6月17日、選挙権年齢を20歳から18歳に引き下げる「改正公職選挙法」が国会で可決・成立した。これで来夏の参院選から18歳と19歳の若者が“有権者”の仲間入りを果たすことになる。

なぜ、安倍政権は選挙権年齢を18歳に引き下げたのか? まず“表向きの理由”を押さえておこう。政治評論家の池田和隆氏が解説する。

「昨年6月、憲法改正に必要な手続きとなる国民投票法が改正され、投票権が20歳から18歳に引き下げられました。18歳でも憲法改正の是非を判断する能力はあるということなのに、政治家を選ぶ能力はないんじゃおかしな話になる。単純にそういうことです。“表向き”はね」

つまり、裏の目的もあるというわけか。

「憲法改正は安倍総理の悲願です。それを達成するためには大きな関門がふたつある。

・衆参両院の3分の2以上が賛成すること。 ・国民投票で過半数が賛成すること。

衆院はすでに自民と公明で3分の2以上を確保している。残りは参院です。来夏の参院選で、改憲賛成勢力を3分の2以上にしたいわけです。

安倍総理は、憲法9条の改正には消極的な公明党抜きでも、改憲に積極的な維新の党と合わせて3分の2を超えればいいと本音では思っているはずです。だからこの前も橋下(大阪市長、維新の党最高顧問)さんと会談したんです」(池田氏)

では、ここで選挙権を18歳に引き下げる意図は?

選挙権を18歳に引き下げる意図

「近年、どこの国でも若年層は右傾化しやすくなっている。とにかく変化を求める傾向にあります。日本でもネトウヨ層の多くは若い世代ですから。集団的自衛権の行使容認を含む安保法案の改正に反対するシニア層の票を失っても、若年層の票でカバーできるとの皮算用があるんですね。もちろん、憲法改正のための国民投票を18歳まで下げたのも、変化を求める若年層の有権者数を拡大すれば有利になるとの目論見があったわけですが」(池田氏)

しかし、そんなに単純な話なのだろうか? 要は、安倍政権は若年層に対して「若者はとにかく変化を求めるでしょ。中国や韓国のしつこい反日行動を煽れば右傾化して安倍サポーターになってくれないかな」とでも考えているってこと? だとすれば、自国の若者をバカにしすぎじゃない?

これに対し、文部科学省のキャリア官僚、A氏は、そううまくはいかないと言う。

「今回の“18歳選挙権”をきっかけに、全国の高校では政治や選挙に関する特別授業が多く行なわれているし、今後はもっと増えるでしょう。

ここで重要なのは、教師の多くは今も“左寄り”の思想を持っているということです。教室では安保法案が違憲だとか、憲法改正は危険だという授業を展開している教師も多いと聞いています。もちろん生徒たちが100%教師たちからの影響を受けるわけではありませんが、これだけ見ても今後、安倍政権の皮算用通りにはいかないと思いますね」

結局、若者がみんな右傾化するわけがないし、教師の影響も受けたり受けなかったりする。要は、安易に世代でひとくくりにしても思惑どおりにはならないってことだ。