予想通り、小幅の改造に終わった第3次安倍改造内閣。一見、手堅く映る今回の改造だが、内紛につながりかねないリスクが見え隠れする。
今回の組閣リストを見て、ジャーナリストの川村晃司氏はこう感想を語る。
「よく言えば手堅い、悪く言えば面白みに欠ける改造でした。第2次安倍内閣は無難に仕事をやり遂げた。その陣容をいじりすぎて、せっかくうまくいっている今の状態を壊したくない。そんな首相の思いがにじんでいます」
大臣に起用されるのは首相と思想が近いタカ派のお友達か女性議員ばかり。そのため、待機組からは『大臣になりたければ、ネトウヨになるか、スカートをはくしかない』との皮肉も飛び出るほど」(官邸担当記者)とか。
とはいえ、目玉人事がなかったわけではない。加藤勝信一億総活躍相(59歳)、丸川珠代環境相(44歳)、河野太郎行革担当相(52歳)といった人事はプチサプライズだった。
「今回の改造の目玉は一億総活躍大臣。アベノミクス第2ステージを支える新3本の矢を実現する新設大臣です。首相はそのポストに側近の加藤勝信前官房副長官を当てた。一見、お友達人事のように映るが、ここには別の意図も見え隠れします。
それは派閥を立ち上げたばかりの石破茂地方創生相への牽制(けんせい)。GDP600兆円達成や希望出生率1.8の実現など地方創生相と一億総活躍相の仕事は重なる政策メニューが多い。
おそらく、石破、加藤両大臣は歩調を合わせて仕事をすることになる。首相は次期総裁候補の石破さんが独自の動きをして存在感を高めないよう、側近の加藤さんをお目つけ役として、このポストに起用したフシがあります」(川村氏)
では、河野太郎行革担相についてはどうか。
「一種の異論封じでしょう。脱原発を主張するなど、とかく安倍政権の政策に異を唱えてきた河野さんは、党では行革推進本部長として改革を手がけてきた。だったら、うるさ型の河野さんを閣内に取り込み、行革をやらせてみようということ。閣僚になれば、内閣一致が原則ですから、河野さんも異論は吐けない。その分、政権は波風が立たないというわけです」
丸川さんの失言癖も不安の種
だが、これらの目玉人事にはリスクもつきまとう。政治評論家の有馬晴海氏がこう心配する。
「丸川さんはわずか参院2期で大臣になる。これは新入社員がいきなり役員になるようなもの。首相は丸川さんをかわいがっているだけに、これでは党内から『またお友達人事か』と、不満が出ても仕方ない。しかも丸川さんは、鳩山元首相を『ルーピー(愚か者)』とヤジったように自由奔放。大臣答弁で失言して野党から追及されるハメになるのではと、今から危ぶむ声しきりです」
同じリスクは河野行革相についても言えるという。
「河野さんの存在は諸刃(もろは)の剣になる恐れがあります。原発再稼働や行革で自民党内がごたついた時、河野大臣が政権批判に回る可能性はゼロではありません」(前出・川村氏)
人気者の小泉進次郎前復興大臣政務官を閣内に取り込もうとしたものの、進次郎サイドから色よい返事をもらえなかったという話も聞こえてくるが、その一方で自民党には大臣ポストの待機組が70名近くもおり、キャリアを積んだのに選ばれなかった彼らの恨みつらみも見逃せない。
一見、手堅く映る今回の内閣改造だが、内紛につながりかねないリスクがあちこちに潜んでいるのだ。政治評論家の浅川博忠氏もこう言う。
「大臣ポスト待ちの議員の不満は根強い。今は安倍一強が続いているので、表立って批判はしない。しかし、政権が下り坂になった途端、一気に安倍降ろしに動くかもしれない。70名近い中堅議員が反旗を翻せば、安倍首相とて安泰ではありません」
果たしてこの内閣改造、安倍首相にとって吉と出るのか、凶と出るのか? さらに詳細は発売中の『週刊プレイボーイ』43号にてお読みいただきたい。