4月1日、ついに消費税率が8%に引き上げられた。3月までの駆け込み需要から一転して消費の落ち込みが予想されるため、景気刺激策を盛り込んだ新しい成長戦略が、6月に政府から発表される予定だ。

なぜ6月なのか? 経済産業省の現役キャリア官僚T氏が裏事情を明かす。

「消費税は来年10月、8%から10%へと上げる予定ですが、増税を実行するか否かの判断は今年中に景気動向を分析した上で下します。つまり経済指標が悪ければ増税判断はできないのですが、苦しい財政状態にある政府は絶対に増税したいのが本音です。

そこで安倍政権はいろいろな景気対策を盛り込んだ成長戦略をブチ上げ、無理やりにでもGDP成長率をプラスにもっていきたい。しかし4月1日に消費税が8%となりますから、増税直後は消費が冷え込んでマイナス成長になるのは確実。このタイミングに景気対策を打つのはあまりに効率が悪すぎます。

経済指標の調査は年に4回、3ヵ月ごとに行なわれます。増税直後の4-6月期はスルーして、7-9月期に景気を浮揚させるような経済対策を打ちたいから6月に成長戦略を発表するのです。7-9月期の経済指標を調査した結果は11月に発表されますから、来年の消費税率アップは今年12月に判断されるでしょう」

消費増税の口実を作るための景気対策ということか。その成長戦略の中身はどんなものになりそうなのか?

円安でも輸出産業が儲からない理由

「はっきり申し上げまして、中長期的な経済効果を期待できるような政策はないと思います。あくまで消費税率アップを判断するタイミングだけ、瞬間風速的に経済成長率を上げるのが主目的です。そのために公共投資も盛り込まれるでしょう。

前回の成長戦略の目玉は大幅な金融緩和でした。円安に誘導し、外国人投資家にとって割安感が出た日本株が買われ、株価が上がりました。数値上は景気が良くなったかのようなデータが出たので消費税を引き上げられましたが、それも一時的なものでした。

外国人投資家が日本株を買いまくって株価が上がり、それにつられて日本人投資家も株を買ってさらに株価が上昇したら、外国人投資家たちは利益を確定させるために売りまくった。株価の乱高下が激しかったのは、そんなやりとりが何度も繰り返されたためです。つまりアベノミクスで得をしたのは外国人投資家と、日本の金融機関と、増税を勝ち取った財務省なのです」(T氏)

だが、円安によって輸出産業も潤ったのでは?

「輸出産業といっても、現代の産業構造は昔と違います。今は製品の原材料をほとんど外国から輸入しているのです。ですから円高だったときに仕入れた原材料で作られた製品を売ったときは儲かったでしょう。でもそれは最初だけ。円安になってから仕入れた原材料で作った製品を売っても利幅は変わらないのです」(T氏)

GDPなどの数値上は経済成長を実現しているのに、実感として景気上昇を実感できないカラクリがわかった気がする。

(取材/菅沼 慶)