国際コラムニスト・加藤嘉一の本誌連載コラム「逆に教えて!」。今回は…。

*** 日中関係のみならず、「米中関係」がしばしば話題に上る昨今。一般のアメリカ人にとって、実際のところ「中国」とはどんな存在なのでしょうか。

先日、日本に住む知人からこんな質問を受けました。

「アメリカ人は、中国や中国人をどう見ているのか?」

多くの日本人にとって気になるテーマでしょう。個人的にも、アメリカに拠点を移してから約3年の間、実際に住んだ東海岸のボストンやワシントンだけでなく陽気な雰囲気の西海岸、黒人やヒスパニックが多い南部など全米各地を回り、中国・中国人という存在について考えてきました。

日本では、隣国であり、文化的に近く、それでいて歴史問題を抱える中国は常に“気になる存在”。外交・安全保障から一般人の爆買いに至るまで「中国は○○だ」「中国人は△△だ」という議論がしばしば巻き起こります。

一方、アメリカの一般社会で中国人に対して敏感になっている人はほとんどいないように見えます。物理的な距離の遠さもあるでしょうが、それ以上に重要なのは、日本の閉ざされた社会とアメリカの開かれた移民社会の差ではないかとぼくは考えています。

2010年の国勢調査によれば、在米アジア人は10年前の約1.5倍に増え、およそ1470万人。そのうち25.8%、約380万人が中国系です(ちなみに、日本の中国系住民は70万から80万人)。ぼくが知るかぎり、多くは現地社会に大胆に浸透し、日本のように奇異の目に晒(さら)されることもなく生活しています。

その象徴が全米各地に点在するチャイナタウンでしょう。どこからどう見ても「中国」にしか見えない独立した地域なのに非中国系の現地住民も自然に足を踏み入れ、日常的に活用している。こうした“グレーゾーン”の奥深さは移民国家アメリカの多様性のなせるわざでしょう。

ただし、中国が国際社会で急激に台頭し、世界のパワーバランスを変化させつつあるのは事実。アメリカでも、政治レベルや学術レベルでは中国というトピックの重要性や敏感性が増しています。

5つの分類からみえる日米の違い

そこで今回は、ぼくが以前『ニューヨーク・タイムズ中国語版』に寄稿した「日本人の対中観」というコラムで使用した、“5つのプレイヤー”の分類をアメリカ人に当てはめ、「アメリカ人の対中観」を考えてみたいと思います。

【1】一般大衆…ほぼ関心なし。個人レベルで「中国人の流入で職を奪われた」というケースはあるが、今のところ「中国」が社会現象にはなっていない。

【2】知識人…この分野を専門とする学者やジャーナリストは中国の台頭を歓迎しており、その数は増える一方。もし中国共産党支配が崩れれば、失業する知識人も出てくるのではないか。

【3】大学生・若者エリート…中国の経済発展、渡米する中国人の増加はアメリカの若者にとってもチャンス。大学で中国語を学ぶ学生も多く、将来の進路、就職先という観点で中国という存在をとらえる傾向にある。

【4】ビジネスマン…「アリババ」のジャック・マーをはじめ、急成長する中国企業への注目や期待は大きい。米企業内で働く中国人も多く、中国資本による米国内の不動産売買も盛ん。ビジネスマンはいかにチャイナマネーを獲得するか躍起になっている。

【5】政治家…中国に対する姿勢が政治家としてのカギを握る状況が増えてきた。政党や地域によってスタンスは様々で、例えば中国系住民の多い西海岸では中国への配慮が求められ、逆に保守的な地域なら厳しい姿勢が歓迎される場合もある。

こうしてみると、日米の唯一にして最大の違いは【1】なのかもしれません。中国人動向・中国現象に一喜一憂する日本人。それらに特別な関心を抱かないアメリカ人。この対中観をめぐる国民的ギャップが日中関係にどんな影響を及ぼしていくのかーー逆に教えて!!

●加藤嘉一(KATO YOSHIKAZU) 日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。ハーバード大学フェローを経て、現在はジョンスホプキンス大学高等国際関係大学院客員研究員。最新刊は『たった独りの外交録 中国・アメリカの狭間で、日本人として生きる』(晶文社)。中国のいまと未来を考える「加藤嘉一中国研究会」が活動中!