今回の選挙は楽勝との予想もある公明党の太田氏

選挙戦が始まってもなお、有権者の関心は低いまま。これなら、投票に行かなくてもしょうがない……。本当にそうだろうか?

選挙全体としては、確かに争点も、大義もないかもしれない。しかし、各選挙区に注目して見ていくと、関心の薄い有権者でもわかるほど激しいバトルが繰り広げられている“ビジュアル系”選挙区は少なくない。そんななかでも特に注目されるのが、東京12区だ。

北区・足立区の一部をエリアとする同選挙区は、自公連立政権にとって最重要。公明党元代表の太田昭宏候補が大本命とされるところに、都知事選で61万票(得票率約12%)を獲得した次世代の田母神俊雄候補(次世代)が急遽出馬を決めたからだ。

田母神氏は赤羽駅前での第一声で「私は本当にいい人なんです!」とアピールするが、演説内容は物騒そのものだ。

「公明党をぶっ潰つぶす!」「(中国や韓国に)海上保安庁が何もできないのは太田国交相だから」「公明党は景気が回復しないほうがいいんです」

対する太田氏は同じ赤羽駅前で演説を行なったが、聴衆の数と盛り上がり方で田母神氏を圧倒する。太田氏が何かを訴えるたびに、数百人に上る強力な支持者たちから割れんばかりの拍手が巻き起こり、演説を聴いて涙ぐむご婦人までいた。独特な熱気である。

この両者と争うのが、共産党の池内沙織候補と生活の青木愛候補というふたりの女性候補だ。しかし、その熱気は対照的。

特に青木氏に至っては、板橋駅前で演説を聴く人はわずか数名。たまに携帯で写真を撮る若者が現れるも、演説が終わる前に立ち去ってしまう。その後、駅前の立ち飲み屋にまで入って、酔い客にも支持を訴える姿には悲壮感すら漂っていた……。

田母神候補は独特なキャラクターで若い支持者が多い

沖縄4区では因縁の対決が

注目選挙区は東京ばかりではない。先日の知事選挙で基地移転に「NO!」を突きつけた沖縄の動向も選挙後の政治を大きく左右する。

まずは怒れる師匠が弟子を叩くべく立ち上がった!?“因縁対決”となっている沖縄4区(糸満市・石垣市など)。自民党所属で副総務相の西銘恒三郎(にしめこうざぶろう)候補と、無所属で元県議長の仲里利信氏が争う。

2009年の総選挙で落選した西銘候補は、かつて仲里候補に頼み込んで後援会長になってもらった経緯がある。しかし西銘氏は、2年前の総選挙で米軍基地の県外移設を訴えて当選したのに、その公約を破棄してしまった。

激怒した仲里氏は後援会長を辞め、その後の名護市長選で「新基地を造らせない」公約を掲げた稲嶺市長を応援し、先日の沖縄県知事選では「普天間基地の辺野古移設NO」と訴えた翁長知事についた。まさに、今回は注目の直接対決なのだ。

さらに、那覇市・島尻郡などの1区、基地の行方を大きく左右する“土建屋対決”と反基地連合で大混乱、注目を集める。

自民は沖縄最大のゼネコン「國場組」の御曹司・國場(こくば)幸之助候補を、維新は県内2位のゼネコン「大米(だいよね)建設」の御曹司・下地(しもじ)幹郎候補を擁立した。

そこに共産の赤嶺政賢(あかみねせいけん)候補も加わる。自民の基地政策に反対して自民沖縄県連から除名された那覇市議たちは、那覇市議会で最大の勢力を誇り、赤嶺氏を支持。さらに翁長県知事も、城間那覇市長も赤嶺支持なのだ。

つまり、共産党を中心とした基地反対派と、県内のゼネコンの支持を集める候補の対決。誰が勝ってもおかしくない、目が離せないスーパー激戦区だ!

今回の解散は大義や争点がないという批判も多いが、もともと解散とは政争の具であって大義があることのほうが珍しい? しかし、決してシラけてる場合でもないのが、これらの選挙区からわかるはず!

(取材・文/本誌総選挙取材班)

■週刊プレイボーイ51号「ビジュアル系選挙区16【現地ルポ】」より(本誌では、このほか北海道から沖縄まで本誌記者が突撃取材で各選挙区の見所をレポート!)