テロに狙われやすい日本、破裂寸前の中東情勢をに対して宗男(左)・佐藤(右)両氏の見解は?

鈴木宗男・新党大地代表と、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による対談講演会「東京大地塾」。

前編(「フランスではまたテロが起こる? 心の空白を埋めることができない世界のイスラム化 」)に続き、今回は追い詰められたイスラム国と今後の中東を分析。

■フランスと日本は国民性が似ているのでテロに狙われやすい

佐藤 ただし、今起こっているテロは「イスラム国」が追い詰められているからとみるのが正しい。その原因はロシアの空爆と、地上ではイランのイスラム革命防衛隊による皆殺し作戦です。

イラクで正規軍が「イスラム国」から拠点を奪還したという報道がありますが、あれはイラク軍の制服を着たイラン革命防衛隊の将兵たちです。そしてこの攻撃に「イスラム国」は相当参っている。このままでは拠点を維持できないし、攻撃をやめさせないといけない。そのためには弱い所を狙おうということで、まず10月31日にロシアの飛行機を爆破した。

この狙いはロシアではなくエジプトです。エジプトは観光に依存しているから、民間航空機を爆破することで観光客をエジプトから遠ざけ、経済的に疲弊させることを狙ったんです。

次に狙われたのが、日本ではほとんど報道されてないけれども、11月12日にレバノンの首都ベイルートでイランに近いシーア派の人たちが被害に遭った爆弾テロ。これも、イランには勝てないけれどもシーア派は皆殺しにしてやるということでしょう。

そして一番弱いと狙われたのがフランス。

「イスラム国」はその革命手法をレーニンから学んでいます。レーニンは「帝国主義は、世界的なネットワークの鎖で結び合っている」と考え、「その鎖をギュッと引っ張れば、一番弱い部分から切れる」と考えていた。

当時、レーニンはその脆弱性がロシアにあるとして、共産主義革命をロシアから起こしたんです。そして「イスラム国」は西側の中で一番脆弱で、引っ張ったらギュッと切れるのはフランスだということで11月13日のテロを起こした。

なぜフランスは弱いのか? ドイツやイギリスは「よそ者は出ていけ!」と平気でできるけれども、フランスはフランス語を覚え、フランス的な原理を受け入れるならフランス人と認める理念国家。移民の拒否は難しいし、個人主義の国でもある。その脆弱性を狙われた。

そして同じような危険は日本にもあります。「イスラム国」はフランスには空爆をやめろと要求しましたが、日本にはテロ対策のための経済支援をやめろと要求してくるでしょう。

ただし、日本の警察は優秀なので、日本で爆弾テロをやるのは難しい。しかし、6月に高齢者が新幹線で焼身自殺しましたよね。それと同じようなことをされたら防げないし、もしかすると在来線でやるかもしれない。

実際にテロに遭遇するリスクは、工事現場を通ってコンクリート片が落ちて当たって死ぬのと同じくらいの低い確率でしょう。

しかし、報道されれば体感としてのリスクは大きくなる。その時、「イスラム国」から「日本は対テロ支援から手を引け。イスラムの地から手を引け」との要求が来たら、政府は、日本国民はどんな対応をするか?

そこで日本が言うことを聞けば、日本はテロ多発地帯になるし、世界で似たようなテロも発生するでしょう。だから政府は毅然(きぜん)たる対応をしないといけない。ただ問題は、その場合、政府を国民がどれくらい信用するかです。

日本国民は、余計なことには関わりたくないというフシがある。その点はフランス人の対応と似ている。そういう意味で、日本はテロが起きた時は怖い事態になりやすいし、それゆえテロが起きやすいと言えます。

破裂寸前の中東から第3次大戦の火蓋が?

鈴木 中東はこれからどのようになっていくんでしょうか?

