全国最年少市長として話題になった藤井浩人(ひろと)・美濃加茂(みのかも)市長(30歳)が、市議会議員時代に浄水装置の導入をめぐって計30万円の賄賂(わいろ)を受け取ったとして逮捕・起訴された事件の初公判が明日、9月17日に名古屋地裁で開かれる。

業者側(設備販売会社社長の中林正善[なかばやし・まさよし]氏)は贈賄(ぞうわい)を認めたが、藤井市長は一貫して疑惑を否定している。

それにしても、変な事件だ。その最たるものは、藤井市長に中林氏を引き合わせ、金の授受があったとされる会食の場面に2度とも立ち会っていた政策コンサルタントの男性が、「金の受け渡しは見ていない」と明言していること。

しかし、実際に金銭の授受がないのに、業者側が贈賄を“自白する”理由はあるのか? 藤井市長の主任弁護人、郷原信郎(ごうはら・のぶお)弁護士は、「捜査機関と中林氏の間で“ヤミ司法取引”があったのではないか」と疑う。

中林氏は今年2月、岐阜県内の別の自治体との契約書を偽造し、「浄水器が学校に設置されることになった。運転資金を貸してほしい」として、1000万円の銀行融資をだまし取った容疑で逮捕・起訴された。

これまでに10の金融機関から合計4億3500万円の融資を受けていたことが判明しており、警察はすべて同様の融資詐欺とみていたはずだが、追起訴されたのはわずか1件、1100万円のみ。

元検事の郷原弁護士は、「これだけ悪質な融資詐欺は通常、すべて立件する」と指摘する。ところが本件では、融資詐欺の大半を不問にすることの見返りに、藤井市長に対する(本当は存在しない)贈賄供述が引き出されたのではないか、との見立てだ。

郷原弁護士は、美濃加茂市の小中学校に浄水装置設置が決まったかのように装い、4000万円の融資を受けた件で中林氏を告発。こちらも、今後の展開が注目される。

本日発売の「週刊プレイボーイ」39号では、公判でも一貫して無罪を主張するという藤井市長が直前インタビューに応じ、ジャーナリストの江川紹子氏に「『早く自白しないと美濃加茂市を焼け野原にする』とまで刑事に言われた」ことを告白。今回の奇異な問題を読み解くため、こちらも一読をおすすめする。