橋下徹氏はパネルと指し棒を使う“故たかじんスタイル”で都構想の効果を説明。聴衆にも好評だ 橋下徹氏はパネルと指し棒を使う“故たかじんスタイル”で都構想の効果を説明。聴衆にも好評だ

大阪都構想の賛否を問う出直し大阪市長選挙(3月9日告示、23日投開票)がスタートした。

とはいえ、大阪都構想をめぐり、橋下・維新と対立を深める自民、公明、民主などの主要政党は「出直し選挙に大義はない」と、候補擁立を見送ることに。

これではいくら橋下徹前市長(44歳)が力んでもひとり相撲。選挙は前代未聞のしらけムードになるはず。と思いきや、意外に盛り上がっているみたい!

まずは橋下前市長。某日、街頭演説会場となった市内のスーパー前に行くと、黒山の人だかりだ。

盛り上がりの要因は、パネル説明作戦。今回は対立候補にケンカを売って論戦を挑み、選挙そのものを劇場化するというお得意の技も使えない。

そこで橋下陣営が用意したのが、大阪都構想の区割り案やコスト削減額を記した巨大パネル。それを指し棒を使って、次々と聴衆に説明していく。

みっちり1時間半の説明が終わると、今度は質疑応答タイム。マイクを聴衆にまわし、細かな質問も受けつける。まるで出前授業のようなパフォーマンスが新鮮に映ったのか、聴衆の反応は上々。

「府と市の統合による行政コストの削減で、20年後の平成45年(2033年)には1375億円もの余剰金が出る」との橋下氏の説明には、こんな賛辞も。

「そんなにムダが省けて財政が潤うのなら、ぜひやってみてほしい」(60代女性)

「橋下さんが辞めたら、都構想はどうなるの? ずっと市長を続けてほしい」(70代女性)

その橋下氏の都構想に反対するほかの3人の候補の様子はどうか。

まずは無所属新人で元派遣社員の二野宮茂雄氏。37歳と若く、政治経歴としては兵庫県尼崎市の市議選に出馬したことが知られているくらいだ。その二野宮氏が話す。

「都構想見直し以外にやってみたいこと? 自転車の二重ロックの義務化と飲食店のチャージ料金の規制です。友人が飲み屋のチャージが高いと、よく愚痴をこぼしていましたから。安くしたい」

市長選盛り上げの功労者は、東京都知事選にも出馬したあの候補

続いては、無所属新人で政治団体「原発なくても電気はたりる」代表の藤島利久氏(51歳)。公約はエネルギー政策が中心だ。

「風力発電機や太陽光発電パネルを載せた大型タンカーを大阪湾に浮かべ、タンカー内にクリーンエネルギーによる野菜工場をつくり、タンカー下の海中を漁場につくり変えます」(藤島氏)

そして、最後はこの人。そう、大阪市長選盛り上げの最大の功労者、先の東京都知事選にも出馬した政治団体「スマイル党」総裁のマック赤坂氏(65歳)だ。

驚くことに、どこに行っても人垣ができるほどの聴衆を集めている。しかも、いつものコスプレ、ダンスもない! 普通の格好で「脱原発、代替エネルギー開発で地場産業活用」などの公約を熱く訴えている。どうしちゃったの?

「これまでの選挙は演説を始めると、聴衆がさっといなくなるのが常でした。それでコスプレやダンスで耳目(じもく)を集めていたわけです。でも、今回は様子が違う。私が話し始めると、逆に人が集まってくる。だから、まじめに公約を語っているのです。おかげで公示から3日目にはのどがかれてしまいました(笑)」(マック赤坂氏)

どうやら橋下氏以外に主要政党の候補がいないため、せめて知名度の高いマック赤坂氏の話を聞いてみようと考える有権者が多いようなのだ。梅田の地下街でマック赤坂氏の演説に耳を傾けていた60代男性が言う。

「タカ派の石原(慎太郎)さんとくっついたりして、橋下さんを嫌いになった。それで橋下さん以外の候補で、投票しても大丈夫な人はいないかと、こうしてマック赤坂さんの演説を聞いているんや」

こうした声に、マック赤坂氏も手応えを感じている。

「これまで出馬した11回の選挙のなかで、当選の確率が一番高いんじゃないか? 大阪ではマック(マクドナルド)は“マクド”と呼ばれている。当選したら、名前も大阪風にマック赤坂から“マクド大坂”に改名します」

果たして、大阪市長選に波乱は起きるのか?

(取材・撮影/ボールルーム)