『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソン の挑発的ニッポン革命計画」を連載中のマルチな異才・モーリー・ロバートソンが語る。

■日本ならマンガ版『24』を!

1月のフランスに続き、デンマークでも連続テロが起きた。日本やアメリカも人質事件に巻き込まれた。残念ながら、これからも世界各地でテロが起きる可能性は高い。それが避けられないとすれば、社会はどうしたらテロに揺さぶられずに踏みとどまれるでしょうか。

僕は半分冗談で“8ビットメディア”と呼んでいるけど、物事を四捨五入して単純に報じるメディアは少なくない。さらに“4ビット落ち”して、すっごく雑な陰謀論を言うメディアもある。それに飛びつく人が一定数いて、ビジネスが成り立っているんだけど、それってテロリストの思うつぼですよ。

そもそもテロは…というか、実は政治も同じなんだけど、プロパガンダのメインターゲットは揺さぶりに弱い層。何かを信じ込ませたいとき、彼らはすごく短絡的なピクチャーをつかませようとする。いろんな歴史的経緯をすっ飛ばして「アメリカがすべて悪い」とか、「とにかくイスラム教は怖い」という単純な結論にたどり着いてしまう人々が、その最たるものです。

14年前の9・11テロの後、多くの人種、民族、宗教を抱え込むアメリカ社会は大揺れに揺れた。多くの人が、玉石混交のあらゆる報道、情報に右往左往した。「ムスリム=テロリストというわけじゃない」という当たり前の事実を、非ムスリムがなんとかのみ込もうとしたその矢先、イスラムコミュニティから新たなテロリストが出現し、またスタート地点に戻される。その繰り返し。

私見ですが、アメリカ社会が立ち直る契機になったのは、大ヒットしたドラマ『24-TWENTY FOUR-』シリーズだと思う。あのドラマには、多くのアメリカ人が見落としがちだった“テロリスト側の言い分”や、彼らが屈折していく背景まで描かれていた。

テロは悪。でも、彼らには彼らなりの理屈がある。ドラマをきっかけに、多くのアメリカ人は世界中の報道をネットで見比べたり、テロの複雑な背景を考えるようになったんです。

8ビット以下に要注意

「イスラム国」のテロも、対処法は同じ。「安倍首相の中東訪問は挑発的だった、あれが人質殺害を招いた」という批判も多いですが、そこに原因を求めても全然意味がない。これを機会に、日本人は「イスラム国」の出現に至るまでの歴史をきちんと知ったほうがいい。

勉強のスタートは、1970年代に始まったレバノン内戦とアフガニスタン紛争。90年代のユーゴスラビア紛争で国際社会が多くのムスリムを見殺しにしたことも21世紀型のテロにつながっている。そういった歴史に一切言及しない専門家や学者は、この問題に関しては信頼できないと思ったほうがいいです。

ただ、ひとつ気をつけてほしいのは、歴史をかじったことで「冷戦時代のアメリカとソ連が全部悪い」という簡単な結論に飛びつかないこと。それは8ビット以下。4ビットです。矛盾して聞こえるかもしれないけれど、歴史を知りつつ、今起きていることも見ないといけない。

今は多くのメディアが8ビット化しているから、報道以外のジャンルから『24』のような作品が出てくるといいんだけど…。日本だったらドラマじゃなくて、マンガがいいかも。誰かがマンガを描いてくれるなら、僕が原作を書きます!

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)1963年生まれ、米ニューヨーク出身。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも、3ヵ月で中退し、米ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン、国際ジャーナリスト、ラジオDJとして活動。現在は『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(Block.FM)などにレギュラー出演中