7月16日、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案(以下、安保法案)が衆院を通過した。
この後は参院での審議となるが、もしそこで否決されたとしても、あるいは採決がされないまま60日を越えたとしても、再び衆院に戻されて3分の2以上が賛成すれば結局、法案は成立する。
もう諦めるしかないのか? 今からでも何かできることはないのだろうか?
■永田町での50万人よりも地元の50人のほうが怖い
安倍政権は安保法案成立に向けて“数の論理”で突っ走っているが、現在の与党の議席数は国民が集団的自衛権の行使に賛成したから与えたわけではない。
安倍政権は前回の総選挙で消費税率UPの時期を1年半遅らせることの是非を争点として戦っただけで、安保法案の改正を掲げて民意を問うたわけではないからだ。
安保法案は消費税率引き上げ時期の変更とは比べ物にならないほど重い内容だ。それなのに選挙も経ずに、圧倒的な議席数で押し切る状況に有権者は指をくわえて見ているしかないのだろうか?
「そんなことはありません。今からでも安保法案を覆(くつがえ)す方法はあります」
そう力強く語ってくれるのは、農林水産大臣秘書官を務めた経歴を持つ政治評論家、池田和隆氏だ。
「純粋な気持ちを持って安保法案反対のデモに参加している方たちには申し訳ありませんが、国会前で何千人、何万人の人が騒いでも結果は変わりません。1960年の安保闘争の時だって、何十万人もの人々が国会を取り囲みましたが、結局、日米安保は更新されました。
これほど多くの人が反対していても政治家たちの行動が変わらない原因は、デモや集会の“場所”と“名目”が効果的ではなかったからなのです」(池田氏)
議員たちはデモを「うるさいなあと笑っているだけ」
どういうこと?
「国会議員にとって、この世で最も重要なことは選挙に当選することです。安保法案や増税法案や憲法改正といった国家級の政治案件よりも、自分の議員生活のほうが圧倒的に大切なのです。だから選挙に関係ない名目で数多くの人が永田町に集まっても、彼らは痛くもかゆくもない。うるさいなあと笑っているだけです。
逆に、自分の地元で選挙に関する“名目”で集会があったら、それは気になってしょうがない。永田町の50万人デモよりSNSなどを使って地元の公園に自分を批判する50人が集まるほうがはるかに恐ろしいのです」(池田氏)
ということは、これから安保法案の審議を始める参院の議員たちに対して、来年7月の選挙が不安になるようなプレッシャーをかけられたら、それが安倍政権の暴走を止める重要な第一歩になるということかーー。
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(取材・文/菅沼 慶)
■週刊プレイボーイ30号(7月21日発売)より