昨年の総選挙で議席倍増! 共産党に期待しちゃって本当にいいの? カリスマブロガー・ちきりんが志位委員長を直撃! 昨年の総選挙で議席倍増! 共産党に期待しちゃって本当にいいの? カリスマブロガー・ちきりんが志位委員長を直撃!

昨年末の選挙で大躍進を遂げた共産党

でも、これから国会で存在感を示せるの? 建設的な提案はできる? 

志位委員長は何を考えているのかを共産主義フリークの社会派ブロガー・ちきりんさんに突っ込んでもらったロングインタビュー!(前編はこちら⇒http://wpb.shueisha.co.jp/2015/02/02/42810/

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ちきりん じゃあ共産党は日本をどんな国にしたいんですか? 共産党の公約の大半は大企業に厳しい内容です。もしかして日本を大企業が存在しない、中小企業だけの国にしたいと思われてます? グーグルやアップルみたいな巨大企業が、民間にはまったく存在しない社会を目指してるんでしょうか?

志位 とんでもない。私たちは大企業を切り刻んで中小企業にしようなんてことは考えてませんよ。そうではなくて、大企業は社会的に大きな存在だから、それにふさわしい責任を果たしてほしいということです。

例えば、税金の問題ひとつとっても、法人税の実質負担率は中小企業が約25%、大企業は約14%です。富裕層や大企業には様々な優遇税制があり、現にトヨタ自動車は2012年までの5年間、払った法人税はゼロでした。

ちきりん もっと課税しても、日本企業は国際競争に負けずにやっていけると?

志位 そうです。日本の大企業は社会保険料の負担が少ないから、税と社会保険料を合わせて計算すると、フランスやドイツに比べてずっと軽いんですよ。だからちゃんと社会的責任を果たしてほしい。

それから派遣労働のような「使い捨て」労働を大企業が率先してやっているのはおかしなことです。人間らしい働き方ができるように責任を果たすべきです。

ちきりん ちなみに共産党に非正規の職員さんは?

志位 いません。全員、無期雇用の職員です。あと、大企業に言いたいのは長時間労働の問題です。日本の年間平均労働時間は2000時間を超えています。ドイツやフランスが1500時間程度。つまり、日本では毎年500時間も多く働かされていることになる。

日本で働くだけで「懲役2年半」と同じ

ちきりん ひどいですよね。

志位 一生のうち40年働くとしたら2万時間。丸々830日分です。つまり、日本で働くだけでだいたい「懲役2年半」食らっているのと同じなんですよ。

ちきりん そのたとえは共産党ならではな感じもしますが、ちょっと怖いです(笑)。

志位 なぜこんなに長時間労働なのかというと、日本は法律で残業の上限が決まっていないから。労使で協定を結べば、青天井でどれだけ残業させてもいいことになっている。

ちきりん 確かに有給休暇や育児休暇をちゃんと取らせ、労働時間を短くすることは大事だと思います。でも、それを厳格に適用すると、中小企業の多くは経営が成り立たなくなるのでは?

志位 中小企業に関しては、雇用を守ったり最低賃金を引き上げたら国が支援することが必要です。例えば、最低賃金は全国平均で780円。先進国中、最も低い。私はこれを1000円まで引き上げるべきだと主張しています。

大企業は体力がありますから、問題は中小企業です。アメリカは中小企業に、5年間で8800億円の社会保障税の減税をしました。それで最低賃金は大幅に引き上がった。こういうことをしないといけないんです。

ちきりん 志位さんは、東大に入学してすぐ共産党に入党されてますよね。そして大学卒業後、専従職員になられました。いわゆる就職活動は経験されてないんですか?

志位 そうですね、すぐ共産党に入りましたから。僕は物理が専門で研究者になりたいと思ったこともあったんですが、やはり自分の生きる道はこっちかなと。

共産党は外資系やベンチャーのような実力主義

―共産党の活動をするようになったきっかけは?

志位 うちは両親とも共産党員で、小さい頃から親の活動を見て育ったんです。父は小学校の教員をやっていたんですが、中卒の、もともとは代用教員(正式資格を持たない教員のこと)だった。教職員組合をつくるときも、一番立場の弱いところから出発しているから、教員の同僚だけでなく給食の調理員さんとか用務員さんとか、そういう人と協力していった話をよくしていました。

私に「『教員組合』じゃない。『教職員組合』なんだ」ということをよく言っていましたよ。立場の弱い人と連帯することがどれだけ大事か、普通の人の苦しみに寄り添うことの大切さは、父から学んだ気がします。

ちきりん なるほど。ところで、志位さんは35歳で書記局長(自民党の幹事長ポスト)、46歳で委員長就任とスピード出世されてますよね。自民党は当選回数を重視するなど年功序列の古い日本企業とそっくりです。

ところが共産党は、年齢にかかわらず成果を出した人をトップに抜擢(ばってき)するなど、まるで外資系企業やベンチャー企業のような実力主義の人事制度を採用しています。若くても実力ある人をトップにするという党の方針が、志位さん大抜擢の背景にもあったのでしょうか?

