昨年末の総選挙による大勝で意気揚々の安部首相。争点はあくまで「アベノミクスの是非」と訴えてきたにもかかわらず、選挙に勝った途端、目立たないように隠してきた集団的自衛権やTPP、原発再稼働などに関して「国民の信任をいただいた」と言いだした。

特に今年は重要案件が目白押し。そこで参考までに、今後の政治日程から、史上最強ともいえる権力を持った安倍政権の行動と、国民が食らうダメージを予測してみた。

まずは原発再稼働。元農水大臣秘書官で政治アナリストの池田和隆氏が解説する。

「鹿児島の川内(せんだい)原発が3月あたりに再稼働なんて話が一般的ですが、そう簡単にはいかないでしょう。原発は支持率の下落に直結する案件なので、集団的自衛権行使の審議や採決の前にはやりたくないと思います。冬場は電力の需要も高くないし、先に集団的自衛権に関する安保法案に取り組んで、その後、夏場を迎える直前に再稼働させるのではないかと見ています」

集団的自衛権の行方は?

「今回の内閣改造で唯一、防衛大臣を中谷元さんに代えたので必死にやるでしょうが、道のりは険しいと思います。

まず、審議入りしただけで中国や韓国が大騒ぎします。南京大虐殺や従軍慰安婦問題以上の、日本のイメージを落とすための新たなプロパガンダを発動してくる可能性もある。尖閣や竹島に対する姿勢も一段階ステージを上げてくるでしょう。

ここで重要な視点は、日本と中韓の緊張関係がこれ以上高まることはアメリカにとって望ましくないということです。日中衝突して日米安保が発動し、中国と戦うなどアメリカにとって悪夢以外の何物でもないのです。だから靖国参拝のときでさえ、アメリカは安倍さんを叱りつけた。従って今年は靖国参拝も行なわないだろうと予想しています」(池田氏)

TPP妥結が招く、最悪のシナリオ

おまけに連立パートナーの公明党は集団的自衛権に反対の立場。維新などの他党と組まないと可決できないかもしれないし、可決は不透明な情勢だ。

では、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題はどうか。大手外資系金融機関のエコノミスト、S氏がため息交じりに語る。

「TPPが日本の国益にならないのは明白です。アメリカとFTA(自由貿易協定)を結んだメキシコや韓国はヒドい目に遭っています。

アメリカの基本方針は、経済協定を結んだ相手国との共存共栄ではありません。あくまでアメリカのルールに他国を合わせさせ、アメリカのみが得をすればいいという“マッチョ商法”ともいえるものなのです。

今年中に妥結させるのが目標みたいですが、アベノミクスで失敗して、TPPで富をアメリカに吸収され、今まで日本国民がコツコツとためてきた世界一の富の蓄積を国の借金返済に使ってしまったらどうなりますか? 貧しい状況の少子高齢化社会だけが残る悲惨な未来しか待っていませんよ」

そうさせないためにも批判の声を上げ続ける必要があるが、無敵状態の安倍政権は言論にも圧力をかける構えだ。実際、自民党は先日の総選挙前に主要なテレビ局に対して書面で圧力をかけている。

これで自民党にマイナスとなる報道が姿を消し、本当の争点が見えないまま選挙に突入して安倍政権が勝ってしまったのだ。

師走の無関心の代償は、末恐ろしいものになりそうだ…。

■週刊ブレイボーイ3・4特大号(1月5日発売)「最強安倍政権 暴走カレンダー2015」より