キャンプ・シュワブ前ゲートで対峙する住民と警察。1月15日未明には警察・機動隊が数を頼みに市民らを排除し、重機などが搬入された。21日には昼間から堂々と機材を運び込むなど、安倍政権の動きは大胆になってきている キャンプ・シュワブ前ゲートで対峙する住民と警察。1月15日未明には警察・機動隊が数を頼みに市民らを排除し、重機などが搬入された。21日には昼間から堂々と機材を運び込むなど、安倍政権の動きは大胆になってきている

沖縄・辺野古で緊迫した情勢が続いている。

選挙で示した新基地建設反対の民意を無視して安倍政権が建設作業を強行、市民らとの衝突が起こっているのだ。市民に複数のケガ人も出ており、このまま行けば最悪の事態も起こり得る。辺野古で今、何が起こっているのか? ノンフィクションライターの渡瀬夏彦氏がその実態を現場からレポート!

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1月14日から15日未明にかけて、沖縄県名護(なご)市辺野古(へのこ)の米軍海兵隊キャンプ・シュワブの工事車両ゲート前に、100人を超える市民らが結集、ゲート封鎖を試みた。

沖縄の民意を無視して、新基地建設強行の姿勢を崩さない安倍政権(防衛省沖縄防衛局)が、海上作業再開のための資材や重機を真夜中に搬入するという情報を受け、市民有志が駆けつけたのである。わたしも取材者である以前に、心から新基地建設阻止を願う県民のひとりとして、ゲート前に馳(は)せ参じていた。

市民らは、可動式の蛇腹ゲートにしがみついたり、防衛局が市民の抗議行動妨害のために敷いたギザギザの山型鉄板の上に座り込んだり寝転んだりして抗議・抵抗したが、その数を上回る機動隊員が投入され、市民らと全国から駆けつけた支援者は、あっけなく排除・拘束された。

そうして、15日午前1時半過ぎ、機動隊員によってガードされて造られた、新基地建設強行へのいわば「花道」を、大型重機などを載せたトレーラー、トラック8台が次々に通ってキャンプ・シュワブ内へと入っていった。

わたしはこれが菅義偉(すが・よしひで)官房長官の言う「粛々と」物事を進める手法、民意を無視して新基地建設を強引に進める安倍政権のやり方なのだ、とリアルに実感することができた。

罪深い仕事をしていることを恥じるべきだ

 1月15日未明、新基地建設の資材や重機の搬入を、体を張って阻止しようとする市民たち 1月15日未明、新基地建設の資材や重機の搬入を、体を張って阻止しようとする市民たち

もみくちゃにされた市民らの間からは悲鳴にも似た激しい怒号が起こり、それは沖縄防衛局の職員に対してだけでなく、安倍政権の暴走に加担している県警の警察官たちにも投げつけられていた。

「恥を知れ!」

「あんたたちは今、県民の意思に背いた恥ずかしい仕事をしているんだよーっ」

県民のひとりとしてのわたしも、防衛局の職員ひとりひとりの顔を見ながら、こう語りかけざるを得なかった。

「君たちは、危険だからゲートから離れてください、鉄板に入らないでくださいとわたしたちに言う。そして警察を味方につけて強制排除する。しかし、沖縄県民は正々堂々と選挙を通じて、何度も繰り返し、新基地建設は許さない、という意思をはっきりさせているんだよ。

その民意を完全に無視して、危険な状態をつくり出しているのは君たちのほうなんだ。君たちこそ、罪深い仕事をしていることを恥じるべきだ。そのことだけは覚えておきなさい」

防衛局の若い職員のひとりは、わたしにビデオカメラを向け続けていたが、その顔は下を向いて、まともにわたしの目を見ることさえできない。本当に哀れというしかない姿がそこにあった。

機動隊員にも同様のことを、できる限りひとりひとりに語りかけるようにした。われながら言葉に怒気は含まれていたとは思うのだが、「君たちは民意に背く残念な任務をさせられているんだよ」ということだけは、微力ながら少しでも伝えたかったのだ。

山本太郎参院議員も警察官により強制排除

もみ合っている最中に「警察官が暴力を振るってどうする!」と叫ぶ当方をにらみ返していた機動隊員も、整然と隊列をつくった状態で静かに語りかけられると、やはり悲しそうな表情を浮かべるしかないように見えた。妙な言い方に聞こえるかもしれないが、機動隊員全員が無条件にこの「民意の圧殺行為」に誇りを持っているわけではないと伝わってきて、ほんの少しだけ安堵の念を覚えた。

この市民の抗議の輪には「今夜、辺野古ゲートが危ないらしい」と聞いて駆けつけた山本太郎参院議員や、地元沖縄選出の糸数(いとかず)慶子参院議員もいて、ハンドスピーカーで抗議のスピーチを行なった。

山本議員自身が警察官によって暴力的に排除されるのを、わたしは横にいてつぶさに目撃した。彼が強調したのは「名護市長選、知事選、衆院選の沖縄全選挙区で、新基地を造らせないオール沖縄が勝利したのだから、これを無視してよいわけがないでしょう」という実にまっとうな論点だった。

たくさんの県内政治家もゲート前に駆けつけていた。例えばわたしの隣にいた旧知の県内市議会議員は、屈強な機動隊員の隊列に向かって走り、何度も何度も体当たりをしていた。そのありったけの怒りと悔しさと抗議の意思の表現は、目の前の県警の若者たちに対してではなく、本当は、まっとうな言葉と理屈の通じない相手、すなわち安倍政権に向けられたものだと痛感させられた。

●この続き、PART2は明日配信予定!

(取材・文/渡瀬夏彦 撮影/森住 卓 冨田きよむ)

■週刊プレイボーイ6号(1月26日発売)「“安倍の民主主義”を日本人は許していいのか?」より