2015年の政治トピックスでやはり注目されるのは、「アベノミクスは本当に効果があるのか」という点だろう。

日経平均は上がり、円安は進行しているものの、経済が良くなったという実感を多くの人が抱けていない。それもそのはず、アベノミクスの本当の姿は経済を良くすることではなく、表面的に良いように見せかけるだけだからだ。

これについて大手外資系金融機関のエコノミスト、S氏が解説する。

「アベノミクスが強調する成果は、株価と雇用と賃金のアップです。でも株価の上昇にはトリックがある

皆さんに知っていただきたいのは、世界の基軸通貨がドルだということです。原油の輸入も円からドルに換金してから買うので、過剰な円安は日本の富を流出させることにつながります。

日経平均株価を円換算で見ると確かに上がっているのですが、世界は日本経済を見るときにドルで見ます。ドル換算で見ると日本の株価はまったく上がっていません。横ばいか、むしろ最近は下がっている。異次元の金融緩和などで円の価値を暴落させたためです。

だから、他国から見るとアベノミクスはうまくいっていないという判断になる。いつ日本株が暴落してもおかしくないと思いますよ」

雇用や賃金上昇はどうか? こちらは元農水大臣秘書官で政治アナリストの池田和隆氏が答える。

実態は悪化、経済は冷え込む一方

「先の解散総選挙の目的はアベノミクスの成果に期待を持たせて政権の支持率を上げ、選挙に勝ち、集団的自衛権や原発再稼働、TPPなどの国民から批判を浴びそうな政策を推進することにありました。

しかし現実は、雇用が増えたといっても正社員が減って非正規雇用の社員が増えただけ。実態は明らかに悪化しています。終身雇用の時代は庶民も安心して消費できましたが、今の状況では将来が不安で貯金したくなる。それでは経済は冷え込む一方です。

小泉政権以前までは、日本特有の貧富の差が少なくて中産階級が分厚い、内需中心の経済構造を世界は心底うらやましがっていた。しかし、小泉内閣が構造改革の名の下に竹中平蔵さんを中心として労働環境を壊し、日本の経済を根本から破壊した。その竹中さんが派遣会社大手のパソナ会長にちゃっかり納まっている。

これが象徴するように、小泉内閣以降の政権は国益ではなくアメリカや一部の人間の利益を追求しているだけで、国の未来など考えていない。賃金上昇も安倍さんが大企業に頼み込んだだけで一時的なものです」(池田氏)

アベノミクス、ヤバイな。

■週刊ブレイボーイ3・4特大号(1月5日発売)「最強安倍政権 暴走カレンダー2015」より(本誌では、集団自衛権、原発再稼働、TPP、外交の行方も検証)