TPP「大筋合意」を受け、安倍政権が大ハシャギだ。安倍首相も「TPPは国家百年の計。これで私たちの生活は豊かになる」(10月6日会見)と喜びを隠さない。

しかし、アトランタでの閣僚会議を現地取材したPARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子事務局長はこう首をふる。

「政府は『大筋合意した』と言いますが、実情は12カ国共通のテキストも公表されていない段階で、決まっていないことも多い。しかも、アメリカではヒラリー・クリントン前国務長官に加え、共和党のハッチ上院財政委員長までもがTPP反対を表明しました。

つまり、アメリカも含め、どの国もまだTPPの中身を議論している最中なんです。なのに、安倍政権はあたかもほぼ交渉が妥結したかのように宣伝しています。これでは『オレオレ詐欺』ならぬ『合意したした詐欺』ですよ」

確かに今回の「大筋合意」ではっきりしていることは、日本が農産品と工業品の全9018品目のうち8575品目の関税撤廃を強いられたということくらい。その他の知的財産権、労働規制、金融、医療サービスなど非関税障壁パートの交渉がどう決着したかについてはまったく明らかになっていない。これでは「合意したした詐欺」との批判が上がるのも当然だ。

では安倍政権はなぜ詐欺呼ばわりされてまで、「大筋合意」というフレーズの大宣伝に余念がないのか?

その疑問に前出の内田事務局長がこう答える。

「安倍政権が大筋合意を強調するのは、関税撤廃による農業保護を名目にTPP対策費などを農家にばらまいてTPP推進で離れた農家の票を取り戻し、来年夏の参院選での勝利を確実なものにしようともくろんでいるからだと思います」

今回の「大筋合意」で日本の農業生産は大きなダメージを受ける。コメ、酪農、牛・豚肉、果実だけで1兆1380億円も減るという試算もあるほどだ。

それにもかかわらず、安倍政権が来夏の参院選に勝ちたいがためにTPPの「大筋合意」を急いだのだとしたら、それは亡国交渉と批判されても仕方ないのでは?