6月24日、「日本一若い市長」が収賄容疑で逮捕された。

昨年6月、当時は岐阜県美濃加茂市の市議会議員だった藤井浩人氏は、同市の市長選挙に立候補し、28歳の若さで当選。一躍、話題の人となった。その彼に何があったのか。

24日早朝、市役所に登庁した市長は、愛知県警と岐阜県警の合同捜査本部に任意同行を求められ、その日のうちに受託収賄、事前収賄などの容疑で逮捕された。

今回の逮捕容疑は、藤井市長が市議会議員時代に、市のプールの水の浄化装置導入をめぐり、便宜を図る見返りに業者から現金30万円を受け取ったとされる収賄だ。なお、浄化装置は正式に採用されてはいないが、試験運用として同市の中学校のプールに設置されている。

すでに今年2月に別件の詐欺容疑で逮捕された贈賄側の設備会社「水源」社長の中林正善容疑者は、現金の授受について「名古屋市で2回にわたって藤井市長と会食し、その際に、それぞれ10万円と20万円を渡した」と供述。

さらに、現金を渡したとされる日に、中林容疑者の銀行口座から、渡した額と同額の現金が引き出されていることが明らかになり、警察はこれを決め手に藤井市長の逮捕に踏み切ったとみられる。

一方、藤井市長は「収賄なんて事実無根」と自身のフェイスブックに書き込み、その後も弁護士を通じて身の潔白を訴え続けている。

同市の市議で、市長と同期当選したある議員は、こうコメントする。

「彼は本当にまじめで行動力のある青年ですよ。彼が現金などもらうはずはない。今は警察の調べを待つのみです」

冤罪なら警察は大ピンチ

そして、藤井市長の担当弁護士である郷原信郎(ごうはらのぶお)弁護士は、「政治家としては脇が甘い」との市長への批判について、「問題の業者との会食は市議時代。しかも、業者が詐欺で逮捕される1年も前のこと。現金の授受がなければ、なんの問題もありません」と述べた上で、今回の逮捕は警察の“勇み足”だったのではないかと指摘する。

「中林容疑者の贈賄供述を得た警察は、藤井市長と会食に同席していた人物を呼んで叩(たた)けば、『現金の受け渡しを見た』と供述するという、割合に甘い見通しで市長聴取に踏み切ったのではないか。ところが、同席者は『見ていない』と言い続けた。『全国最年少市長聴取』と報じられ、『容疑が固まり次第、逮捕』とまで報じたメディアもあるのに、何もなかったでは警察の大変な責任問題になる。それで無理な逮捕に至ったのでしょう。藤井市長への取り調べは怒声罵声を浴びせる前時代的なものだったそうです」

逮捕当日の新聞報道では、中林容疑者は、「資料に現金入りの封筒を交ぜて渡した」との供述をしたとされていた。

「同席者が現金の授受を見ていないと言い続けるから、現金を隠す方法として資料の中に隠したという話が出てきたのではないか。しかし、それでは市長が現金を認識して受け取ったと言えないので、その後、同席者が席を立ったときに藤井氏に渡したという話に変わっています。しかし、同席者は『席など外していない』と言っているようですから、この筋も行き詰まっている」(郷原弁護士)

だとすると、警察は大ピンチか?

「藤井市長は逮捕前日、自宅周辺に押し寄せた多くのマスコミの違法駐車について、近所に迷惑だからとわざわざ加茂警察署にまで行って、署長に違法駐車を取り締まってくれと直談判(じかだんぱん)しています。後ろめたいことのある人間にはとてもできない行動です。私は潔白を確信しています」(郷原弁護士)

これが本当に冤罪(えんざい)ということになれば、警察は大手柄から一転して、大やけどを負うことになる。事件の推移を見守りたい。

(取材・文/頓所直人)