大臣がうちわやワインで相次ぎ辞任したが、似たような事例は政治の世界には尽きない。公職選挙法や政治資金規正法が厳しくなるにつれ、少しずつ接待や買収工作も“地味化”しているというが、依然として盛んに行なわれているのだ。
まず証言してくれたのは、大臣経験者の秘書を務めた経験を持ち、東京都議や東京都東村山市議も歴任した政治評論家、野田数(かずさ)氏(41歳)。多くの政治家が日常的に行なっている接待や買収に当たる事例を教えてもらおう。
「まずは結婚式とお葬式ですよね。選挙区内の赤の他人の葬式に参列し、式場で名刺を配りまくる非常識な議員も少なくありません。しかも、ご祝儀や香典に関しては上限金額が法律で定められていませんから、同じ選挙区で戦う政治家同士が互いに意識し合って金額がエスカレートしてしまうのです」
確かに地味だけど、事実上の買収行為ともいえる。
「事実上ではなく明らかに買収行為に当たるのが、地元のお祭りやスポーツ大会のほか各種行事に『御樽代(おたるだい)』とか『会費』という名目で5000円から1万円くらい持参する行為です。これはもう全国的にほとんどの政治家がやっているのが現状だと思いますが、警察も公職選挙法をよくわかっていないのか、逮捕者は非常にまれです」
共産党でさえ…と有権者も嫌味?
さらに野田氏が具体例を明かす。
「私が議員時代に地元の行事に顔を出したときのエピソードです。責任者にあいさつをする際、法律で禁じられているのでお祝いの名目であれ政治家が有権者に金品は渡せない旨を伝えたら、共産党でさえ持ってきたのに自民党が手ぶらとはねえとイヤミを言われたこともあります。実際に共産党の議員が金品を持参したかどうかは別として、それだけ当たり前の習慣になっているということです。
しかも、アイツは手ぶらで来やがったというような噂がアッという間に広まるので、そのリスクを考えたら1万円くらいの会費は安いものだと考える政治家が多くなるわけです。政治家にとって、完璧に法律を守って活動を行なうことは勇気がいることなんです」(野田氏)
また、某ベテラン自民党関係者のS氏が日常的に横行する接待行為の実態を語ってくれた。
「支援者やその関係者たちを居酒屋などで飲み食いさせる行為も普通に行なわれていますね。割り勘じゃないと違法ですが、現実には割り勘なんてほぼないと思います。あとはコンサートやスポーツイベントのチケットを配ったり、お中元やお歳暮もバンバン送っていますね」
どこの世界でもある話と言えばそれまでだが…。買収行為を行なう政治家も悪いが、金額は大したことがないとはいえ、金品を受け取ることを当然だと考えている有権者にも問題があるのは間違いない。
(取材/菅沼 慶)