17年ぶりに実施された消費増税の増収分は、少子高齢化で膨張の一途をたどる社会保障費対策に充(あ)てられることになっている。

だが、それはあくまでも“表向きの理由”だと衝撃的な発言をするのは、自民党の元大物国会議員、M氏だ。

「増税直後は消費が冷え込むし、安倍内閣は来年の再増税も絶対にやるはずだから、今後3年間くらいは5兆~6兆円程度の増収にとどまるんじゃないのかな。

その5兆~6兆円だって、社会保障費に充てるなんて言っているけど、当面はまったく違う用途で消えてなくなる運命だよ。具体的な使い道は後で説明するけど、税収はいったん国庫に入るんだから、お札に名前が書いてあるワケでもないし、あとはウヤムヤさ。

安倍さんは来年の再増税を今年12月に判断する。判断材料は今年の7-9月期の経済指標になるけど、その数値も強引に“数字合わせ”をする構えだよ」

つまり、消費税を10%に引き上げるのは、すでに規定路線だということ。その手口は?

「3月20日に成立したばかりの今年度予算について、財務省は各省庁に対し異例の指示を出したんだ。通常、各省庁に配分された予算はそれぞれの判断で自由に使える。しかし今回は予算執行のスケジュールを財務省が指定したんだ。

そのスケジュールとは、まずは増税直後で消費の冷え込みが確実視される4-6月期に、年間予算の40%を使い切れというもの。1年分の半分近くをたった3ヵ月で使うなんて大変なことだよ。これは増税によって景気が後退したと思われるような数値を絶対に出さないための力業だね。

さらに7-9月期までに(4-6月期分と合わせて)60%を使い切りなさいとの指示も出ている。絶対に予定どおり再増税を行なうという強い意思表示さ。でも、それを邪魔する勢力も存在する。そいつらを黙らすためのお金として、増税分の5兆~6兆円は消えてなくなるんだよ」(M氏)

秋の臨時国会で大型の補正予算が組まれるとM氏は予想する

それが前述の「違う用途で消えてなくなる」ということらしい。M氏の解説は続く。

「この前の春闘で、大企業が軒並み賃金のベースアップを発表しただろ? あれは、景気が回復したんだとの印象を世間に与えたい安倍さんが、大企業団体に拝み倒して実現したんだ。その交換条件として暗黙の了解となっているのが、来年度からの法人税減税さ。

しかし財政再建を重視する財務省は減税をイヤがるから、政治と密接な付き合いをしている業界を中心に税率が特別に優遇されている『租税特別措置法』を廃止して埋め合わせようと考えている。

でも、政治献金や選挙協力などをして勝ち取った既得権益者たちが素直に特権の剥奪(はくだつ)を受け入れるはずがない。彼らからの支えで当選を重ねている族議員たちは、自民党内から必死に安倍さんに抵抗するだろうね。再増税の判断に反対したり、安倍さんが最もやりたい政策である集団的自衛権の憲法解釈変更や憲法改正への協力をチラつかせたりしてね。

そいつらを黙らせるため、安倍さんは今年秋の臨時国会で大型の補正予算を組むはずさ。その内容は、今まで優遇されていた連中をさらに喜ばせるためのもの。国民のためとは程遠いよ。そして補正予算の規模は昨年と同じかそれ以上になると思う。昨年は5.5兆円だったよ。意味わかるよな?」

つまり、今回の増税で見込まれる増収分は、次の増税判断をクリアするための工作費ともいえる使い道で今年のうちに消えてなくなる、というのがM氏の予想。はたしてこの言葉通りになるのか? その答えは秋に明らかになる。

(取材/菅沼 慶)