鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」。
今回のテーマは、安保法制の行方と安倍政権が導入を目指す徴兵制へのシナリオだ。
***
鈴木 今日も佐藤さんに日本国内外の情勢分析をしていただこうと思います。
佐藤 まず先日、面白いと思ったのが郵貯の預け入れ限度額の変更です。今まで1千万円だったのを3千万円にするという提言案が自民党総務会で了承されたんですよ。
これは安倍政権が株価維持のため株式市場に突っ込んでいた年金基金のタネ銭が切れたんですね。そこで今度は郵貯から金を引っ張ってこようとした。ところが1千万円では足りないから、限度額を3千万円に引き上げて金を集めようとしている。
郵貯は日本国政府による政府保証がありますから全額担保される。3千万円はすぐに集まります。さらに日本郵政、ゆうちょ銀行、簡保が10月に株式上場しますから株価も上がる。
これで来年の参議院選挙までインフレが進むので、国の債務は減り、景気は上向きます。もし、ゆうちょの預金に何かあれば、国民の税金から補填(ほてん)すればいい。今回、安倍政権は経済的にはこんな大技を持ってきました。
前回の大地塾で説明したように今、日本外交は杉山晋輔外務審議官が次官に出世したいという野望を持っているため、アメリカにもロシアにもいい顔を見せ、コロコロと政策が変わっています。このように今の日本外交はばくちみたいなものですが、今回の郵貯の件で日本経済も完璧にばくちの世界になりました。
鈴木 佐藤さん、国会の安保法制はどう動くとみていますか?
佐藤 日露関係と同じで、安保論議もどんな法律が成立しても実際には何も動かないと思います。
「自衛隊の入隊希望者はぐっと減る」
鈴木 どういうことですか?
佐藤 法案が成立し、いざ自衛隊が海外に出ていくとなった時に、いくら官僚が「国会で細かく説明しております」と言っても国民は誰もが「ふざけるな!」と言って納得しないでしょう。
「地球の裏側まで自衛隊を出したいんだったら安保条約を改正しなさい」「戦争したいんだったら憲法9条を改正しなさい」。こういうことをきちんとやって法的に問題がないとならないと自衛隊は出せないですよ。
この前、選挙権年齢を18歳に下げましたよね? それは若い人たちが保守化しているから自民党にプラスだと思っているんです。しかし、安保法制が改定されて、地球の裏側や中東とか「日本を守るのに本当に関係あるの?」と納得できないような場所に行かされる、命を失うということになったら自衛隊の入隊希望者はぐっと減ると思います。
そうした時にどういうことになるか? 徴兵制です。「そんなことは絶対にない」と、みんな言ってますよね?
鈴木 よく聞きますね。
佐藤 日本国憲法における国民の義務は「勤労」「納税」「教育を受けさせる」です。立憲主義の立場を取れば、それ以外は義務として課すことはできません。しかし、裁判員制度ができました。それに行かないと罰せられる。いきなり国は裁判員の義務を押しつけてきた(義務の免除が認められる場合もある)。
裁判は「受ける権利」はあります。裁判なしには有罪にされない。鈴木先生と私は、その権利を享受しました(笑)。そこに裁判に行く義務を課してきた。すると、裁判員の次は「大災害が発生した時に、助けに行く要員の徴用令があったらいいね」となります。これは大多数が賛成すると思います。
その先から国を守るための徴兵制度へは、そんな距離はないと思います。
●この続き、後編は明日配信予定です!
(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)
●鈴木宗男(すずき・むねお) 1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監される。現在は2017年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!
●佐藤優(さとう・まさる) 1960年生まれ、埼玉県出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍
●「東京大地塾」とは? 毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は7月30日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