志位 う~ん、私に力があったかどうかは勘弁してください。自分のことは言いにくいです(苦笑)。でも、若い人にもどんどんいい仕事をしてもらいたいとは思っています。

ちきりん 共産党の人事制度で評価されるのはなんですか? 選挙に強いこと? 演説のうまさや党員獲得数など? もし私が入党して出世したいと思ったら、何を頑張ればいいのでしょう?

志位 やっぱり共産党は国民の苦しみ、困難を軽減するってことを存在意義にしているんですね。だから党員も、立場の弱い方に寄り添うという共産党の魂をちゃんと持って頑張っている人が、やはり人望を集めます。

格差はそれぞれの世代で拡大している

―弱者に寄り添った活動というのは、具体的にどんなものなんですか?

志位 人によって様々ですよ。例えば、前回の参議院選挙で当選した辰巳(たつみ)孝太郎さんは、大阪で生活保護を受けてらっしゃる方、母子家庭でギリギリの生活をされている方などの支援を長年コツコツやっていました。まだ38歳と若いのにこうして社会経験も豊富です。こういう若い人がどんどん出てきてくれて、頼もしいですね。

ちきりん 誰が弱者かという定義が最近は難しいと思うんです。例えば、世代間格差の問題。20代、30代の人口がかつての半分になると予想される中、増え続ける高齢者全員に手厚い社会保障を約束すると、若者の税負担はどんどん大きくなる。本当の弱者は高齢者ではなくしわ寄せを受ける若者であり、若者を守るためには、行きすぎた福祉の是正も必要では?

志位 私たちは世代間で富が偏っているとは思っていないんです。

ちきりん 世代対立の構図自体がおかしいと?

志位 世代で対立させ、お年寄りには我慢してもらって若者にお金を回しましょう、という考え方は間違っていると思います。格差はそれぞれの世代で拡大しています。お年寄りにもお金持ちはいますが、国民年金で月に4万円しか支給を受けていない人もいる。

ちきりん でも、例えば共働きで学校の先生をしていた夫婦だと、月に40万円もの年金をもらっていますよね。年金財政も厳しい中、こんな高額な年金を払う必要がありますか? 不公平すぎません?

志位 支給の水準を、低い方に合わせるという考え方はどうなのでしょうか。やはり低い方を高い方に合わせるという発想でやっていかないと。確かに先生だと共済年金で国民年金よりも多い額をもらえる。でも、多い方がけしからんというのは違うと思います。

消費税は大企業と富裕層に優しい

ちきりん でも大企業の社会的責任の話と同じで、月に40万円も年金をもらっている高齢者には「困っている人も多いのだから、ちょっとだけ我慢してください」と説得すべきでは?

志位 私は年金問題の財源はこう考えているんです。まず、大企業の優遇税制を正して、富裕層からも応分の負担をしていただく。これが第一ですね。でも、これだけでは足りないんです。国民全体でその人の力に応じて支えていく必要がある。私たちは、消費税のような弱いものいじめの財源ではなく、所得税などの累進を強める方向で賄うという具体的な提案をしています。

ちきりん 共産党は、消費税は全廃すべきと主張されてます。でも定年後の高齢者は消費税以外、ほとんど税金を払う必要がありません。若い人は働いて所得税を払うし、起業すれば事業税や法人税を払う。でも貯金と年金で暮らす高齢夫婦は、消費税以外はほとんど税金を払わないで済みます。

これはさすがに不公平では? 福祉国家といわれるスウェーデンでも食品で12%、ほかは25%の消費税がかかります。やはりある程度の消費税は必要だと思うのですが。

志位 私たちの計算では、消費税がなくてもやっていけると思っています。消費税が誰に優しいかというと、まずは大企業。彼らは実質的に消費税を払っていませんから(*)。次に優しいのが富裕層。世代に関係なく、苦しい生活をしている人に厳しいのが消費税なんですよ。だから、少なくとも消費増税はやめる。将来的にはなくしていく。そして、その分を負担能力のある人、企業に負担してもらう。

だから、高齢者でも一定の所得がある人には税金を払ってもらうことも当然だと思っていますし、富裕税を新しくつくって、お金持ちに負担してもらうことも考えています。消費税が若い人にとって優しい税制かっていうと、そうではないじゃないですか。

*共産党は以前から、大企業は仕入れの際に払う消費税分は下請けに値引きさせることが可能で、形として消費税を払っていても、実際は負担していない、と主張している

「内部留保を吐き出させる」なんて言ってない!

