フランスの風刺新聞紙『シャルリー・エブド』へのテロ事件はアルカイダによるものだった。1月14日、イエメンを拠点とする武装組織「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)がYouTubeで犯行声明を公開した。

果たして、彼らはこれからどのような行動に出ると予想されるのか?

まず、アルカイダはヨーロッパ、特にフランスで再び大規模テロを仕掛ける可能性が高い。となると、最大のターゲットはやはり原発だろう。

フランスは発電量の75%を原発に頼る世界有数の原発大国であり、日本の3・11を機に原発をやめたドイツやイタリアにも電力を供給している。ここをやればEU経済に大打撃を与えられるーーテロの標的としてはうってつけだ。

だが、日本人コントラクター(傭兵)のA氏はこう語る。

「フランスの原発施設への攻撃は難しいです。対空ミサイルシステム、無人機接近を阻止する対ドローンジャマー、そして、強力な武装をした警備隊もいますから。また、送電線がぶち切られたときの対策も万全です。原発職員、労働者もかなり厳格に身元調査をしているので、この線からも原発を狙うのは難しいでしょうね」

どうやら日本のようにお粗末で不安な警備ではないようだ。ならば、観光地はどうか? フランスは年間約8300万人もの観光客が訪れる世界一の観光立国だ。フランス在住の元外人部隊兵士が言う。

「今回のテロで、すでに観光客は遠のき始めています。今後も同じような事件が立て続けに起これば、フランス経済は大打撃を受けるでしょう」

警備が意外と手薄なのは?

2度、アフガンに出征し、フランス国内の重要観光地で対テロ警備任務にも就いた元フランス外人部隊スナイパーの反町五里伍長はこう言う。

「テロリストたちの攻撃方法を推測すると、エッフェル塔と凱旋門では、観光客を無差別に殺すでしょう。それから、エッフェル塔は階段で上れますから、上を占拠して立てこもる。凱旋門の最上部にも土産物店がありますから、ここも占拠して立てこもりますね。

一方、ルーブル美術館とベルサイユ宮殿は、観光客を無差別銃撃してから中に入って放火、爆破で潰しまくるでしょう」

パリの観光スポットへの攻撃は、フランスに致命的な打撃を与えられるのだ。もちろん、テロリストはパリ以外も狙ってくるはずだ。

「パキスタンでタリバンがやったような学校襲撃はあり得ます。あるいはTGV新幹線の鉄道テロ。数千人単位の死傷者を出せますから」(前出・元外人部隊兵士)

対するフランスの警備状況は、バルス首相が国内で1万人の軍兵士と警官ら約5000人を配備し警備に当たらせるというが、この警備が意外と手薄なのだ。

「警察、憲兵隊のほかに外人部隊を含む軍が警備していますが、自動小銃を扱い慣れていない兵士も配置されているため、テロ発生時にうまく対処できるとは思えません」(元外人部隊兵士)

それにしても、原発があり、観光立国で新幹線もある…この条件はそっくりそのまま日本にも当てはまる。すでに敵国と想定されている以上、日本がテロの標的になる時代も決して遠い話ではない。

(取材/小峯隆生)