選挙のためにバラマキ、「負のスパイラル」を生む政治に呆れる古賀氏 選挙のためにバラマキ、「負のスパイラル」を生む政治に呆れる古賀氏

成長戦略が進まないにもかかわらず、増税に向けてバラマキを乱発する安倍政権。

しかし、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は、その補填(てん)がない限り「負のスパイラル」になると断言する。

*** 昨年12月16日、自民、公明が消費税の軽減税率について大筋で合意した。その内容は「酒類、外食を除く生鮮食品と加工食品を軽減税率の対象にする」というものだ。

驚くのは、必要な財源1兆円をひねり出す論議が全くなされなかったことだ。合意文には「2016年度末までに安定的な恒久財源を確保する」とあるだけで、財源探しすらしないのは呆(あき)れてしまう。

16年7月に参院選が予定されていることを考えれば、これは選挙前のバラマキだろう。軽減税率対象の拡大という、消費者に聞こえのよい話だけを先行させて、選挙戦を有利に戦おうという意図は明らかだ。

それでなくても、このところの自公のバラマキぶりはすさまじい。16年1月に国会に提出予定の補正予算案でも「一億総活躍社会」実現の一環として、年金生活者などの低所得者1250万人に対して、3万円を給付するとの方針が打ち出されたばかりだ。

しかし、バラマキほど恐ろしいものはない。なぜなら、大抵“増税とセット”になるからだ。

バラマキで浪費した国のお金を補填する方法は、大別して3つある。【1】国の歳出をカットする、【2】成長戦略で税収を伸ばす、【3】増税する、の3つだ。

ただ、アベノミクスで積極的な財政出動を行なっている現状では、【1】の歳出カットはできない。また、【2】の成長戦略はかけ声倒れで終わり、実効性のある改革は手つかずだ。となると、残る手法は【3】の増税だけということになってしまう。

バラマキ続ける限り、消費税20%も

そして、安倍政権下ではバラマキと増税は「負のスパイラル」となり、何度も繰り返されようとしている。

1周目は、消費税が5%から8%へと増税された2014年4月だった。この時は消費税アップ後の景気減速を懸念し、アップ前に5.5兆円の補正予算、アップ後に低所得者向けにひとり1万円から1万5千円の現金給付などが行なわれた。

今回のバラマキは17年4月の消費税10%アップに対応したもので、その意味でスパイラルは2周目に差しかかっていると言っていい。

安倍政権と財務省の描く今後のシナリオを予測してみよう。

16年7月まではバラマキに徹し、参院選に勝利する。その後は豹変(ひょうへん)し、社会保障費のカットに乗り出すのを契機として、消費税10%アップに一気になだれ込むだろう。場合によっては、参議院選前に増税延期を打ち出すかもしれないが、延期されるだけで、なくなるわけではない。

いずれにしても、増税すれば景気が悪くなるから、その後に再びバラマキが必要になる。そうなればスパイラルは3周目に突入することになる。そしてその先には、消費税15%、さらには20%超への道が待っている。

日本の借金は1千兆円超もある。本来ならば、バラマキの資金は借金返済に回すべきだ。なのに、政府は成長戦略を欠いたまま、この策をやめようとする気配は全くない。

一体、いつまでこんな政治を続ける気だろうか?

(撮影/山形健司)