佐藤優氏(左)は「沖縄では今までの常識では考えられないようなことが発生する」と鈴木宗男氏に語る

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」

今回のテーマは、中国を脅かす第2イスラム国の成立、そして沖縄問題の解決策だ。

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鈴木 佐藤さんが今、注目されている話題はなんですか?

佐藤 安倍首相が8月に発表する予定の戦後70年談話です。6月23日の東京新聞の報道では、70年談話は閣議決定が見送られ、首相個人の話となりました。総理談話ではなく「総理“の”談話」になった。“の”が入ると公的性はない。

朝日新聞は「だったらやめたらいいんじゃないの?」と書いていますが、それでもやるというのはどういうことか。

この「総理の談話」は、国内的には公的、対外的には私的と二面的な使い方をしようとしています。ここにも外務省の影が見えます。その場しのぎでごまかすという卑劣なやり方です。

安倍首相は、村山談話が気に入らなければ、閣議決定してその談話を覆(くつがえ)せばいいんですよ。

鈴木 外務省は安保法制だけでなく、ここでも動いているということですね。

佐藤 そうです。外務省以外にも怪しい動きを見せている人たちがいます。

鈴木 それは誰ですか?

佐藤 「イスラム国」です。先生、最近、CNNの中央アジア関係の情報が面白いんですよ。

鈴木 どう面白いんですか?

佐藤 アメリカの対テロの専門家たちはタジキスタン、キルギス、新疆ウイグル自治区からカザフスタン東部にわたって「第2イスラム国」ができる可能性があるとみています。

ここ、タジキスタン辺りに第2イスラム国ができるのがなぜ重要かというと、世界の安定と中国の安全保障に関わるからです。中国が南シナ海、尖閣諸島で挑発行為ができるのは、陸地のほうは大丈夫だとの前提があるからです。この前提が崩れれば、日本は中国と協議すれば、尖閣での挑発は止まるでしょう。だから、外務省がここに目が向いているのか非常に気になります。

沖縄では日本軍に対する拒否反応は米軍より強い

佐藤 それと先日、沖縄関係でいい本が出ました。高橋哲哉さんが書いた『沖縄の米軍基地「県外移設」を考える』(集英社新書)です。

これは沖縄問題を解決するカギは、鈴木先生が昔やった沖縄駐留海兵隊の「県道越え155㎜榴弾砲(りゅうだんほう)の射撃演習」を北海道の矢臼別(やうすべつ)演習場で引き受けた考え方にある、すなわち、沖縄にある米軍基地を沖縄以外の日本各地で引き受けるしかない、というものです。

サンフランシスコ平和条約締結時に日本の本土と沖縄の基地比率はどれくらいだったと思います? 本土が9で沖縄は1だったんです。それが5対5になり、今では1対3です。これは50年代、60年代の反基地闘争で米軍が本土にいづらくなったから沖縄に移っていかざるを得なかった。当時の沖縄はアメリカの占領下だったから移りやすかったんです。

今、辺野古沖新基地建設は手詰まりです。だから緊急避難的に短期間、嘉手納基地との統合とか下地島(しもじしま)を使えないかとの案が出てきていましたが、今は無理。沖縄県内のどこにも持っていけない。普天間が閉じ、辺野古もダメとなると沖縄に海兵隊基地はなくなるし、海兵隊は出ていけという話になります。

そうなると、次は抑止力の問題が出てきます。日本の左翼は「抑止力は幻想だ、中国と話し合えば解決する」と言ってますが、翁長雄志(おなが・たけし)知事は抑止力は必要だし重要だと考える保守派です。

海兵隊が出ていくけど抑止力は必要だとなると、本土の考え方だと自衛隊増強という話になる。ところが、沖縄では日本軍に対する拒否反応は米軍より強いくらいだから自衛隊にも拒絶反応がある。

そこで解決策として「沖縄防衛隊」を設立するのです。要するに、沖縄県の枠で地方公務員として自衛官を採用し、沖縄県内しか異動しないようにする。この部隊はサトウキビの刈り入れや農作業の手伝い、台風などの災害対策にも使えますから沖縄県民の理解は得られます。

この沖縄防衛隊を約2万人規模でつくる。人口142万人の沖縄に2万人は大きい。今、自衛隊が駐留する所は住民票も移るから、選挙で自衛隊票が議席を左右するけど、沖縄防衛隊は沖縄の中で人を動かしていくからそういうこともなくなるし、軋轢(あつれき)も少なくなるでしょう。

これから、沖縄では今までの常識では考えられないようなことが発生すると思います。

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監される。現在は2017年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、埼玉県出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍

●「東京大地塾」とは?毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は7月30日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