今月下旬、オバマ大統領が来日する。米軍基地、TPP、アジア周辺国との緊張緩和など、現在、日米間は多くの問題を抱えており、安倍首相にとってはこの首脳会談が大きな正念場になりそうだ。

それだけではない。消費増税を含む経済政策、集団的自衛権、原発再稼働など、国内に目を向けても安倍政権には解決しなければならない問題が山積みになっている。

当然、党の協力が不可欠なのだが、官邸と党の関係はかなりギクシャクしているようだ。自民党の某有力議員があきらめ顔でボヤく。

「安倍さんは昨年末以降、言葉は悪いけど調子に乗っている。きっかけは靖国参拝だよ。中国や韓国のみならずアメリカからも批判され、永田町内でも評判が悪かったのに、その後に行なわれた世論調査では支持率が上昇したからね。これで安倍さんは、自信というレベルを通り越して万能感ともいえる感覚を得てしまったのではないかと思うんです。

実際、靖国参拝以降、安倍さんは内閣だけで物事を進め、党に相談しなくなりました。完全に暴走モードですよ。当然、党内では不満がたまってきています」

こうした党内の不満を解消するために行なわれる常套(じょうとう)手段といえば内閣改造だ。前出の自民党議員が続ける。

「やはり政治家は大臣になりたいものです。どんなに不満が渦巻いていても、閣僚ポストをチラつかされると思わず黙ってしまう。今回の場合、通常国会が終わる6月下旬か7月上旬に改造が行なわれると思います。

改造人事を決めるのは総理の専権事項ですが、総理が判断する材料として、“党内融和を図るためにはこんな人事案が理想ですよ”っていう叩き台のような素案が党から総理に提示されることが多い」

そういって見せてくれたのが、今回の改造人事案だ。

<自民党内人事> ■総裁 安倍晋三 ■副総裁 谷垣禎一(谷垣グループ) ■幹事長 菅義偉(無派閥) ■幹事長代行 鳩山邦夫(無派閥) ■幹事長代理 浜田靖一(無派閥)、山本一太(無派閥)

内閣改造人事案の一覧

<内閣改造> ■内閣総理大臣 安倍晋三 ■財務大臣 石破茂(無派閥) ■総務大臣、内閣府特命担当大臣(国家戦略特別区域担当、地方分権改革担当) 大島理森(大島派) ■法務大臣 小渕優子(額賀派) ■外務大臣 逢澤一郎(谷垣グループ) ■文部科学大臣 橋本聖子(町村派) ■厚生労働大臣 関口昌一(額賀派) ■農林水産大臣 林幹雄(二階派) ■経済産業大臣、内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償支援機構担当) 野田聖子(無派閥 ■国土交通大臣 西川公也(二階派) ■環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力防災担当) 棚橋泰文(谷垣グループ) ■防衛大臣 麻生太郎(麻生派) ■内閣官房長官 下村博文(町村派) ■復興大臣 太田昭宏(公明党) ■国家公安委員会委員長、内閣府特命担当大臣(沖縄および北方対策担当、防災担当) 石原伸晃(石原派) ■内閣府特命担当大臣(科学技術政策担当、宇宙政策担当) 小池百合子(額賀派) ■内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当、少子化対策担当、男女共同参画担当) 竹下亘(額賀派) ■内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当) 山本幸三(岸田派) ■内閣府特命担当大臣(金融担当、規制改革担当) 甘利明(無派閥)

「もちろん素案どおりに人事をやる総理もいれば、小泉さんのように誰の意見も一切聞かないという変人もいます。今回の場合はどうかというと、自信過剰で暴走モードにある安倍さんは、党からのリクエストに耳を貸さない可能性が高いと思っています。

党側が考える人事案は、多くの人に大臣ポストを配分して不満を抑えたいという気持ちが働くので大規模改造になりがちですが、安倍さんはおそらく小規模にとどめるんじゃないかな。

それが直ちに不満爆発となるわけではありませんが、党内に火種がくすぶった状態で政権を運営することになる。来年の自民党総裁選に安倍さん以外の立候補者を擁立しようする動きが水面下でうごめくと思いますよ」(前出・自民党議員)

国民からの支持率が安定している安倍政権の寿命は長くなるだろうというのが世間一般の見方。しかし党内の調整を怠れば、自民党の総裁選で負ける可能性もある。はたして来(きた)るべき内閣改造で、この党の声はどれだけ反映されているか。

(取材/菅沼 慶)