大臣がうちわやワインで相次ぎ辞任したが、似たような事例は政治の世界には尽きない。公職選挙法や政治資金規正法が厳しくなるにつれ、少しずつ接待や買収工作も“地味化”しているというが、依然として盛んに行なわれているのだ。

政治家の買収工作といえば、票集めのために選挙区の有権者に行なうものだと思われている。しかし、接待されるのは一般の支援者ばかりではない。地方議員も接待を受ける側なのだ。

第1次安倍内閣時に農林水産大臣だった松岡利勝(としかつ)氏(故人)の政策秘書を務めていた池田和隆(かずたか)氏(47歳)が解説する。

「国会議員にとって、自分の選挙区首長と地方議員からの選挙協力は不可欠です。彼らが独自に持つ支持者たちの票は是が非でも欲しいからです。

中選挙区制の時代には、同じ選挙区から自民党の候補者が3人くらい立候補していたので、党内で首長と地方議員を取り合う争いが起きていました。

例えば、地元の地方議会が団体で東京に視察旅行に来る情報をキャッチしたとします。そうすると、彼らを東京で接待して恩を売るために秘書たちは必死になって作戦を練ります。旅程を調べ上げ、羽田空港や東京駅などで待ち伏せして、お待ちしておりましたと声をかけ、強引に接待会場へと誘導するのです」

その際、地方議員たちもしたたかなもので、同じ道府県選出のほかの国会議員にもいい顔をする傾向にあるという。だから地方議員団御一行さまが途中でフェードアウトできないよう、接待する側の秘書たちは全員分の荷物を持って逃げられないようにするらしい。

「ひとりで5、6人分の荷物を持つハメになり、非常にキツイ肉体労働ですよ……。しかも視察旅行をする地方議員たちは、彼らの後援者たちに大量のお土産を買うので、やたらと紙袋を持っているんです。夏場はクラクラしますよ(苦笑)。小選挙区制になった今では奪い合いはありませんが、彼らの選挙協力は不可欠なので接待はなくなりません。

接待会場のお座敷では秘書たちが全員にお酌して回るので、畳でヒザがこすれるんです。若手の頃は安月給なのに2ヵ月くらいでスーツがダメになり、非常にキツかったのを覚えています」(池田氏)

まさに、当選するためならなんでもやるといったところか。

(取材/菅沼 慶)