戦後最低の投票率というすさまじい無関心の中で行なわれた総選挙で自公連立政権は大勝した。安部首相は総選挙時、「争点はアベノミクスの新任、不信任」と強調していたが、本来隠していた“本当の争点”がその大勝によって年明け早々、表に出てきそうだ。
それは今月から始まる通常国会の注目点にも表れている。財務省のキャリア官僚、A氏に聞いてみた。
「まず重要なのは予算です。財政状態が悪い中、約100兆円という史上最大規模の予算額になります。相変わらずバラマキ系の予算も幅を利かせることになる。
消費税率のアップが延期になり、社会保障費の支出は自然増額分だけでも毎年約1兆円ずつ増えている状況下で、赤字国債を乱発して大型予算を組むことは避けたいというのがウチの本音です。
はっきり申し上げて、アベノミクスは全くうまくいっていないので税収は増えません。財政再建を最優先に考える財務省としては望まない展開ですが、もう“最後の隠し玉”が表面化するのは時間の問題ですね」
最後の隠し玉とは?
「相続税です。国の借金が1038兆円以上もあるのに国債が暴落しないのは、国民の金融資産が約1500兆円もあるからです。資産を持つ人の大部分は高齢者なので、相続税の税率を上げ、生前贈与もほぼできないようにしてしまえば、国民の資産で国の借金をチャラにできるということです」(A氏)
生前贈与で資産を現役世代に移すべき!
これに対して元農水大臣秘書官で政治アナリストの池田和隆氏が憤る。
「日本政府が国の膨大な借金を相続税でチャラにしようとしているのは事実です。国家の第一の存在理由は国民の生命と財産を守ることです。それなのに国民の財産を強奪して自分の借金をチャラにしようなんて、親が子供の財布からお金を盗んで自分の放蕩(ほうとう)でつくった借金を返す行為と同じ。明らかに売国行為だし、誰も国家を逮捕できない以上、ただの強盗よりもヒドイ」
でも、若い世代にとっては、高齢者からお金を取るならいいやと単純に思うかもしれない。
「それは違います。高齢者というと人ごとに聞こえるかもしれませんが、言い換えれば我々の親や祖父母のことなのです。今の現役世代の老後はただでさえ保障が薄いのに、親からの遺産も国に奪われるとなれば貯金に走るしかない。そうなると消費が冷え込み、不景気が続く悪循環に陥るのです。
本当にやるべきは逆の政策です。生前贈与の制度を緩和して、資産を高齢者から現役世代に今すぐにでも移すべきなのです。だって年老いた親が家やクルマを買い足しますか? 高齢者にお金を持たせても消費しないんですよ。
現役世代にお金が移れば家やクルマも買うし、奥さんに服も買うし、旅行にも行くし、子供の教育にもお金を使える。経済的な不安で子供を産めない家庭でも子供をつくれるようにもなります。そうして消費が増えれば税収も増えるのです」(池田氏)
アベノミクスの本当の姿は経済を良くすることではなく、表面的にそう見せかけるだけ? 巨額の財政赤字を精算できなければ、次に手を出すのは国民の資産…。一体どこまで安倍政権の“暴走”は続くのか?
■週刊ブレイボーイ3・4特大号「最強安倍政権 暴走カレンダー2015」より(本誌では、集団自衛権、原発再稼働、TPP、外交の行方も検証)