選挙には莫大なお金がかかる。その事実の前では、「こんな政治、オレが変えてやる!」なんて心意気も、たちまち消沈してしまう……。しかし、諦めるのはまだ早い。

政党によっては公認候補の供託金(衆院選の場合、小選挙区で300万円、比例区との重複立候補なら追加で300万円、そして比例単独で出馬する場合は600万円)や選挙費用を全額負担してくれるケースもある。

「そもそも被選挙権は国民の権利なのに、日本は供託金が高すぎます。イギリスは9万円、カナダは7万円、オーストラリアは5万円程度。フランス、ドイツ、イタリア、アメリカに至っては、供託金はありません」

そう憤るのは日本共産党中央委員会広報部長の植木俊雄氏。

「わが党の場合、他党と違って候補者個人が選挙費用を負担することはありません。選挙に必要な資金は供託金も含め、すべて支持者からの寄付や募金で賄います。ただし共産党の公認候補は、党員としての活動を評価された人が各都道府県委員会の推薦を受け、その上で党中央委員会が決定しています」

つまり、縁もゆかりもない人がいきなり共産党の公認を得ることは不可能。そして党員になるためには共産党の綱領実現のために活動することが前提だ。

とはいえ、共産党以外から本当に「裸一貫」で立候補する道がないわけではない。自民党の元大臣の政策秘書を務めた池田和隆氏は、政党の「候補者公募」に応募する方法について語る。

「まずは各政党が公募をしているかどうかをチェックします。衆院選の場合、自分の住民票がないところでも立候補可能です。自民党の場合、まずは各都道府県連の事務方が書類選考後、県議、国会議員などに打診。面接を含めて5段階ぐらいの選考過程で、最終的に決定を下すのは県連トップです。民主党の場合は公募後に予備選挙で決める場合もある。公募方法は政党によって違うし、公募合格者のキャラも違います」

例えば、政党ごとにどんな違いがあるのか?

立候補できるまでの道のりとは?

「自民党はやぼったくても馬力のある人、民主党は小ぎれいな人が好まれる傾向があります。官僚のタイプでたとえると、自民党は国交省や農水省の役人や地方事務所にいた人、民主党は経産省や外務省にいたような人ですね。

維新は市議や府議が選考するのですが、彼ら自身がキャリア不足なので、あまり賢い人や有望な人、経験豊富な人は書類でハネられるという噂も(笑)。本人に知名度がなくても、親族に有力な政治家や団体の役職者、著名人がいればアピールポイントになります」(池田氏)

なお、次世代の党のように公募は行なわず、所属議員や支部長の推薦を条件にする党もある。

「なんらかの形で党関係者と連携しながら信頼関係を構築することがなければ、公認や推薦はありません」(次世代の党事務局)

つまり、コネも重要。ただし、前出の池田氏はこうも言うのだ。

「今回の選挙は急ですから、候補者がそろっていない政党も多い。公示日が迫っていても、自分に合いそうな政党に熱い心をぶつけてみることです。そうすれば『出馬してみないか!』となる可能性はあります」

こうして晴れて政党の公認が得られれば、立候補に向けて大きく前進したことになる。

「公募に合格すると、党によっては『公認料』が出る場合があります。例えば自民党の場合は約500万円。小選挙区、重複比例に必要な600万円の供託金も党が負担します」(池田氏)

さらに、元東京都議の野田数(かずさ)氏によると、資金力のある党であれば、「供託金も含めて公認候補1人当たり1000万円から1500万円程度の支援はしてくれるでしょうね」とのこと。

なお、日本維新の会は前回総選挙の際、公認候補でも供託金は候補者自身が用意した。公認料も出なかった。つまり、公認で得られた主なものが「政党の看板」だけだった。しかし、それでも無所属よりは有権者に自分の立場や主張が伝わりやすいという利点もあるのだ。

公認が得られたとして、支持を拡大するには…

それでは無事に公認が得られたとして、実際に支持を拡大するためには何をすべきなのか? 前出の菅原議員がそのヒントを教えてくれた。

「私は今でも毎朝駅頭で演説をしています。もう25年目。駅に立つと人の表情や反応、ビラのはけ具合でマーケティングもできる。有権者から友人、知人を紹介してもらい、支援をお願いする地道な活動もしています」

街頭演説に懐疑的な人もいるかもしれないが、バカにはできない。菅原議員が言う。

「あるとき、見知らぬ50代の女性から声をかけられました。『うちの息子は全盲で、毎日白い杖をついて駅までひとりで通っています。彼にとっては毎日が危険との戦い。その彼がいつも“今日も菅原さんがいた”と話している。あなたの演説は息子にとって駅までの道標(みちしるべ)です』と。感動とともに、これはやめられないな、と思いました」

有権者はちゃんと見ている。そんな出会いもある選挙戦。あなたも立候補してみませんか?