9月8日に告示された自民党総裁選は、「14年ぶりの無投票再選」により安倍首相の不戦勝で幕を閉じた。

実は、この無投票再選の陰で大きな存在感を示した政治家がいる。“自民党の裏番長”ともいわれる二階俊博自民党総務会長だ。ジャーナリストの須田慎一郎(すだしんいちろう)氏が言う。

「安倍首相の無投票再選の流れを決定づけた最大の功労者は間違いなく二階さんです。彼は8月9日に行なわれた派閥の研修会で、いち早く安倍首相の支持を表明。その直後に自民党の7つの派閥すべてが再選支持を打ち出しました」

自民党の国会議員は衆参合わせて400人余り。7つの派閥に所属する議員は全体の7割超だ。仮に野田聖子氏が出馬できても、安倍首相の再選は揺るぎないものになった。

だが、二階派は衆参合わせて34人で自民党内では5番目の派閥だ。なぜ二階氏はそこまで強い影響力を持っているのだろうか? 政治ジャーナリストの有馬晴海(はるみ)氏がこう解説する。

「二階さんの言動を理解するためには、彼の役職である『総務会長』という立場について知るべき。党のすべての方針、政策は総務会の同意がないと通りません。総務会の決定とは、すなわち自民党の総意。二階さんはそれほどの重責を安倍政権で担っています」

二階氏は総務会で、こんなエピソードを残している。

「安倍首相が進めている安保法制について、総務会では反対論が出ました。しかし、二階さんは『反対するならここから出ていけ』と言い放った。反対者が退室すれば、全会一致の賛成が担保されます。

結局、村上誠一郎衆院議員だけが退室しましたが、他の議員は異論を我慢せざるを得なかった。安倍首相が国会で安保法制の審議をやれるのは、党内で二階さんがにらみを利かせ、異論を押さえ込んでいるからです」(全国紙政治部記者)

下手に出るから逆にすごみを感じる

ここまで聞くと強権の政治家という印象だが…実は人徳はかなり厚いらしい。

「派閥を維持するためには、トップが下に金を配ったり、党内でのポストを与えたりしないといけない。二階さんはポストを与えられる地位にいるし、建設業界、土木業界をバックとした集金力もある。政党助成金に頼らなくてもやっていけるから、党内での発言力もあるんです。今の派閥の領袖(りょうしゅう)でこんなことができるのは二階さんだけだと思いますね」

さらに永田町で評判を聞くと意外な一面も見えてきた。

「二階さんは決して威張らない。議員は誰であろうが『先生』と呼ぶ。悪代官顔とダミ声のせいでダーティなイメージを抱かれがちだけど、そんな派閥領袖が下手に出るから、逆にみんな凄味(すごみ)を感じるんです」(自民党関係者)

総務会長という役職による権力と、絶妙の人心掌握術。そのふたつをあわせ持った二階氏がいることで、異論を許さない自民党内での安倍独裁体制が盤石だということか…。

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(取材・文/畠山理仁)

週刊プレイボーイ39・40合併号(9月14日発売)「安倍政権の裏ボス『二階俊博』大研究」より