米・オバマ大統領との首脳会談も終え、表面的には融和の歩み寄りを演出した印象を与えた中国。

だがそれ以前に、習近平政権が威信をかけて開催した9月3日の「抗日戦争勝利70 周年記念軍事パレード」では、ド派手な兵器の行進だけでなく、習主席の演説内容も注目を集めた。

そこに見え隠れする裏の意味こそ習主席の本音というわけだ。特に注目されたのは、以下の部分。

<忠実に世界平和を守るという神聖な使命を遂行しなければならない。私は宣言する。中国は今後、軍の人員を30万人削減する>

これだけ大規模な軍事パレードをやりながら、「軍の人員削減」とはどういうわけか? 中国が対外的に進めてきた強硬路線がこれから少しずつ変化していくのだろうか?

中国軍の事情に詳しい軍事ジャーナリストの古是三春(ふるぜみつはる)氏はこう分析する。

「中国は過去にも2度、大幅な兵力削減を実行しましたが、いずれも狙いは人的コストを削減し、新兵器の開発・購入費を生み出すことでした。今回も本質は軍の“精強化”であって、特に空軍や海軍、第二砲兵軍はこの動きを歓迎しているでしょう。

それに加えて、今回は習指導部による『反腐敗闘争』の一環という側面も強い。軍関連の貿易、資源開発、製品生産・販売などの利権に絡む関係者を軍籍から外すことで、腐敗の温床を断ち切る狙いがあるとみられます」

対外的に軍縮イメージを演出しつつ軍を近代化し、さらに粛清(しゅくせい)を進めて軍の実権掌握を図るという“一石三鳥”を狙っているわけだ。

次に気になるのは、演説の以下の部分。

<中国は永遠に覇権を唱えない。領土を拡張しようとはしない。自らがかつて経験した悲惨な境遇をほかの民族に押しつけたりはしない>

南シナ海や東シナ海での横暴な振る舞いとは、まるで逆のことをわざわざ言った理由はなんなのか?

「『覇権』というのは中国共産党の独特のレトリック。意訳すると『自分の領土以外は野心を持たない』となりますが、そもそも彼らは尖閣諸島や南シナ海の島々を自国領土だと主張している。要するにあの演説は単なる詭弁(きべん)で、まったく意味はありません。

むしろ気になるのは、今回のパレードで偵察型、自爆型、対地ミサイル搭載型など各種のドローン(無人機)が披露されたことです。中国は2022年頃までに4万2千機のドローン戦力を整備するとしており、これが尖閣や南シナ海での“主権維持活動”に大量投入される可能性は高いでしょう」(古是氏)

結局、中国が強硬路線を変える気はまったくなさそうだ。

(構成/小峯隆生 世良光弘)

週刊プレイボーイ39・40号習近平チャイナ『抗日軍事パレード』ハリボテだらけの舞台裏」より