『キリン 氷結 ストロング』『サントリーチューハイ -196℃ストロングゼロ』など、“ストロング”をウリにした高アルコールのRTDがヒット中だ。
「RTD」とは飲料業界用語で「Ready To Drink」の略。つまり、缶を開けてすぐに飲めるという意味で、ビール類を除いたアルコール分10%未満のチューハイやハイボール、カクテルなどのお酒を指す。
ここ数年、ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)の国内需要は縮小傾向にある一方で、このRTDは右肩上がりに売り上げを伸ばしている。
サントリーの調査をもとにした「RTD市場の推移」(250ml換算・家庭用容量ベース)によると、2009年に出荷数2370万ケースだったRTD市場は、2013年には6580万ケースと3倍近くに急増。その成長を支えているのが、アルコール度数8%以上のRTDだ。
2009年に1460万ケースだった高アルコールRTDは、2013年には3470万ケースと2倍以上に成長。一方で、アルコール度数3%未満の低アルコールRTDは、2012年をピークに減少している。今年は、高アルRTDが3690万ケース、低アルRTDが2320万ケースと、さらにその差は広がる見込みとなっている。
では、なぜ高アルRTDがアルコール飲料市場のトレンドになっているのか? 酒類専門紙『酒販ニュース』の政所(まんどころ)明編集部長に話を聞いた。
「RTD市場の中でも“ストロング系”と呼ばれるアルコール分8%から9%前後の高アルRTDが、08年のリーマン・ショックを契機とする景気低迷とともに“より安く酔えるお酒”として市場に出始め、シェアを拡大しています。最近では甘くないドライな高RTD商品が人気で、食事との相性のよさがウケているようです」
ヒットの背景には、「一缶で安く、早く酔いたい!」という消費者の増加があるということ。そして、甘くて飲みやすい低アルRTDとは対照的に、和食・洋食問わず、どんな食事にも合う点も愛飲者を拡大させている。
「それに、昨今の健康志向と相まった“糖類・糖質ゼロ、プリン体ゼロ”といった特徴は特に30代から50代の男性に支持されやすい。高アルコールかつ辛口の缶チューハイを扱う各社にとって、今回の税率アップはむしろ、追い風となるかもしれませんね」(政所氏)
従来からさらにアルコール度数を1%アップさせた新バージョンも登場するなど、メーカーも力を入れている高アルRTD市場。消費増税3%アップ分、より安く酔いたい消費者を中心に、まだまだヒットは続きそうだ。
■週刊プレイボーイ15号「“高アル”缶チューハイで増税分だけ早く酔え!!」より