ちきりん それはそうですね。しかしヨーロッパはアメリカより消費税が高いですよね。共産党は福祉や労働政策に関して、よくヨーロッパの福祉国家の例を出しますが、それらの国はどこも消費税が高いです。消費税をなくして福祉国家なんて不可能では?

志位 これは歴史的な違いがありますからね。ヨーロッパの福祉国家の場合、社会保障のために消費税を上げてきたわけではありません。それから、財源の中では事業主の社会保険料負担が大きい。そもそも、所得格差が比較的小さな国では消費税の不公平感、不平等が小さいんですよ。仮に所得格差がまったくない国だったら、消費税は平等な税金になりますよね。そういうことも含めて、一概に比較はできないと思っています。

ちきりん 共産党の福祉財源案で面白いと思ったのは、ひとり当たり20億円以上の相続財産がある人にはもっと相続税を払ってもらおうとか、為替(かわせ)取引に課税しようという提案です。

志位 東京外国為替市場の取引額は、投機マネーが流れ込み、この15年間で2.5倍以上の年間約100兆ドルになっています。これに0・01%程度を課税しただけで1兆円前後の税収になります。もともとはジェームズ・トービンさんという経済学者が提唱したことです。

ちきりん アメリカの有名投資家、ウォーレン・バフェット氏も為替取引への課税や超富裕層への課税強化に賛成しています。アメリカの投資家と共産党の主張が同じというのはとても興味深いし、そういう主張だけなら、共産党の支持はもっと幅広い層に広まると思うんです。

でも、企業の内部留保を取り崩せという主張になると、「やっぱり共産党は企業の私有財産を認めないの?」と思えてしまう。

志位 僕は内部留保をすべて取り崩せ、なんて言ったことないんですよ。「内部留保のごく一部」です。全部取り崩したらやっていけないことくらい、わかっていますよ。

財務省も共産党にマーケティングを学ぶべき

ちきりん 内部留保のごく一部でいいなら、そんな刺激的な言葉を使う必要はなく、単に法人税を上げろと言えばいいのでは?

志位 ただ、それができるだけの体力がある、ということを言いたいんです。

ちきりん あー! なるほど。実質的な効果は法人税を上げるのと同じだけど、内部留保という言葉を使ったほうが、企業がお金をため込んでいることを国民にアピールできる、ってことですね? それはマーケティング的に秀逸な戦略ですね。

財務省は最近、社会福祉法人が介護スタッフの給与を上げず、内部資金をため込みすぎだと主張しています。ところが言い方がへたすぎて、まったく支持を得られていません。財務省も共産党にマーケティングを学ぶべきですね。

―内部留保の一部というと、どれくらいをイメージしていますか?

志位 1、2%でかなりの賃上げができるはずです。

―でも、少額でも企業の貯金を出せってことですよね。それって財産権の否定、憲法違反ではないかと思うのですが。

志位 企業に命令して貯金を吐き出させるということではないんです。私たちが言ってるのは、例えば、非正規雇用を正社員にする、あるいは長時間労働を是正する、最低賃金を引き上げる。そういうルールを作れば、大企業は内部留保を使うことになりますね。おのずと、大企業がため込んだお金が社会に回ってくるようになるということなんです。

ちきりん こうやって、何をお聞きしても完璧な答えが返ってくるところも素晴らしいですね。個人的に共産党はもっと伸びると思っているので、これからも注目しています。ありがとうございました!

(撮影/高橋定敬)

●志位和夫(しい・かずお) 1954 年生まれ、千葉県出身。1979年、東京大学工学部物理工学科卒業、日本共産党東京都委員会に就職し青年学生運動を担当。1990年に書記局長に就任、1993 年の衆議院選挙に出馬し初当選。2000年に日本共産党委員長に就任。著書に『戦争か平和か 歴史の岐路と日本共産党』、『綱領教室』全3巻(ともに新日本出版社)などがある。公式HP【http://www.shii.gr.jp/】

●ちきりん 関西出身。バブル期に証券会社に就職。アメリカの大学院で経営学を学び、外資系企業に転職。2010年末に退職した後は、文筆活動に専念している。2005年に開始したブログは、匿名にもかかわらず異例の月間200万PVを誇り、『多眼思考』(大和書房)、『「自分メディア」はこう作る!』(文藝春秋)など著書も多数。ブログ『Chikirinの日記』【http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/】