脱原発を掲げ、今年2月の東京都知事選挙に出馬した細川護熙(もりひろ)氏と小泉純一郎氏の元首相コンビが、また動き始めた。

今度は一般社団法人「自然エネルギー推進会議」という組織をつくり、国民を巻き込んだ脱原発の大きな流れをつくり出そうとしているのだ(5月7日に設立総会を開催予定)。

この自然エネ会議には、梅原猛(哲学者)、瀬戸内寂聴(作家)、菅原文太(元・俳優)、吉永小百合(俳優)、ドナルド・キーン(日本文学者)、市川猿之助(歌舞伎俳優)ら、そうそうたる著名人が発起人や賛同人に名を連ねている。

また、来年春に行なわれる統一地方選挙で、脱原発を掲げる候補者を支援する可能性が強いことなどから、安倍政権に対抗する大きな勢力になるともいわれている。

この自然エネ会議、今後どのような動きをするのか。

ジャーナリストの須田慎一郎氏に聞いた。

「小泉純一郎さんは、首相退任後、『国際公共政策研究センター』というシンンクタンクを拠点にして活動をしていました。ここはトヨタやキヤノン、東京電力といった経団連(日本経済団体連合会)の中心企業が約18億円を出資して小泉さんのためにつくった組織です。

そして昨年8月、このシンクタンクが中心となって、小泉さんのドイツ・フィンランド原発施設視察が行なわれました。これは小泉さんに原発再稼働について理解を深めてもらうためでした。

しかし、この視察で逆に脱原発のほうに動いてしまったんです。そのため、今年に入ってシンクタンクの資金がなくなってしまったときに、経団連などの企業がお金を出しませんでした。そこで、小泉さんは活動資金がなくなってしまったんです。

そんなときに出会ったのが、楽天の三木谷浩史氏を中心とする新経連(新経済連盟)のメンバーでした。経団連に対抗するため政治力をつけたい三木谷さんらと、国際公共政策研究センターに頼っていたのでは活動を続けられない小泉さんの思惑が一致してできたのが、今回の自然エネ会議なんです。経済界の新旧対決から生まれたニュースですね」

小泉・細川という金看板で新党ができる?

ということは、政治的に大きな動きになることは、期待できないということ?

「自然エネ会議はあくまで一般社団法人であって、政治資金団体ではないですからね。小泉さんのお金の問題でできた団体なので、小泉さんと細川さんの個人的な活動が中心になっていくと思います。 それに、小泉さんは自分から進んで仲間をつくろうというタイプではありませんから……。

ただ、リアルな政治の現場では、今、日本維新の会と結いの党が歩み寄っていますよね。来年の春に行なわれる統一地方選に向けて、新しい政治勢力を集結しようとしています。

また、今の安倍さんの政治手法や方向性に対して、野党だけでなく自民党の中にも違和感を覚えている人はたくさんいるはず。そうした人たちの受け皿になる可能性はあります」

新党ができるかもしれない?

「小泉・細川という金看板があれば、国民の支持を多く集められると考える人たちが出てくれば、ですね。小泉さんも、細川さんも、今は政治家ではないので、自分たちが先頭に立って、新党を立ち上げようということにはならないと思いますよ」

小泉・細川の元首相コンビが、ここで一気に脱原発のムーブメントを起こし、都知事選のリベンジをするのかと思いきや、その内情は、なんだか煮え切らない感じ。

小泉劇場第2弾「脱原発編」は、都知事選に続き、自然エネ会議も尻すぼみになってしまうのだろうか?

(取材・文/村上隆保)