サンゴ礁を埋め立てて島を造り、自国領土とする―そんなウルトラCで南シナ海を制圧しようとしている中国が、次に狙うのはどこか? 

■南シナ海は順調に制圧中。次は……

「1997年、初めて日米防衛協力ガイドラインが改定されたとき、自衛隊が米軍を後方支援する“朝鮮半島有事”への対応策が盛り込まれました。

一方、安倍首相の訪米に合わせて今年4月27日に正式決定した再改定が想定するのは『対中国』。特徴は、自衛隊がまず最前線で戦い、米軍がその後方で支援しながら決定的な反撃を準備する形になっていることです」(軍事ジャーナリスト・古是三春[ふるぜ・みつはる]氏)

4月26日から1週間の日程で組まれた安倍首相、約9年ぶりの公式訪米。日本では米連邦議会での演説が最も話題を呼んだが、もうひとつの焦点は「対中国」をめぐる日米同盟の動きだった。

28日の日米首脳会談後に行なわれた共同会見で、オバマ大統領はこんな内容の発言をしている。

「尖閣諸島には、アメリカが集団的自衛権を行使して日本を防衛する日米安保条約第5条が適用される」

「中国と日本を含む周辺諸国との間で緊張が生じていることを過小評価しない」

昨年後半以降はイスラム国など中東関連の話題に押され、あまり目立った報道はなかったが、中国の強引な「海洋進出」はさらにエスカレートしている。

南シナ海南部に“人工島”を次々と建設

中国は戦略的目標として「列島線」と呼ばれる2本の対米防衛ラインを想定している。中国から見て内側の第一列島線は、九州から沖縄、南シナ海を結ぶ線。ここまでの制海権を確保すれば、軍艦や軍用機は自由に太平洋へ進出できる。今の中国は東シナ海、南シナ海でこれを獲りに来ている段階だ。

「2012年以降、中国は尖閣諸島周辺で執拗(しつよう)に領海侵犯、領空侵犯を繰り返すのと並行して、南シナ海でもベトナムやフィリピンなど周辺国との衝突も辞さず、自国の勢力範囲や海洋権益を強引に拡大させようとしてきた。象徴的なのは、南シナ海南部のサンゴ礁域にある南沙(なんさ)諸島の岩礁を埋め立て、“人工島”を次々と建設していることです」(前出・古是氏)

南沙諸島は周辺各国がそれぞれ領有権を主張している岩礁群だが、なんと中国はそこに問答無用で「島を造る」という荒業に出たのだ! 古是氏が続ける。

「中国はすでに、南シナ海北部の西沙(せいさ)諸島・永興島(えいこうじま)に大型機も発着できる2700m級の滑走路を完成させています。さらに南沙諸島にも飛行場ができれば、周辺国との紛争がエスカレートした際に空軍戦力を前進配備できますし、ベトナムなどが強化させつつある潜水艦への哨戒(しょうかい)活動も可能になります」

つまり、人工島は戦闘機などを発着させるための“不沈空母”になるわけだ。在米の国防戦略コンサルタント・北村淳氏はこう語る。

「人工島の建設により、南シナ海―すなわち第一列島線の南半分で、周辺国の軍隊を展開させない態勢ができれば、中国は海南島(かいなんとう)や本土から人工島へ軍艦、軍用機、輸送船などを頻繁に往来させ、補給ラインを万全な形で維持しようとするでしょう」

そして、その南半分を順調に確保しつつあるなか、次に狙ってくるのは……もちろん北半分。つまり、尖閣諸島や沖縄のある東シナ海だ。

(取材協力/世良光弘 小峯隆生)

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