは12%にまで拡大している。

その上、ヒュンダイは昨年、頼みの綱であるアメリカ市場でも伸び悩んだ。韓国工場でのストによる製品の供給不足、12年に発覚した燃費誇大表示によるブランドイメージの悪化、東日本大震災から復活した日本メーカーの攻勢などにより、販売台数こそ前年比増だったものの、シェアを4.6%に落としたのだ。

結局、ヒュンダイの売り上げが好調だったのは中国、南米といった利益率の低い市場ばかり。13年の同社は、業績としては増収にもかかわらず、減益となってしまった。

ほかにも、国内外での度重なるリコールなど、マイナス材料には事欠かない。ウォン安を追い風に世界第5位の販売台数を誇る大メーカーにまでのし上がったヒュンダイだが、ここへきて落日が忍び寄ってきているのだろうか? 自動車評論家の佐野弘宗氏が語る。

先進国のメーカーが生き延びるには?

「ヒュンダイが正念場を迎えているのは事実です。今年7月以降、EUから韓国に輸入される中・大型車は関税がゼロになるので、国内シェアはますますドイツ車に侵食されていくでしょう。そして、日本車の生産力が復活したので、アメリカ市場でのヒュンダイひとり勝ちはもう許されなくなりました。しかも、ヒュンダイはまだ国内生産分の輸出台数が多いので、現在のウォン高では従来のような利益率が確保できません。日本メーカーのように積極的に海外生産にシフトしなければ、ますます業績は悪化するでしょうね」

しかし、そんな状況をもって同社が落日を迎えていると見なすのは、早計なのだという。

「確かに成長が鈍化しているのは事実ですが、危機的状況にあるとまでは言えません。赤字に転落したわけではないし、アメリカでもシェアこそ落としたものの、過去最高の販売台数を記録しています。企業規模で見れば、ホンダの1.7倍ほどあるメーカーですからね。そう簡単にぐらついたりはしないでしょう」(佐野氏)

むしろ昨今のヒュンダイの状況から読み取るべき答えは、意外なところにあるようなのだ。自動車評論家の舘内端(たてうち・ただし)氏が指摘する。

「国内の高級車市場は海外勢に食われ、コストダウンに伴う開発の省力化によって、リコールが多発する。これ、今の日本車の構造とそっくりじゃないですか。ドイツ車が強いのも同じだし、最近、プリウスやフィットに大量リコールが発生したでしょう? コスト競争ばかりに注力していたのでは、より人件費が安い国の車に、いつか追いつかれてしまう。先進国のメーカーは、高価でも売れる高級車に軸足を移し、その利益で次世代の主流になる環境対応車を開発して将来に備えなければ、生き延びていけないんですよ」

それを認識できている日本メーカーが、果たしてどれだけあるのか……。