海自と空自の連携がうまくいくのかも不安視されるが… (撮影/世良光弘) 海自と空自の連携がうまくいくのかも不安視されるが… (撮影/世良光弘)

1月の“水爆実験”に続き、国際社会の非難を顧みず、事実上のミサイル発射実験を強行しようとしている北朝鮮

すでに燃料が充填されたという報道もあるが、燃料には有毒性が高いジメチルヒドラジンや赤煙硝酸などの酸化剤などが含まれているとされ、それらはミサイル胴体を腐食する恐れがあるため、早ければ予告期間初日の2月7日(日曜)朝にも発射される。

ミサイルの軌道には沖縄県・先島諸島周辺が含まれており、日本政府は防衛体制を強化している。海上配備型迎撃ミサイル(SM−3)搭載の海上自衛隊イージス艦を東シナ海と日本海に展開。航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC−3)を先島諸島の石垣島、宮古島、沖縄本島の那覇、知念、さらに東京・市ヶ谷の防衛省、首都圏の朝霞、習志野の自衛隊施設に配備した。

北朝鮮のミサイルになんらかのトラブルが生じ、日本領域に被害が及ぶ可能性が出てくれば迎撃ミサイル発射となるわけだが、迎撃に成功した場合でもミサイルの破片が地上に降り注いでくる恐れが? 軍事ジャーナリスト、世良光弘氏に聞いた。

「迎撃はSM−3とPAC−3の二段構えになっています。SM−3は海上から発射され、宇宙空間で撃ち落とすので、ミサイルが木っ端微塵(こっぱみじん)になれば大気圏に再突入した段階でほとんどが燃え尽きます。エンジンの部品などが燃え尽きずに落ちてくることもあり得ますが、海は広いのでイージス艦や他の船舶などに当たる可能性は非常に低いでしょう。

SM−3の命中率は約80%と言われていますが、撃ち漏らした場合、PAC−3の出番となります。最大射程は20キロと狭く、宮古島や石垣島など全島をそれぞれ完全にカバーできるわけではありません。そもそも西表島など他の島には配備されてもいない。

PAC−3の射高は約1万5千mと、旅客機より少し高いくらいです。しかし、それも最大ですので、実際にはもっと低いところで撃ち落とすことになる。万が一、日本の上空で迎撃することになった場合、イスラム国によって爆破されたロシア機を思い出すといいでしょう。ミサイルは旅客機ほど大きくありませんが、あれくらいの破片が地上に降り注ぐこともあり得ます」

SM−3が宇宙空間で撃ち落としてくれれば問題ないが、PAC−3は陸地での被害を最小限に留めるための最終手段というわけだ。

「人工衛星」が無事に飛ぶ保証などない

また今回、北朝鮮が強引ながら「人工衛星打ち上げ」と主張するように、ロケットとミサイルの構造はほぼ同じ。違いといえば、標的に向かって誘導するかしないかで、衛星を積めば宇宙開発になり、核弾頭を積めば弾道ミサイルとなり世紀末戦争になる。「宇宙開発」におけるロケット/ミサイル事故について、世良氏はこう語る。

「1996年、中国のロケット『長征3号』が打ち上げ直後にコントロールを失い、燃焼しながら近くの村に落下。一面、焼け野原となり、村がまるごと失くなってしまい、一瞬で壊滅してしまうという悲惨な事故がありました。

また北朝鮮も、2012年4月のミサイル発射実験では打ち上げてすぐに韓国の西、黄海に落ちた。海が汚染され、韓国の漁業は大打撃を受けたようです」

このように、無事に予告通りの軌道を飛ぶ保証などないわけだが…。また、今回の北朝鮮ミサイルは新型の可能性がある、と世良氏は睨(にら)んでいる。

「最後に発射された2012年12月のテポドン2号改良型より、今回のミサイルは16m程度かさ上げされており、射程を伸ばそうとしています。北朝鮮が喧伝するアメリカ東海岸まで到達可能な大陸間弾道弾になるかもしれないし、3段式ではなく4段式になっているかもしれない。

そうなると速度も高度も上がりますが、今配備されている迎撃態勢でなんとか対応できるとは思います。しかし先ほど挙げた失敗例もありますし、大型化に伴い技術的なミスが生じ、軌道がずれるという可能性はありますね」

実際に軌道がずれて日本に被害が及ぶと判断できるのは、どのタイミング?

「打ち上げた直後に判断できます。30秒以内には大体の軌道がわかり、イージス艦のレーダーで補足できる。万が一、日本の領海に落下しそうになれば、SM−3が発射される。北朝鮮のミサイルはマッハ5〜10で少なくとも秒速3.4キロ以上で飛翔しますから、先島諸島に到達するのは3、4分後なので一瞬の判断になります。

J‐ALERT(全国瞬時警報システム)やエムネット(緊急情報ネットワークシステム)、あるいは島内放送などで避難勧告しても、どれだけ有効かは疑問ですね。というのも、私は前回のミサイル発射があった2012年12月に沖縄の米軍基地にいてその様子を見ていましたが、ミサイルが通過したのは一瞬の出来事だった。今回も同じでしょう。

もうひとつ心配なのは、SM−3が迎撃失敗し、PAC−3で撃つことになった場合、SM−3は海上自衛隊、PAC−3は航空自衛隊が運用するので、海と空の連携がうまくいくのか…これまでそういう事態がなかったので、そこは不安ですね。」

もはや北朝鮮が予告するミサイル発射は不可避だろう。だとすれば、我々が最初にすべきことは、皮肉にも北朝鮮の技術力を信じ“衛星”打ち上げの成功を祈ることなのかもしれない。

(取材・文/週プレNEWS編集部)