佐藤 中東の主要なプレイヤーはトルコ、イラン、サウジアラビア、エジプト、イスラエルの5ヵ国ですが、これらの国が、問題ごとに組み合せが変わるのが厄介なんです。

例えば、「イスラム国」問題。トルコは「イスラム国」の存続を望んでますが、イラン、サウジ、エジプト、イスラエルは抹殺しないとダメだと考えている。一方、イランの核開発に関しては、トルコ、サウジ、イスラエル、エジプトはとんでもないと拒絶して、イランだけ孤立しています。

パレスチナ問題だとイスラエルだけが孤立するし、シリアのアサド政権に関しては、イランとイスラエルは復権させたいが、トルコは排除したい、サウジとエジプトはどうでもいい…。このようにいろんな問題で敵味方が入り乱れる組み合わせになっており、動きが複雑なので、中東情勢は分析が困難になっているんです。

鈴木 困難ですが、佐藤さん的にはどう分析しますか?

佐藤 シリアはアサド政権と「イスラム国」とアルカイダ系がとりあえずバランスを保ってますが、「イスラム国」が崩れて分解が進むと、さらにバラバラになり、最後はマフィアと国際資本によって支配されるようになるかもしれないですね。

イラクは、アメリカがフセインを倒して民主主義にしようとしたら、人口の多いシーア派の国家になった。そしてシーア派はスンニ派をいじめ抜き、それが「イスラム国」が出てくる土壌になった。もはやシリアもイラクも国家としての統合を回復することはないでしょう。

そんな中で、アメリカは中東でのパートナーをサウジからイランに変えようとしている。これまでのようにイランを敵視するどころか、むしろ中東に対してはイランを通して間接的に影響力を行使していこうと思っている。

そうなると、一番怒るのがイスラエルです。これも日本ではほとんど報道されていませんが、11月20日にアメリカは、イスラエルに秘密情報を流していた罪で1985年に逮捕した元米海軍大尉で、情報将校だったジョナサン・ポラードを釈放しました。ポラードに関してはイスラエルが釈放を何度も要求してたのにアメリカが頑として認めず終身刑にしていたんです。

それをここにきて釈放したのは、イランに対して譲歩したいから、イスラエルからの無理筋の話でも丸のみにして許しを乞うている、一種の土下座外交ということです。裏返して言うと、そこまでしてアメリカはイランと付き合いたいわけです。では、中東で今、どこの情勢を一番注視すればいいか?

それは、ヨルダンです。今、ヨルダンは国家統合が危うくなっていて、いつ内乱が起こってもおかしくない。アメリカとイスラエルはそのことをよくわかっているから全面的な支援をヨルダンにしています。ヨルダンの防空は、イスラエルとヨルダンが共同で行なっている。事実上、イスラエルがヨルダンの国防を担当している状況なんです。

だから今、中東はすごく怖い状態になっている。空気がパンパンに詰まった破裂寸前の風船です。そこにアルカイダや「イスラム国」が針を刺して爆発させようとしている。その針を欧米やロシア、イランが寸前で叩き落としている状態ですね。

こんな状況でサウジの国王暗殺とかヨルダンの内乱とか、あるいはエジプトの政権が転覆して「イスラム国」系が権力を奪取すれば、この風船は爆発します。

すると大混乱に陥って、第5次中東戦争がすぐにヨーロッパ、バルカン半島を巻き込んで第3次世界大戦に近くなりますね。

(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)

●鈴木宗男(すずき・むねお)1948年生まれ、北海道出身。新党大地代表。2002年に国策捜査で逮捕・起訴、2010年に収監される。現在は2017年4月公民権停止満了後の立候補、議員復活に向け、全国行脚中!

●佐藤優(さとう・まさる)1960年生まれ、東京都出身。外務省時代に鈴木宗男氏と知り合い、鈴木氏同様、国策捜査で逮捕・起訴される。外務省退職後は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、作家・評論家として活躍

■「東京大地塾」とは?毎月1回、衆議院第二議員会館の会議室を使って行なわれる新党大地主催の国政・国際情勢などの分析・講演会。鈴木・佐藤両氏の鋭い解説が無料で聞けるとあって、毎回100人ほどの人が集まる大盛況ぶりを見せる。次回の開催は12月17日(木)。詳しくは新党大地のホームページへ