2月22日に行なわれた辺野古の県民集会。キャンプ・シュワブゲート前の狭いスペースに約2800人も集まり、山城氏の不当逮捕にも抗議の声を上げた

2月22日、沖縄県名護(なご)市辺野古(へのこ)で米軍新基地建設に抗議する県民集会が行なわれた。

事件はその直前に起こった。いつものように市民たちと抗議行動をしていた沖縄平和運動センター議長・山城博治(ひろじ)さんらが米軍によって不当逮捕されたのだ。

この日の朝、米海兵隊キャンプ・シュワブゲート前で、市民たちは県警機動隊、米軍の警察、米軍に雇用された警備員と対峙(たいじ)していた。機動隊の暴力的な振る舞いに抗議の声を一段と強めた市民らを落ち着かせようと、山城さんはゲートを背にする形で彼らを一歩引かせようとした。

そのとき突如、米軍警備員によって山城さんは引き倒され、山城さんの拘束を阻止しようとした男性もろとも基地内へ連れ去られてしまったのだ。(詳細記事はこちら→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/04/44462/)

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さて、個人を狙い撃ちした不当逮捕のその後はどうだったのか?

「私は海兵隊基地内で4時間も拘束されましたが、拘束自体が不当だから尋問は一切受けつけない、早く釈放しろと主張し、そのまま名護署へ身柄を移されました。名護署でも黙秘を続けましたが、弁護士と接見して、名前と住所ぐらい言ってもよいとのことで、そのアドバイスには従いました。

最後に抗弁することはあるかと言われ、『仲間たちを制していたのに後ろからやられたことに抗議する』と告げました。検察では(米軍管理区域の境界を示す)イエローラインを越えていないというのは本当か?と聞かれたので、そこは率直に『後ろ向きで仲間を制したのだから、もしかしたら私自身は少し入ったかもしれない』と言いました。しかし、警察でも検察でも不当逮捕であることへの抗議は行ないました」(山城氏)

この国の主体性は踏みにじられ続ける

山城氏らはキャンプ・シュワブ前にあるイエローライン(写真上部、白線の手前)を越えたとして拘束された。しかし他にもラインを思わず越えてしまった市民は多数おり、逆に最初から山城氏を狙い撃ちしたと考えるのが自然だ

毅然(きぜん)とした姿勢を貫いた山城さんは、23日夕方に那覇地検から名護署へ移送された上で釈放された。仲間たちに迎えられた山城さんは、長時間屈辱を味わわされた人物とは思えない透き通った笑顔を見せた。

インタビューの最後にそのことを告げると「信頼する仲間の元へ帰れたら、誰だって笑顔になるでしょう」と、これまた満面に笑みを浮かべ、もう一度表情を引き締め、こう語った。

「米国の高官が身柄拘束を指示したという点は、これからもしっかり問題にしていきたいと思います」

「全国の若い読者の皆さんにお伝えしたいのも、こうしたことを看過していたら、この国の主体性は外国の軍隊によって踏みにじられ続けますよ、ということです。

そもそも沖縄は、日本であって日本でないような過酷な状況を押しつけられている地域ですが、日本だって主権を無視された、アメリカの一部でしかないではないか、ということを若い皆さんにもっと真剣に考えてもらいたいと思います」

私は東村(ひがしそん)高江(たかえ)における米軍ヘリパッド建設阻止行動の先頭に立ってきた山城さんもよく知っている。横暴な権力に対しては一歩も引かないが、仲間や、もっと言えば、たとえ対峙する警察官や警備員であっても、そのひとりひとりに対しては愛情をもって接する人物である。「カッときやすい性格だけは気をつけなきゃいけないけどね」とちゃめっけたっぷりに話す、人生の先輩なのだ。

新聞、テレビは「沖縄の真実」を伝えているか?

不当逮捕の拘束を解かれ、釈放されたふたりは仲間たちに温かい拍手と喝采で迎えられた

ところで、辺野古新基地建設のための埋め立て予定地とされる海では、このところ重大な事態が進行している。

前知事が退任する直前に許可した区域外で、2tから45t級の巨大なコンクリートブロックによるサンゴ礁破壊が明らかになった。これに対し、防衛省は誠実さのかけらもない対応に終始。このため翁長雄志(おなが・たけし)知事が「許可取り消し」を強く示唆する発言をするようになっているのだ。

だが、安倍政権は沖縄防衛局に民意など無視して作業を強引に続け、既成事実を重ねろといわんばかりの指示を出していることだろう。同時に海上保安庁第11管区にも沖縄県警にも抗議行動を存分に取り締まれとハッパをかけているはずだ。

さらに、ここにきて内閣府沖縄総合事務局に属する北部国道事務所が、ゲート前の抗議行動の拠点となる簡易テントの撤去を勧告してきている。

今、国を挙げて沖縄に襲いかかってきている、というイメージを沖縄県民の多くがますます抱きつつある。

もしそれを伝えない全国メディアがあるとすれば、怠慢のそしりを免れないはずだ。読者諸賢の身近にある新聞、テレビを「沖縄の真実」をどれくらい伝えているか、という観点でぜひチェックしてみていただきたい。

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(取材・文/渡瀬夏彦 撮影/森住 卓 渡瀬夏彦)

■『週刊プレイボーイ』11号(3月2日発売)「基地建設をめぐる沖縄『激動の一日』」より