鈴木宗男(左)と佐藤優がイスラム国の嘘と意図を暴く!

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

今回のテーマは、湯川遥菜さん、後藤健二さんを拉致、殺害したイスラム国についてだ。イスラム国の次の標的のひとつとして名指しされた日本は、今後どうすべきなのか?

***

鈴木 1月7日、フランスで新聞社襲撃テロが起きた翌日に、イギリス保安局(MI5)のアンドリュー・パーカー長官が「フランスで起こったことは今後イギリス、いや西側諸国で起こるかもしれない」と警告を出しました。

めったに表に出ない保安局の人が、わざわざ出てきてコメントしたのには、テロに関するなんらかの情報を持っているからだと思うべきですね。

佐藤 先生がおっしゃるとおりで、1月7日から世界は変わったと思います。イスラム国が全世界に対して「世界暴力革命戦争」を仕掛け始めたわけです。

ただし、イスラム国との対応では、注意しなければならないことがある。

まず今回、後藤さんと湯川さんが拉致されて身代金が要求されました。私のところにもマスコミから、身代金は払うべきか払わないべきか、という電話がかかってきましたが、こういう問題には振り回されないよう注意しなくてはならない。というのも、これは「疑似命題」だからです。

疑似命題とは、例えば「ウサギの角の先は尖っているか、それとも丸いか? 議論してください」みたいなものです。しかし、これは回答できないんですよ。ウサギに角はないですから。

これと同じで、身代金は口では要求していても、実際に要求しているかは別なんです。1月20日に動画が出た時、イスラム国は2億ドルの身代金を要求しました。先生、デパートの一般的な紙袋に1万円札を詰めると、いくら入りますかね?

イスラム国は本気で金を要求してない

鈴木 5000万円がいいところじゃないですか。

佐藤 枚数にすると5000枚。すると、100ドル札を入れたら400袋必要になります。

しかし、100ドル札って世の中に意外と流通してないんですよ。アメリカでは街中のお店で受け取ってもらえませんから。その100ドル札を2億ドル分、72時間で集める。それも新札は連番になってて足がつくから旧札じゃないといけない。つまり、調達は実際問題、不可能なんです。

それに鈴木先生、1億円てどのくらいの重さですか?

鈴木 だいたい1000万円が1kgと思ったらいいですかね。

佐藤 つまり、1億円は10kg、2億ドルは約200億円なので2tもあるんですよ。でも、イスラム国の口座なんてないですから、身代金は銀行送金できない。キャッシュか金塊しかない。ところが金は今、1gだいたい5、6000円。2億ドルだと3、4tにもなります。こんなもん、どこでどうやって渡しますか?

人質事件は身代金の受け渡しのことを考えないとできない。結局、これは受け渡し不能な要求なんです。

鈴木 イスラム国は本気で金なんか要求してないですね。

日本に精通するプロデューサーが?

佐藤 そうです。イスラム国側に交渉する意思はないんです。そもそも、おまえがこう言ってくるなら、こっちはここまで譲る。だから、おまえももっと下りろ、こういうやりとりが交渉なんです。つまり、イスラム国の言っていることは交渉ではなく、最後通牒(つうちょう)。それをのむかのまないかと言ってるだけなんです。

それから、彼らが言っている、いついつまでにという期限。最初は72時間、次は24時間、さらに追加的に24時間、そして日没までと、刻限をいろいろ区切りましたが、正確に守っていない。これも私はイスラム国側に交渉する意思がないとみています。

さらに、認識しなければならないのが、最初の動画が出た1月20日は、安倍首相のイスラエル訪問時で、それも記者会見前に出された。

それから1月24日、27日に静止画像が投稿されたのは、日本時間午後11時台ですよね。日本の新聞の締め切りはだいたい午前1時。午後11時台に情報が流れた場合には、新聞はその情報を追いかけるのが精いっぱいで、これに対する検証、批判、日本政府の反論を十分に掲載できない。

これは明らかに、日本の新聞の締め切り時間をわかった上でやっていることです。

一方、日本の明け方に音声や映像を出したのは、その日一日中、日本の政治家、役人、メディアをこの話題で振り回すことを考えてる。

こういう、日本の事情についてよくわかっているプロデューサーが、イスラム国には明らかにいますね。

*この続きは、発売中の『週刊プレイボーイ』8号でお読みいただけます!

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002 年に国策捜査で逮捕・起訴、2010 年に収監される。現在は2017 年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、埼玉県出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍

■「東京大地塾」とは?毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は2月19日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ。

■週刊プレイボーイ8号(2月9日発売)「鈴木宗男×佐藤優 東京大地塾レポート 第4回 イスラム国解体のために日本は何をするべきか?」より