原発から労働法まで要注意法案は幅広く用意されている! 原発から労働法まで要注意法案は幅広く用意されている!

2015年も様々な動向があった安倍政権。中でも多くの人の記憶に残るのは、各地でデモまで起きた安保法案だ。最終的に強行採決という形となり、今も反対の声は少なくない。

国民も納得できる法案を望んでいるはずだが、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、来年も危険な法案が控えていると危惧する。

*** 参両院で過半数を持つ安倍政権は、安保法成立後の来年は野党を気にせず法律をつくることができる。というわけで、来年に可決されそうな“要注意法案”を考えてみよう。

まずは原発再稼働を推進する法案だ。2030年に原子力と再生可能エネルギーによる電力量が占める割合を「合計」で44%以上に義務づける【1】「エネルギー供給構造高度化法の改正」が行なわれる。

この改正法のミソは「44%」という数値だ。政府の見通しでは、原子力は「20%から22%」、再生可能エネルギーは「22%から24%」とされてきたが、ふたつの数字は逆の意味を持つ。原発依存度は下げ、再生エネの比率は上げるのが政府の目標だから、原子力の数字は上限、再生エネルギーの数字は下限だ。

しかし、この法案では合計だけが記載される。そうなれば、電力会社は再生可能エネルギーよりも利権の塊である原発の再稼働を推進するに決まっている。

高速増殖炉「もんじゅ」も要注目だ。再稼働が不可能といわれる「もんじゅ」は、運営主体の日本原子力研究開発機構もスキャンダル続きで、ついに原子力規制委員会から他の組織に代えなければ廃炉だといわれ、廃炉濃厚とされていた。

しかし、別途新設される青森・六ヶ所村の核燃料サイクルのための国の機関を代替機関にするという奇策が出てきた。既存の複数の法律の束ね改正になるが、通称は【2】「核燃料廃棄物平和的有効利用促進法」のような美名が冠せられるだろう。

安保関連では、安倍政権と財界が熱心な武器輸出を資金面で促進する新法が成立する。ODAとは別枠で、武器の輸出先に日本政府が購入資金の提供や融資ができるようになる。新法名は武器輸出促進というヤバイ性格をごまかそうと、【3】「平和のための国際環境整備法」みたいな名称になるのでは?

所得税&労働法の改正で収入激減!?

テロ対策関連法にも注目だ。テロ犯あるいはその関係者とみられる人物の逮捕状なしでの予防拘束など、テロ防止を理由とした【4】「刑事訴訟法の改正」に踏み切るだろう。

また、テロ対策に不可欠として実際に犯罪を行なわなくても、なんらかの計画を立てた段階で逮捕できる「共謀罪」、あるいは非常時に民間の物資を収用できる「緊急事態条項」などを束ねた【5】「テロ対策特別措置法の改正」もあり得る。こうすれば、共謀罪などを一本ずつ成立させる必要がないので、国民の反対を最小限にできる。

その他にも配偶者控除の廃止などを定めた【6】「所得税法の改正」、経営者が従業員を残業代ナシで働かせる「残業代ゼロ制度」が盛り込まれた【7】「労働基準法の改正」といったメニューも準備されている。

ただし、多くの法案の上程は来夏の参院選が終わった後になるだろう。あまり国民受けがよくなさそうな法案を選挙前に出して、票を減らすのを避けるためだ。そうすると可決は来年の臨時国会、または再来年1月以降の通常国会ということになる。

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来年はますすまキナ臭い年になりそうで、その動きを注視する必要がありそうだ。一方で、古賀氏は逆にぜひ可決すべき法案として「政治資金規正法の改正」を挙げている。

「昨年の自民党への企業・団体献金は前年比13 .3%増の約22 億円と、5年ぶりに20 億円の大台を突破。これまで献金を自粛していたメガバンクも年末から献金を再開する。このままでは金権政治が完全復活してしまう。"企業・団体献金を禁ずる法律"を本気で検討すべきだ」(古賀氏)

この国がこのまま政治家達によって腐敗し、堕落する道を転げ落ちぬようしっかり監視し、声を上げていく必要があるようだ。

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古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元幹部官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年退官。著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。著著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)

(撮影/山形健司)