日本の安全保障法制について話し合う自民と公明による「与党協議会」で20日、新たなガイドラインが合意に至り、関連法案が次期国会で提出される見込みとなった。

安部政権は、昨年7月に自分たちが決めた集団的自衛権の行使に関する閣議決定から大きく舵を切り逸脱しようとしている。

与党協議を踏まえ、日本が直接攻撃された場合(武力攻撃事態)だけでなく、

(1)日本や、密接な関係国への攻撃が発生している場合。(2)武力行使しか方法がない場合。(3)武力行使を最小限にとどめる場合。

という新3要件を満たすケース(これを「新事態」と名づけた)でも自衛隊が出動できるよう、安倍政権は「武力攻撃事態法」を改正する意向だ。

しかし、安全保障に詳しい東京新聞の半田滋論説兼編集委員は、この「新事態」が追加されれば、“自衛”ついて定めた閣議決定との深刻な論理矛盾が起きると心配する。

「『武力攻撃事態法』にはもうひとつ、敵国からの攻撃が予測される『武力攻撃予測事態』という規定があります。これによって自衛隊はすぐには出動できず、準備を整えることしか許されていない。それほど日本は防衛出動を慎重に扱ってきたのです」

しかし「新事態」が盛り込まれると、様相は一変するという。

安倍首相の本当の狙い

「『新事態』では日本への攻撃がなくても、その“存立”が脅かされ、『国民の生命、自由や幸福追求の権利が覆される』と内閣が判断すれば、集団的自衛権が発動されて自衛隊が出動できる。つまり、他国防衛のハードルが自国防衛よりも低くなってしまいかねないのです。これでは自国を守る行為より、アメリカが中東などで身勝手な戦争を起こした時、それに付き合って自衛隊が海外で戦う行為のほうがたやすい、ということになってしまいます」(半田氏)

そもそも、憲法改正という正規の手続きをしないで、時の政権が閣議決定だけで憲法解釈を変えた昨年7月の閣議決定は「憲法で国家権力を縛る」という立憲主義の否定につながりかねない。一部には憲法違反だとする批判もある。

ところが、首相も与党も自らが強引に決めたその閣議決定すら守ろうという気配を見せない…。なぜこんなことになっているのか?

「昨年7月に閣議決定を強行したものの、首相はまだまだ不本意なのでしょう。本当は自衛隊が自由に海外で戦えるよう、盛り込みたかった文言がもっとあったはず。今の政界は安倍一強で、自民党内でさえ首相に逆らえないムードがある。それだけに与党協議では首相の意向を忖度(そんたく)し、満漢全席のように首相の望むすべてのメニューを広げる忠誠心競争が起きているのでは?

その先に待ち受けるのは戦後初の自衛隊員の戦死、数兆円規模の防衛費アップ、そして憲法9条の骨抜きです」(半田氏)

「積極的平和主義」という聞こえのいい言葉で国民をけむに巻く前に、せめて自分で決めたことくらいは首相に守ってもらわないと!