「僕の人の悪さとか、頭のおかしさとか、まだ永田町はわかっていないんだなと…」

悪びれもせず、こう言い放った男に政界がまたもや引っかき回されている。大阪都構想否決で“死に体”だったはずのこの男は今、何を見据えているのだろうか?

■「死んだはずの橋下がなんでよみがえってるんだ!」

橋下徹大阪市長の頭の中は一体どうなっているのか?

8月27日に維新の党からの離党を表明した時には、「旧大阪維新系の議員などを連れて出て党を割るようなことはしない」と断言していたにもかかわらず、翌28日にはあっさりと前言を撤回。「10月をメドに、国政新党を立ち上げる」と一日でちゃぶ台をひっくり返すのだから、この人についていくのは大変だ。

その言い草もすさまじい。悪びれた様子も見せず、こう言い放ったという。

「(僕が言ったのは)今は割りませんということ。『今は』ですよ。いやあ~、僕はそんなに人はよくありませんからね。僕の人の悪さとか、頭のおかしさとか、まだ永田町はわかっていないんだなと…」

これには全国紙の政治部記者もこう呆れる。

「立候補は2万%ないと否定しておいて、いざとなると出馬した2008年の府知事選といい、関西電力の大飯(おおい)原発再稼働に反対を叫びながら再稼働容認に転じたことといい、橋下市長の前言撤回は今に始まったことではない。ただ、政治家にとって言葉は命。その意味で彼の言葉はあまりに軽い、軽すぎるというほかありません

だが、橋下市長を長く取材する地方紙の大阪市政担当記者の見立ては少し違う。

「私も最初は橋下さんの言葉にはウソが多いなと感じていました。しかし、長く取材している間に考えが変わった。おそらく彼自身はウソをついているつもりはないんでしょう。その瞬間その瞬間に思ったことを正直に口にしているだけなんです。

普通の政治家は、政治信条に基づいて喋るから自分の発言に縛られるが、橋下さんは絶対に縛られない。発言した瞬間が本当ならば、それでOKなんですよ。これまでの永田町の政治家を測るモノサシでは、彼の本質を見ることはできません」

枚方市長選で見えた“したたかさ”

ただし、橋下市長はただの「瞬間正直者」ではない。その正直さは、時に自分の権力や影響力を最大限にするためのツールに過ぎず、どこかどす黒く、したたかなにおいがつきまとうのだ。

そのしたたかさは8月30日投開票の枚方(ひらかた)市長選でも発揮されている。元経済産業省官僚の古賀茂明氏が苦笑する。

「橋下氏の新党構想を受け、朝刊各紙には『維新の党分裂』『大阪維新、国政へ』といった刺激的な見出しが躍りました。しかも、その直後には11月22日に行なわれる大阪府知事と市長のダブル選挙で、再び大阪都構想の是非を問いたいともブチ上げている。

これで注目度の低かった枚方市長選の関心が一気に高まった。維新候補の応援演説に現れた橋下市長の口から離党の真意を聞こうと、大勢の有権者が押し寄せたんです。その結果、それまで大苦戦していた維新候補が2千票差で逆転勝ちすることに。離党宣言で注目を集め、そのエネルギーを枚方市長選に利用した橋下さんの作戦勝ちですね」

橋下市長は今年5月に政界からの引退を表明しているが、前出の政治部記者はこれをいぶかしむ。

「政界引退を決めたら、普通はおとなしくなるもの。ところが橋下さんは、新党立ち上げに大阪都構想の再チャレンジと、返って政治行動を活発化させている。本当に不思議な政治家です」

引退を公言すると、政治家は死に体になるものだが、橋下市長は死に体どころか、物議を醸(かも)すごとにパワーアップし、影響力を強めている。そんな橋下市長の様子から今、永田町ではこんな言葉が飛び交っているという。

「一度は死んだはずの橋下がなんで甦ってるんだ! 彼はゾンビか」

●発売中の『週刊プレイボーイ』38号では、さらに自公と大阪維新が連立、政治家引退の橋下徹が民間人で入閣?の次なる動きまで検証。お読みいただきたい。

(取材・文/本誌ニュース班&ボールルーム)

■週刊プレイボーイ38号(9月7日発売)「ゾンビ政治家・橋下徹の『本性』と『次なる狙い』」より