新基地建設に抗議する住民たちと対峙する警察。彼らも心情的には平気ではないはずだ 新基地建設に抗議する住民たちと対峙する警察。彼らも心情的には平気ではないはずだ

選挙で示した新基地建設反対の民意を無視して安倍政権が建設作業を強行、沖縄・辺野古で市民らとの衝突が起こっている。

市民には複数のケガ人も出ており、このまま行けば最悪の事態も起こり得る。辺野古で今、何が起こっているのか? ノンフィクションライターの渡瀬夏彦氏による現場レポート、第2回!(PART1はコチラ)

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この国は、果たして民主主義国家と呼べるだろうか。

揺るがぬ民意を選挙という手段で正々堂々と示してきた沖縄県民に対する安倍政権の仕打ちを見れば、とてもそうは言えないことがわかる。

昨年は、沖縄にとって、重要な選挙イヤーだった。

「辺野古新基地を建設することの是非」が、最大の争点となった選挙がいくつもあり、そのすべてで「建設反対派」が勝利を収めた。最重要の知事選では、まさに圧勝だった。

結果をおさらいしておこう。

まず2014年1月19日の名護市長選。「海にも陸にも新たな基地は造らせない」ことを公約に掲げ続けている稲嶺(いなみね)進市長が、4000票以上の大差で安倍自民党の推す候補を破り、再選を果たした。

9月7日の名護市議会議員選挙でも、稲嶺市長を支える与党議員が、27議席中14議席と過半数を占めた。中立の公明党が2議席を確保したが、沖縄の公明党は紛れもない「辺野古新基地建設反対派」だ。つまり、反対派は安定多数を維持することとなった。

その民意の後押しを受けて、当選後の稲嶺市長は「(道路・港湾使用や河川変更などの許認可権など)あらゆる市長権限を行使して新基地建設を阻止する」とあらためて表明し、その姿勢は今も少しもブレていない。

そうして迎えた県知事選挙は11月16日に投開票が行なわれ、午後8時に複数のメディアが、翁長雄志(おなが・たけし)前那覇市長の当選確実を伝えた。「辺野古に基地を造らせない」と明言する翁長氏が、県民の意思に反して政府に迎合し、辺野古推進派に転じてしまった現職の仲井眞弘多(なかいま・ひろかず)氏に約10万票の差をつけて、圧倒的な勝利を収めたのだ。

安全保障が大事であるならば国民全体で考えるべき

わたしは当確後に翁長選対本部で、稲嶺進名護市長に話を聞いたが、市長はうれしさと安堵を足して割ったような笑みを浮かべてこう言った。

「これまでは名護市民の民意を背に受けて頑張ってきましたが、これからは沖縄県民の民意を背負った翁長新知事と一緒に闘っていけるんです。うれしいことです。ありがたいことです」

ここでもうひとつ忘れてならないことがある。知事選と同時に地元・名護市で行なわれた県議補選(名護市区)でも、いったん引退を決めていた「新基地建設反対」の元名護市議・具志堅(ぐしけん)徹氏が、自民党の有力候補を抑えて当選したという事実だ。自民党関係者の間には、知事選以上の大きな衝撃が走ったと、後に自民党県連関係者から聞いたほどの出来事であった。

12月12日、翁長知事は県議会での所信表明で基地問題に触れ、こう述べている。

「戦後約70年を経た現在もなお、国土面積の約0.6%である本県に約74%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがありません。そして、その米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因であることは明確であります。日本の安全保障が大事であるならば、日本国民全体で考えるべきであります。

このような基本認識のもと、私は、日米両政府に対し、過重な基地負担の軽減、日米地位協定の抜本的な見直しを求めるとともに、騒音問題や米軍人・軍属による犯罪など、米軍基地から派生する諸問題の解決に取り組んでまいります。

普天間飛行場の辺野古移設問題につきましては、このたびの県知事選挙の結果を受け、公約の実現に向けて全力で取り組んでまいります。国においては、現行の移設計画をこのまま進めることなく、わが国が世界に冠たる民主主義国家であるという姿勢を示していただきたいと思います。

この問題につきましては、埋め立て承認の過程に法律的な瑕疵(かし)がないか専門家の意見も踏まえ検証し、法的瑕疵があった場合は承認の『取り消し』を検討してまいります」

だが、安倍政権は、沖縄県民がこのように選挙を通じて明確に民意を示すたび、驚くべき反応をしてきた。菅官房長官は知事選の結果を受けてなお、記者会見で「移設は粛々(しゅくしゅく)と進めていく」と述べている。

オール沖縄全勝も、安倍政権はあからさまに「沖縄蔑視」

 1月15日未明、新基地建設を阻止しようとする住民たちは、警察によって次々と強制排除された 1月15日未明、新基地建設を阻止しようとする住民たちは、警察によって次々と強制排除された

周知のとおり、12月14日には衆院選の投開票が行なわれ、沖縄の4選挙区すべてで、安倍自民党の候補が敗北した。

翁長知事は、自身を支えるオール沖縄候補の応援に入り、知事選のときと同様にこう強調していたものだ。

「一部の政治家はブレても、県民はブレていない、ということを示しましょう」

結果は1区・赤嶺政賢(あかみね・せいけん)氏(共産党)、2区・照屋寛徳(てるや・かんとく)氏(社民党)、3区・玉城デニー氏(生活の党)が小選挙区で勝利。4区でも、77歳の元県議会議長、仲里(なかさと)利信氏が当選した。

仲里氏は、対抗馬の現職・西銘(にしめ)恒三郎氏の後援会長も務めていた元自民県連重鎮だ。しかし、普天間基地の「県外移設」の公約を先頭切って破り捨てた西銘氏の所業に怒り、名護市長選や知事選では、新基地建設反対の立場で、つじ説法を繰り返した。

自民党県連はこの一連の行動が許せなかったらしく、仲里氏を除名処分にした。そこに解散・総選挙が巡ってきたため、準備不足を承知で、復活当選のない無所属で果敢に出馬、見事当選を勝ち取ったのである。

わたしは総選挙期間中、激戦が予想される沖縄4区に入り、仲里氏に密着取材をした。

「彼を育てて当選させてしまったのはわたしだ。彼を倒すのもわたしでなければいけないだろうと思う」

「戦争につながる基地は絶対に造らせてはいけない。そのことを訴え続けることは、あの悲惨な沖縄戦を体験したわたしの責任だと思っていますよ」

そう仲里氏がしみじみ語っていたことが忘れられない。

こうして民意が明確に示された沖縄で、安倍政権がどれほどの暴挙・蛮行を繰り返しているか、読者の皆さんはご存じだろうか。

昨年末以来、何度も就任の挨拶に上京した翁長知事に、首相はおろか官房長官も関係閣僚たちも会おうとしない。辛うじて知事が会えたのは山口俊一沖縄担当相と官房副長官らだが、このあからさまな「沖縄蔑視」の姿勢に、沖縄県民が怒りを感じないとでも思っているのだろうか。

新基地反対の知事ならば、挨拶さえ拒否して追い返し、議論のテーブルにも着かないという態度は、県民から見れば、まさに自分たちが踏みつけられたことにほかならない。安倍政権が確信犯的にこんな振る舞いに及んでいるとすれば、もはやこの国ニッポンは、民主主義を否定しているに等しく、墓穴を掘る愚行としか言えないだろう。

●この続き、PART3は明日配信予定!

(取材・文/渡瀬夏彦 撮影/森住 卓 冨田きよむ)

■週刊プレイボーイ6号(1月26日発売)「“安倍の民主主義”を日本人は許していいのか?」より